11話
「ふぅあぁぁぁー」
大きなあくびをしながら紫晃は、放課後の廊下を歩いていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
いきなり変な声が聞こえた。
「感じます・・・あなたにはたくさんの幽霊がまとわりついているのを・・・」
そういって、一人の女子生徒が紫晃に向かって早足で歩み寄った。
「え?」
紫晃は戸惑った。今まで学校で女子に話しかけられたことなど一度もなかったのだ。本当に話しかけられたのが自分なのかと思い、あたりを見回すが、紫晃のほかにはいなかった。
「あなたの周りにはとてつもない数の幽霊がついています。」
「は、はぁ?冗談だろ・・・そ、そんなこと信じねぇし?ってか、信じたくない!」
思わぬ言葉に紫晃は驚いた。実を言うと紫晃は大の幽霊嫌いだった。
「あなた、その顔を拝見すると多くの人を殺めていますね。」
「やっぱり顔かよ!!」
自分の頬の大きな傷跡のついた顔で判断されているとわかると紫晃は少し安心した。
「ひぃぃぃ!あ、あや、あや・・・」
言葉が出ないほど怯えていた女子生徒がいた。
「ち、違うからな!俺は人を殺めてなんかないからな!」
否定したが、どうも紫晃の顔が怖かったらしい。悲鳴を上げた女子生徒は近くの友達にしがみついた。
「ぶちょー、その人には何もついてないっす!」
しがみつかれた女子生徒が、紫晃を人殺し呼ばわりした女子生徒に向かって話しかけた。
しかし、紫晃はどこか引っかかるところがあった。目の前にいる人殺し呼ばわりされた女子生徒を見ると、メガネをかけており、胸元には3―1と書かれたバッチが止められていた。紫晃よりも一つ年上の先輩だった。さらに目線を下に置くと、その女子生徒の手にはダウジング・ロッドが握られていた。
「あ、ジャスティスモールにいた幽霊探しの。」
つい声が漏れてしまった。紫晃は思い出した、紫晃と春奈を救ったあの録音テープの持ち主だった。
「も、もしかしてあなたは、あのときの警備員さんですかぁ?」
女子生徒も気がついたようだった。
「そ、そうです。」
「なぁぁぁんとぉ!この出会いは運命ですねぇ!」
(嫌な運命だな。)
「あなた、写真部に入部しませんかぁ?」
「え?」
「是非とも我が写真部に入ってくださいませ!私は、三年一組の谷岡柚月と申しますぅ!」
これが、紫晃と写真部一行の運命の出会いだった。
「私は、一年の北山夏希っす!」
しがみつかれていた女子生徒はとにかく元気系女子のような雰囲気だった。
「あ、あと、先輩には幽霊ついていないから安心してください。」
「そ、そうか。」
紫晃は北山の言葉を聞いて安心した。
「私、人より霊感が強い方だと思います。」
「そ、そうなのか・・・」
紫晃は不安になった。
「あ、どうも、こんにちは。」
すると北山は誰もいない方向に挨拶していた。
「あっ、そうなんですか。確かに息子さんにお嫁さんいないと不安ですよね。え?私?いやいやいや、何ていうか・・・もうちょっと若い男の人の方がタイプっす!あぁ、そんなに落ち込まないで欲しいっす!!」
「ひぃぃぃ!夏希ちゃんさっきから誰とはなしてるの?」
紫晃より先に悲鳴をあげたのは北山にしがみついていた女子生徒だった。
「あぁ。ぶちょーの担任の先生のお母さんっす。あ、先輩この子は私と同じクラスの仲村香織ちゃんっす!」
しがみついていた仲村は紫晃の視線を感じるとさらに北山の後ろに隠れた。
「うん?確か私の担任は先週お母さんを亡くして、学校をお休みしていますよ?」
はてと谷岡は首をかしげた。
(あー早くこの場から去りたい・・・)
その時だった。紫晃にメールが届いた。件名は“絶対に見るな”だった。
(サンキュー春奈!)
