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5話

月曜日の放課後、紫晃は帰宅するため身支度をしていた。

(金曜日はあんなことがあったのに、昨日や一昨日は何もなかった・・・どうかこのまま何も起きないでくれ・・・)

あの事件以来、テレビのニュースは街で起こったホワイトとダークのエンジェル対決の話題で持ちきりだった。紫晃はあの中にいたことを思い出すとぞっとした。

そんな紫晃の願いはことごとく砕かれた。

携帯にメール通知が届いた。

「・・・誰だ?」

なぜか、紫晃はそのメールを絶対にみてはいけない気がした。そしてメールのタイトルが、“絶対に見るな”だった。見てしまった途端、大きな後悔に駆られた。

“アジトにてお前を待つ。今すぐ来なければ、お前の正体メディアにバラす。”

「くっ…あいついつの間に俺のメールアドレスを・・・」

紫晃は慌てた。自分だけの黒歴史に葬るはずのあんなことやこんなことが世の中の人にバレてしまう。もう外に出られなくなる恐怖が頭の中で巡り、全速力で彼女の元へ走って行った。




アジトに着いたらダークエンジェルがピンクのソファーに座って待っていた。ダークエンジェルは学生服を着ており、ニュースで話題の人物とはかけ離れた姿だった。といっても、普通の女子高生に収まることのない美貌は、多くの目を惹きつけるだろう。

「お、おいダークエンジェル、本当にいい加減にしろよ・・・」

「何怖い顔してんのよ、ホントいい加減にしてよ。見るなっていうメールを見たあんたが悪い。」

見るなというメールを見てしまった紫晃は何も言い返せなかった。ダークエンジェルの長かった髪が、肩に付くぐらいまで短くなっていたことに気付いた。

「・・・お前、髪切ったんだな・・・」

(あんなに髪が焼けていたら、切るしかないだろうな・・・)

「別に切ってないわよ。だってあれズラだし。」

「・・・心配して損したわ!!」

「心配しろって頼んだ覚えはないわ。」

「ってか、なんでズラなんだよ?髪の色同じだったらズラにする必要ないじゃないか!」

「あんたが仲間になる前に、髪の毛が焼けたのよ、この前みたいに。切ったはいいけど、素顔の時に、どうして髪切ったなんてホワイトエンジェルに聞かれて、バレたらまずいから、ダークエンジェルに変身したときは長い髪にしてるのよ。」

「おい、待て。素顔の時にホワイトエンジェルに聞かれた・・・?ってことは、お前ホワイトエンジェルの正体知っているのか?それよりも髪を切ったことを聞かれるぐらい親しいのかよ!!」

「うん?ま、まぁそういうことかしら。」

「じゃあ、なんでそんなに親しいのに敵対してんだよ。話し合えば済むじゃないか。」

「まぁ、向こうは私の正体を知らないのよ。それに、話し合って解決ってわけにもいかないのよ。」

「話にならない。勝手にしろ。俺をこれ以上お前らの喧嘩に巻き込まないでくれ。」

そう言い放ち、ダークエンジェルに背を向けて歩き出した。

「ふぅん・・・結構あんたもノリノリだったのに?えーっと、何だっけ?“このピュアブラックによって、ほわい・・・”」

紫晃の足が止まった。

「悪かったよ!もう俺の黒歴史を掘り返さないでくれ!!!」

「くれ?」

「…ください。」

自身最大の弱みを握られた紫晃は、このままダークエンジェルに従うしか道がなかった。これほど過去に戻りたいと思ったときは一度もなかった。

「何て呼べばいいんだ?」

「何が?」

「ずっと、ダークエンジェルって呼んでたらまずいだろ。」

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私の名前は、奥宮春奈。苗字でも名前でも好きに呼んで。」

「お、奥宮…さん。」

「あんたは?」

「お、俺は萩野紫晃だ。」

「しこう?変わった名前ね。」

「お前の名前は平凡だな。」

「うっさい!何なの、あんた!私を通行人Cみたいにしないで!」

「自己紹介もそこそこにして、本題に入ってくれ。何の用だ?」

「その言葉を待っていたわ!戦うには、まず敵を知るべし!偵察に行くわよ!!」

春菜は勢いよくソファーから立ち上がった。

「え?でもお前知り合いなんじゃ…」

「あんたが知ってないとどうにもならないでしょ?さっ、そうと決まったら、れっつらGO之助!!」

「掛け声だっせぇ!!」

春奈は紫晃の腕を引っ張り、鼻歌交じりで歩きながら、アジトを出て街へ繰り出した。


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