18話
「ミッションクリアおめでとうございます。ペアで乗り越えてきたミッションですが、今から行われるファイナルミッションにはペアのチェンジが行われます」
職員の次のミッションについて聞かされると、周りがどよめきはじめた。
「一体どういうことなのよ」
「わ、わからん。だが見ず知らずの人とペアを組み替えてまでする必要があるのか?」
「じゃあ、直人と一緒にできないの!?あ、あと紫晃とも」
「さらっと付け加えるな」
「遊園地なんていつでも行けるし、三人いるからこそ楽しいから、もうここでやめてみるっていうのも、一つの手じゃないかな?」
「直人……」
春奈が言いかけたところで、不気味な館内放送が流れた。
「ここからは……ミッション……をクリアす……ることなく……この屋敷を……抜け出すことは……不可能……だ。幸運をいの……る」
「なんなのよ!!それじゃ、直人と来た意味が……」
言いかけたところで春奈は本心を漏らしていることに気がついて口を手で塞いだ。春奈は紫晃に睨みをきかせ、フォローを促した。
「あーなんか俺、燃えてきたぁぁぁぁぁぁ!!!」
紫晃のフォローは大きくキャラクターを変え熱血系になった。やはり自分にはフォローなど向いていないのだと紫晃は思った。
「お、師匠燃えているね!僕もこの調子でクリアしないと!!ここからは三人とも敵だね!」
「そ、そんなぁ。直人……」
柴晃につられ、燃えてきている直人をよそに春奈はため息をついた。
ペアを決めるために参加者でくじ引きが行われた。紫晃がくじを引き周りを見渡すと遭遇したくない一行が参加していた。
「ぶちょー!!何番引いたっすか?」
踵でリズムを取りながら、北山夏希は部長である谷岡柚月に話しかけている。
「ふふふふ……恐れることなかれ。私が引いたのは死者の死(4)!!!」
そう言って、谷岡柚月は丸眼鏡を光らせ、不気味な笑い声を発した。
「部長と一緒にならなくてよかったー!!今日はいいことあるぞ!!」
「本当っすね!高瀬先輩は何番ですか?」
「12番だよ」
「わ、私12…番です」
「おや?香織ちゃんと一緒か。頑張ろうね」
「こ、怖いけど……頑張ります!!」
「そうっす!香織ちゃん!その意気っすよ!」
「夏希ちゃんは何番だったの?」
「まだ開けてないっすねー。えーっと……」
北山が紙を開いた途端動きが止まった。
「おや、その様子じゃまさか……」
「うわーん!!4番っす!!何という不運!!」
「ぶふふふふふふ……北山さんも、その数字を引き当てたのですねぇ。いざ、幽霊探しですねぇ!にひひひひひ……」
「と、取り敢えず落ち着いて欲しいっす」
「部長は任せたぞ!北山隊員!!」
「か、かしこまりましたっす!高瀬副隊長!!」
そう言いながら、敬礼をしている北山達の様子を見ていた紫晃は安心した。これで一番会いたくなかった人とペアになることがないからだ。運がよければ、このまま会えずにミッションをクリアできると思った時だった。
「どうぞ、くじをお引きください」
そう言って、職員がやってきた。
三人引き終わると、紫晃は恐る恐る開いてみた。
(7番!!)
良い予感しかしなかった。
しかし、紫晃の目にはとんでもない光景を目にしてしまった。直人が持っていたくじの番号は4番だった。
(そうか、二人一組のペア参加型のイベントに俺と春奈と直人の三人一組が出来てしまったから、一組だけ三人のペアがあるのか!!)
「さて、何番かしら……」
春奈がくじを開いた瞬間、紫晃の目に飛び込んできたものは、7番のくじだった。
(春奈と同じ番号!!)
紫晃は心の中で喜んだが、それもつかの間だった。
(けれど、春奈はきっと……)
春奈は紫晃ではなく、直人を求めていることなど、紫晃は知っていた。知っているなら、自分ではなく直人を選ばせる。しかし、紫晃には迷いがあったのだ。それが、春奈への気持ちが変わったのか、写真部一行との関わりを避けたいという気持ちなのか、今の紫晃には答えは出せなかった。
「直人、頼みがある」
「え?師匠から頼み?なになに??」
「ちょっと来てくれ」
そう言って、春奈から見えない距離まで紫晃は直人の腕を引っ張った。
「師匠から、頼みなんて……僕、嬉しすぎて……お化け屋敷どころじゃないよ……」
「いや、そこは普通にお化け屋敷楽しんでくれよな。話を変えるが、俺にはラッキーナンバーがあるんだ。何番かわかるか?」
「あっ!ごる……」
「30番じゃないからな!!そして、殺し屋扱いはするな!!」
「なんだ、そうなのか。じゃあ何番なの?」
「4番だ」
「あーなるほど。死の4のほうだったかー!僕としたことが……くっ」
「待て。だから殺し屋扱いはやめてくれと言っただろう?普通は幸せの4とかだろ?な?普通はそうだよな?」
「いや、師匠の普通は一味違うからな」
このままでは話が進まないと察した紫晃は早急に話を元に戻した。
「協力してくれ。俺はどうしても4番のくじが欲しい。誰が持っているか探してくれないか?」
「ダメだよ。師匠、一度引いたものは元には戻せないだろ?引き金みたいに」
「まずは、うまいこと言ったみたいにドヤ顔するのをやめような。頼む。師匠としてのお願いだから」
「うーん。師匠の頼みだと聞くしかないなぁ」
直人はしぶしぶ自分のポケットから、紙を取り出した。
「本当に偶然だよね。僕が4番のくじを持ってるよ」
「えぇぇぇぇー!そうだったのか!それは偶然だなぁー。へぇーほぉー」
紫晃は嘘が下手な人間だったが、直人はそんな紫晃の様子を気にも止めず、紫晃からもらったくじの番号を見ていた。
(それにしても、もし直人が4番のくじを持ったままだったら、あの奇行組と一緒だったのか……)
紫晃の想像力では、想像しきれなかった。
その後の春奈と直人の二人きりの様子を見ることができなかった。自分ではなく、直人が横にいることによって、とびきりの笑顔を見せる春奈を視界の端に入れることさえ、紫晃は拒んだ。