この場から抜け出せる手立てを見つけた紫晃は、顔がにやついた。
「えっと、急用ができたんで俺帰ります。じゃ。」
相手の返事も聞かず紫晃は走り去り、春奈が待つアジトに向かった。
アジトに入ると、春奈は嬉しそうに何かの紙を見ていた。
「お。来たわね」
「どうしたんだ?」
「じゃーん!!」
春奈が紫晃の目の前で広げて見せた紙には、商店街の映画館が再オープンするという広告だった。
「おおっ!ついにあれが公開されるんだな。」
「うんうん。頑張った甲斐があったわねー。公開初日に見に行くわよ!」
「そうだな。」
「予定空けといてね。」
「勿論。」
『只今、ニュースが入りました。大型ショッピングモールジャスティスで起こった崩壊は、バトルによって起こったものだと、調査によってわかりました。今回のバトルではダークエンジェルによる予告なしでの深夜に行われたとされるバトルのため、映像が届いておりません。あっ、今映像があるとの報告が届きました。なんと今回爆破が起こったジャスティスモール近くの映画館にダークエンジェルから映像が届いたとされ、緊急で映画館にて公開されるそうです。公開は明日の午後4時からの放映予定になるそうです。』
テレビのニュースは先日のどんちゃん騒ぎが大きな話題となっていた。
「明日の放課後見に行かないとね。」
「チケット、予約しとくか?」
「もちろんよ。立ち見はお断りよ。」
「そうだな。」
そして迎えた映画公開初日。商店街には大勢の人で溢れかえっていた。
「すごい人ね。」
「確かに。はぐれないようにしないとな。」
映画館では、映画館のオーナーが忙しそうに走り回り、中では人がごった返していた。
何とか紫晃達は人ごみをかき分け、座席に座ることができ、公開が始まった。
紫晃達は、上映が終わると、窮屈な商店街を抜け出し、だんだん人がいなくなる帰り道を歩いていた。
「にしても、お前の編集すごかったな。」
「まあね。あんたが撮ったあのブレブレな映像からよくあそこまでできたと思うわ。」
紫晃は今回の作戦では撮影係だったのだ。遠くから、ズームで二人の戦闘シーンを撮影し、爆発の様子を撮影していた。
「けど、最期のあれは余計じゃないか?」
「いいじゃないの!」
紫晃は映画館で見たラストシーンを思い出した。
『次なるターゲットは貴方の元へ。この世を悪で染め尽くすダークエンジェル!』
そう言いながら、華麗に去るシーンで映画は終わった。
「あのシーンはなんていうか・・・ダサい」
「うるさいわよっ!!」
春奈からの足蹴りを食らった。
それからというものしばらくあの映画館では多くの人が訪れていた。
そして、ジャスティスモールの爆発による崩壊では、多くの人が疑問を持った。小規模の爆発だったが、なぜあれほどの大きな崩壊になったのかということで、調査が入り、ついにジャスティスモールが手抜き工事をしていたことが発覚し、ワイドショーを騒がせた。大規模な復活工事により、しばらく営業ができなくなったジャスティスに代わり、商店街には多くの人が集まった。
だんだんと冬の気配を感じ始めた頃、その商店街はやがてダークエンジェルの商店街と呼ばれるようになり、ダークエンジェルの人形やら食べ物やら色々なグッズが販売され多くの人気を集めた。
上映が続き、徐々に人が訪れなくなった映画館では、オーナーが昔ながらのヒーローアクションや、ダークエンジェルのバトル映像を集めて上映し、さらに話題となり人が絶えることはなくなった。
「うんうん。商店街も活気が蘇ったし、これでめでたしね」
「そうだな」
「さーて、そろそろ次のバトルが始まる頃よね」
「ま、またか」
「またよ」
「偵察・・・だよな」
「わかってるじゃない!ならさっさと行くわよ!あー寒いわー早く偵察終わらせてこたつでぬくもりたいわね」
紫晃達は再びアジトを出て街へと繰り出した。
もう街はクリスマスの色で染まりつつあった。12月はじめのこと。




