26話
「ふーっ、とんだ遊園地だったな」
ピュアブラックから柴晃に戻り一息ついた。
「ほんとよ!!遊園地無料券がぁー!!」
春奈はショックで頭を抱えていた。
「あれ、嘘だったみたいだぞ」
「なんですって!!」
「まんまと騙されたな」
「許さない…なんという絶対悪!!乙女の恋路を邪魔するなんて…」
「恋路だと認めるんだな」
「えー何のことー?」
墓穴を掘った春奈は上手くもない口笛を吹いた。
「萩野くーん!!」
遠くで見知らぬ美少女が手を振っている。
「誰だ?」
美少女の周りには、高瀬や北山、仲村がいた。
「あれ?部長は?」
「私ですよ!!」
手を挙げていたのは美少女だった。谷岡はなんとあの丸眼鏡をはずすと、春奈とも引けを取らない美少女だったのである。
「えぇー!!!」
もう柴晃は驚くしかない。
「…眼鏡がないと恥ずかしいのですが…」
「ぶちょー!絶対そっちのほうがいいすよ!」
「そ、そ、そ、そうです!!」
北山と仲村が目を輝かせていた。
「眼鏡が無いと落ち着かないですー」
目を隠しあわあわとした様子もさらに可愛い。
「ま、みんな無事で何より!!ところで、こんなに大きな騒ぎを立てて、静かに獲物を狙うプロらしくないね」
「そうだな…今回は少し騒ぎすぎた…って、俺はやってないからな!」
高瀬のノリに柴晃は丁重にのった。
柴晃達が解散した帰り道、谷岡と高瀬は一緒に帰っていた。
「正直に答えて」
「なんだよ」
「もう、肩治ってるんでしょ」
「いや、まだかなぁ」
高瀬は顔をそらした。
「もうやらないの、野球?」
谷岡の質問に足が止まる。
「やらない」
「…そう…」
また歩き始めた二人は、沈黙のまま二人は帰路についた。
「ごめん、遅くなった!!」
駆け足で直人が二人のもとにやって来た。
「おっっっそい!!!何やってたのよ直人!!」
「ごめん春奈、それに師匠もごめんね」
「ポンポコが腹減りすぎて泣いてるぞ」
そう言って柴晃はお腹を撫でる。
「ぶはっ…ごめ…ん」
「もう、そんなくだらない話はいいの!!どこ行ってたの?」
「倒れていた人の介抱していたんだよ」
「なら、真っ先に私でしょう!!」
「ごめんって、次からはそうします」
「まったく…」
「あと、今日の埋め合わせはちゃんとするから。今度紅葉狩りでもいこうよ」
「え、いいの…?」
「もちろん!師匠も一緒だと楽しそうだなー」
(春奈がこっちを睨んでる…!!)
「もっ、紅葉が苦手なんだよなー。二人で行って来いよ!なっ、春奈!!」
「柴晃…」
春奈は思わずグッジョブの親指を立てた。
「柴晃がそう言っているんだし…直人、せっかくだから二人で行きましょう」
「そうだね、たまには二人でいこうか」
「やったぁ!!」
春奈のガッツポーズが夕日に赤く染まっていた。
後日、遊園地事件がニュースや新聞で取り上げられた。
資金困難で多額の負債を抱えていた遊園地は、土地を売却どころでは負債をまかなえなかった。そこに目を付けたMS製薬が負債をすべて払う代わりに、土地の売却と、新薬の鎮痛剤による人の意識が朦朧となる副作用の実験をさせたのだった。
それを明らかにし、敵を捕まえたのはホワイトエンジェルとなっている。
柴晃は新聞を読んでため息をついた。
「いいのかよ、俺たちも活躍したのに」
「いいのよ、別に」
「なぁ、思ったんだけど、なんで直人は春奈と同じ部屋にいたのに無事だったんだろうな」
「解毒剤を持っていたからよ」
「…なっ!!まさか、あいつ始めから知ってたのかよ」
「そうね」
「なら、どうして止めなかったんだ!!」
「きっと、みんなの前で悪を暴きたかったのよ」
続けて春奈はこういった。
「直人は、みんなの正義のヒーローになりたいのよ。だから彼が正義のヒーローでいるために、私たちがいるのよ」
「なんだよ、それ…」
「かっこいいじゃない、ヒーローの為のダークヒーローも」
「そのために、そんな大変な思いをして戦っているのか」
「彼の正義のために」
グラスを手にもって柴晃にかざした春奈はうっすら笑っていた。
悪役ではあるが、その美しさに柴晃は見とれてしまった。
春奈が何かあっても大丈夫なように強くなろうと柴晃は決心したのだった。




