13話
教室を出て、そのまま真っ直ぐ帰るはずの紫晃だったが、高瀬創に呼び止められしまいには、春奈からの呼び出しメールが届いた。
アジトに入ると、半袖から長袖の制服に衣替えした春奈が座っていた。その姿は、黒の半袖シャツから白のブレザーを身にまとい、冬服はシャツの第一ボタンまで止め、赤いネクタイまで締められている。露出度は少なくなったが、エリート高校の気品の高さがにじみ出る制服だ。気品あふれる制服を悪くないと思った紫晃は春奈を凝視していた。
「私に殺気を向けないでよッ!!」
紫晃の視線に気づいたのか、春奈は睨みつけて言い放った。
「殺気は出してねぇよ、いい加減に殺し屋みたいな扱いはやめろよ」
すぐさま紫晃のツッコミが返る。
「あんたに見られるだけで、怖がる人だって、多いのよ。」
「……」
身に覚えがある紫晃は何も言い返せずにいた。
「黙ったところで、本題よ。」
「はいはい。この流れは、あれですね。」
いつもの流れだと確信した紫晃は今度はどこに連れて行かれるのかを考えると不安になった。
「あんた、私と遊園地に行きなさい。」
「はー。今度は遊園地に偵さ……え??」
耳を疑った。今までこき使われた紫晃がいきなり春奈から遊園地に誘われたのだ。
「再来週の土曜日、時間……あるの?」
顔を赤くしながら、少し伸びた髪をくるくると指に巻きつけ、春奈は尋ねる。
「……待て。状況が理解できん。どうして俺と遊園地に行きたいんだ?」
「わッ、私だって、あんたと一緒に遊園地なんて別に行きたくないんだから!!」
(これはまさかの、ツンデレ……!?)
紫晃はいつもと違う春奈の様子に戸惑った。今までツンデレというものは耳にしたことがあったが、まさか実物をお目にかかれるとは思ってもいなかった。紫晃は舞い上がる気持ちを抑えながら、
「ま、まぁ、さら、さらら、再来週の土曜日なら、あああ空いてないこともないぞ」
気持ちを抑えきれなかった。
「ほ、ホントに?……よかった」
春奈は嬉しそうに胸に手を当てていた。
「ゆ、遊園地に誘うくらいで、呼び出すなんて大げさなんだよ。ま、まぁ、今日は暇だったし、べ、別に良かったけど」
「はぁ?あんたごときを遊園地に誘うくらいで、なんであんたに会わないといけないのよ」
いきなり春奈の目が変わった。紫晃を見下すような視線に変わり、紫晃の心は砕け去った。
「……ということで、どうかしら?」
目を輝かせた春奈が、紫晃に意を求める。
「遊園地のチケットを持ってたホワイトエンジェルが、春奈と俺を誘って、この機会にホワイトエンジェルの弱みを握っておきたいってわけか」
「そうよ!」
「要するに、春奈とホワイトエンジェルをいい感じにするのだろ?」
「そうそう…って違うわよ!!一言も直人のことが好きとか言ってないし!!!直人とは幼馴染でもあって、宿敵でもあるの!」
「ほうほう。幼馴染かつ宿敵で初恋の人か」
「……冗談も、大概にしなさぁぁぁぁい!!!」
しばらく紫晃は鞭打ちの刑を受けることになった。
「で、ほのいへんとに参加すれはいいんはな。(で、そのイベントに参加すればいいんだな。)」
「そう。このカップルドキドキお化け屋敷に参加したいの。ううん、しなきゃいけないのよ」
「でも、俺参加したら、奇数になるはろう(奇数になるだろう)?」
「直人はこのイベントがあること自体知らないのよ。チケットだって、抽選会で当てたものみたいだし。それで、師匠のあんたと行ったら絶対に楽しそうだからって」
あの腹踊り事件以降、紫晃は直人に師匠と呼ばれ、謎のリスペクトを受けている。
「そんなイベント行かなくても、学校でいつも一緒だろ?」
「学校と遊園地は全くの別物なの!!」
「はいはい」
「いい?取り敢えず、カップルイベントに参加したいオーラを出すのよ。分かった?」
「ほー。一番早くクリアしたペアには遊園地一年間無料チケット贈呈なのか・・・」
「そうなのよ!だから、これさえあれば直人と遊園地行き放だ・・・なんて考えてないんだからねッ!」
「はいはい」




