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20話

『それでは皆さん、無事のご帰還を』

アナウンスが終わったと思うと、扉が開いた。

扉以外に、この部屋には出口がなく、どうやらここから出るしかなさそうだ。

 参加者が一斉に扉に向かっていたその時、出口の奥からうめき声が聞こえてきた。

 うめき声に立ち止まる参加者もいたが、柴晃達はそのまま奥へと走り続けた。

「まあ、お化け屋敷だから出でくるよな」

「萩野先輩と、部長で幽霊もノックアウトっす!!ある意味このペア優勝できますね」

「全く、こういう時にしか役に立たないからな俺は」

「そんなことないっすよ。先輩はいつでもお助けマンですよ!」

「なんだよそりゃ」

「ピュアブラックみたいにね」

 紫晃に戦慄が走った。

「お前……まさか!!」

「そういえば、先輩とピュアブラックってちょっと似ていませんか?映画観て思ったんすけど、声とか、あとは……」

「だ、脱出開始ー!!」

紫晃は北山がピュアブラックの正体を知らないと分かると、すぐに話題を切り上げ、スピードを上げて走り始める。

「置いてかないで欲しいっす!」

「谷岡先輩は……」

 そう言って紫晃が辺りを見回すと谷岡の姿はなく、谷岡のものと思われる叫びが向こうの暗闇へと広がっていた。

「ま、まずい!!出禁になる前に先輩を止めに行くぞ!!」

「ラジャっす」

紫晃たちは、扉の向こうへ走って行った。



扉が開く前、春奈と直人は紫晃達とは別の部屋へ案内されていた。

(チャンスよ……ここで怖いと言って、さらっと直人にしがみつけば……)

「直人……こわ」

「ああー師匠と別の部屋だったなんて……残念すぎる」

袖をつかもうとしたとき、直人が振り返り、驚いて思わず手を引っ込めた。

「……こほん。まあ、紫晃のことだから難なくクリアしているでしょ」

春奈のドキドキミッションは失敗に終わった。

「予定としては、逆の部屋になるはずだったのに……」

「何か言った?」

「何も言ってないよ」

直人の独り言を聞き取れなかった春奈は、気になって仕方なかったが、何も言ってないと否定されたらそれ以上の追求ができず、何も言えなかった。

一瞬考え込んだ表情を見せていた直人だったが、元の表情に戻りすぐに微笑んだ。


(今度こそは……成功させてやるんだから)

密かに決心した春奈だったが、それは果たされることはなかった。



突然、部屋にサイレンが鳴り始めた。

「なんのサイレンかしら?ミッションの合図?」

「いよいよ始まるみたいだね」

「……ねぇ、直人」

「どうしたの?」

「手、繋いでも……げほっ、何この煙!?」

春奈の視界が真っ白になった。

突然の煙に部屋にいる参加者がどよめき始めた。一斉に入口から出ようと人が集まるが、鍵がかけられておりビクともしない様子だった。

「火事だ!!!!」

「早くドアを開けろ!!」

 入口や壁を叩いたり、咳き込みうずくまる人を目の当たりにし、春奈はひどく動揺し、呼吸が荒くなっていく。


春奈は思い出したくもない過去の記憶が蘇った。

燃えていく家の中、みんなが外へ逃げていくが、家具の下敷きになっている幼い自分は、泣きながら母親を呼ぶものの、その声は誰にも聞こえず、燃えていく家の中を涙で滲んだ視界で見ていた。

『おかあ…さん、いたいよぅ、くるしい、お…とうさん……』

そう言いながら、幼い頃の春奈の記憶は途絶えていた。


今、目の前にある光景がまさに過去の記憶をそのまま映し出したような光景だった。

煙が漂う中、薄暗いライトが炎のように赤く灯っていた。

「だ、誰か…助けて…」

ぼやけた視界の中でうっすらと直人を捉えた途端、直人が振り返った。

「直人…助け…て。燃えているの…お母さんが…」

「大丈夫だよ。火事じゃないから。そこで眠って」

「い、い・・・いや。お願い・・・置いていかない・・・で・・・」

直人の後ろ姿が遠くなるにつれ、春奈は意識を落としていった。




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