22話
それから、紫晃達は薄暗い部屋にたどり着いた。
「なんですかね、この煙」
「火事か?」
谷岡の表情が一変した。
「いいえ、これは火事なんかじゃありません。煙を吸わないで!!」
急変した谷岡の様子に驚き、柴晃と北山は煙を吸わないように、腕で口を覆った。
薄暗く光るライトの明かりで柴晃達は、惨劇を見ることになった。
そこには、お化け屋敷のミッションの参加者と思われる人たちが倒れていた。
(俺たちとは別室にいた人たちか!!もしかして、春奈も・・・)
柴晃は真っ先に春奈を探し始めた。
すると、見覚えのある服装の人が倒れていた。
(春奈!!!)
すぐさま春奈の元へ駆け寄り、体を揺すっても反応がなかった。
北山が柴晃の袖を引っ張った。
(萩野先輩!!出口があります!!)
北山が指をさした先は人が一人やっと入れるくらいの換気口であった。
(けど、天井の換気口までどうやって上がる?)
柴晃の考えたことを察したように二人は制服のスカートをまくり上げた。
そこには、写真部の秘密道具が隠されていた。
(幽霊探すためにこの遊園地のどこまで探るつもりなんだよ!!)
見事に換気口からロープをかけた谷岡は、すさまじいスピードで上がっていき、
それに続いて北山も上がった。
北山に借りたロープで春奈を落とさないように背中にしっかりと結びあげ、柴晃も換気口へと上がっていった。
「ぶはっ!!」
やっと空気を存分に吸うことができた柴晃は疲れ果てていた。
「いやぁ、まさか我が写真部の探索道具が人助けになるとは!!」
「さすがっす!部長!!」
「普段から持ち運んでいるのか…」
「いえーす!!幽霊探しには危険がつきものですから」
「ぶちょーはどうしてあの部屋の煙が吸っちゃいけないってわかったんすか?」
「ふふふ、それは培われてきた勘ですかねぇ…そしてその勘からすると、必死に連れてきたそこの女性は、次のターゲットですか??」
「あぁ、依頼があってこの女を遊園地で…って、俺は殺し屋じゃないからな!!」
「彼女っすか?」
「か、かかか彼女なわけねーだろぉ」
「その言い方じゃ、彼女って疑いたくなりますが…」
「ちょっと、殺し屋と美女の組み合わせは危険な香りがするっすね!!」
「さてまぁ、萩野さんの話は置いといて、あの部屋に残してきた人達ですが…」
もはや幽霊以外のことはどうでもいい谷岡は話を切り替えた。
「もちろん助けますよ!!」
勢いよく北山が乗り出した。
「でも、どうやってだ…あの狭い換気口から一人ずつ背負って脱出するのか?」
「いや、それだったら係員を呼んだほうが早いでしょ!」
しかし、あたりを見回しても係員、ましてや来園客の姿さえ見られなかった。
「どうやら、私たちが感じ取った奇妙な違和感は幽霊ではありませんでしたねぇ…」
「どういうことだ!?」
「この遊園地、経営破綻で今年いっぱいで閉園予定なんです。にもかかわらず、ミッション達成者には遊園地一年分無料チケットなんて、おかしいんですねぇ」
「経営がよくなって、閉園は無しになったんじゃないっすか?」
谷岡の推理に北山が疑問を呈した。
「いいえ、もうこの遊園地の土地の売却先は決まってます」
「まぁ、客よせの謳い文句じゃないのか?」
「いいえ、あの部屋の煙ではっきりしました。煙が出て火事かと思いきや、肝心の火元が見たりませんでした。そして、あの煙だけで何人もの人が倒れているのを推測すると…」
「催眠ガスか?」
「いいえ、催眠ガスはおそらく違います。閉ざされていた入口の近くで多くの人がもみ合って、倒れている様子からして、即効性ではなさそうなので、催眠ガスならばすぐに効果がないとおかしいです」
「なるほどな。じゃあ、なんで倒れいてるんだ?」
「ここからは、私の勝手な推測になりますが、この遊園地の次の売却先が関係ありそうなのです」
「売却先ってどこなんだ」
「MS製薬です」
「ってことは、薬物実験ってことっすか!?」
「かもしれません」
そんなことがありえるのかと柴晃達は立ち尽くしていた時、
「うっ…」
春奈が目を覚ました。
「ここは…」
「大丈夫か?一体何があったんだ!!」
「ちょっと思い出せないのよ…少し水を買ってきていいかしら」
「いいよ、俺が買いに行く」
「じゃ、一緒に行きましょう」
そういって、春奈は強引に柴晃の腕をつかみ、谷岡達から離れていった。
「大体、話は聞いたわ」
「起きてたのかよ!」
「まぁね、でもはっきりと分かったわ」
「出動か?」
「えぇ、この事件はホワイトエンジェルが動いている」
「でも、今回は俺らが悪役で出なくてもいいんじゃないか?しかも、あんなに人を巻き添えにしたのが、俺らのせいにされたら大変だぞ」
「それはこの私に任せなさい!人命救助も真の悪役逮捕も両方こなしちゃうわよ」
「へいへい。だが、今回は肝心の変身道具が…」
「いざという時の為に持ってきたわよ!!」
「あるんかい!」
スカートをまくり上げる春奈の様子をみて柴晃はデジャヴを感じた。




