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16話

写真部一行のうちの一人の仲村香織だった。

「お、おおおお落ち着けってば、な、何もしてないだろ!!!」

「ひぇぇん。たすけて、ください。わ、私なにも悪いことして・・・」

「香織ちゃん!ファイトっす!」

そう言って二人の様子を見世物にしかしていないのは北山夏希だった。

すぐさま仲村は北山にすがりつき、紫晃を完全にシャットアウトした。

「えー折角人見知りが治ると思ったのに、香織ちゃんそこはもうちょっと頑張って欲しいっす!」

「俺が言うのもなんだが、人見知りを克服するための練習台がまず俺じゃダメだと思うぞ。」

紫晃が仲村香織を見たときにはもう気絶寸前だった。

「はうぁ~」

すっかり魂が抜けたような声を出して北山のところに倒れこんだ。

「あーぁ。先輩が香織ちゃんを気絶させたっす」

「俺のせいにするな」

「罪な男っすねぇ。先輩は」

紫晃は北山に構うことをやめた。

「はーぎーのー君!!」

紫晃の背後で声がしたかと思うと、本日二度目の肩ゆっさゆっさ挨拶を食らっていた。

振り向いた先にいたのは高瀬創だった。

「よ……よぇ」

軽い挨拶のつもりが、奇声を発してしまった。

「つれないなー。友達に会ったのに宇宙人に遭遇したみたいな反応やめてくれよな!やるとしても逆の立場だぞっ!」

「あーごめんごめん、俺の方がエイリアンっぽい……って、俺は人間ですらないのかよ!!」

「ははッ、今日もノリツッコミの切れが最高だね!」

「お前らがいるってことは、ここ幽霊でも出るのか?」

「おや?察しが早いね、萩野君は!」

「やばい人の予感しかしないから、取り敢えず早めに撤退しておく。今日はもう会わないようにしよう」

 そう言って、高瀬のいる後ろを振り返りもせず手ぶらなまま春奈の元へ戻ることにした。

「待たせた……な」

紫晃は言葉を濁らせた。目の前には春奈と直人が親しげにしていた。そして紫晃は二人が気づくまで呆然と眺めているしかなかった。直人と話すときの春奈の様子は、とても楽しげだった。普段のハキハキとした話し方とは違い、少し照れて俯いたりといった様子が垣間見え、恋する少女そのものだった。

 こんなにも直人が好きでいる春奈がどうして宿敵の相手になるのだろうと、紫晃は不思議でたまらなかった。なぜあんなにボロボロになってまで戦うのか、目の前の二人の光景を目にして、紫晃は立ち尽くしていた。

「師匠!帰ってきたんたね!!」

「遅いのよ!一体どこをほっつき歩いていたのよ!」

「悪い。自動販売機がどこにもなくて……」

「ばかね、あんた。すぐ横にあるじゃない!」

 そう言って春奈が指差したすぐ先には自動販売機があった。

「……だな」

「このあと15時よりペア参加型のお化け屋敷イベントを行います。参加される方は東エリアのお化け屋敷にぜひお越し下さい」

 園内放送が流れたと同時に、紫晃と春奈の間に緊張が流れた。

「お、おおおお化け屋敷たーのしーそうだなー。な、なぁ、みんな、行こうぜぇ?」

 紫晃の猿芝居は見事なものだった。

「ほ、ほほほ本当ねぇー。スゴクタノシソウネー、ナオトモイキマショウヨー」

 春奈も負けていない。

「いや、ペアでの参加だから二人で行ってきなよ!僕はここで待っているよ」

「な、何言ってるんだぜ?俺のパートナーはずっとこいつだぜ!な、なぁぽんぽこ?ウン。ソウダソウダーポンポコー」

 そう言いながら紫晃はひたすら自分のお腹に語りかけた。あの伝説の腹踊りの封印が解き放たれた瞬間だった。

「ぽ、ぽんぽこっていう名前だったのか……ふ、ふふっ……」

 春奈の青ざめた顔と直人の笑い転げる姿を再び見ることになるとは紫晃は思いもしなかった。


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