10話
「お待たせ。」
きっかり45分後、春奈が待ち合わせの倉庫に戻ってきた。
「どうだった?」
「従業員が5名のうち2名が帰宅。あと、警備室に警備員がいたけど、眠らせておいたわ。」
「その2名はおそらく帰宅したのを確認した。あと、変な女の子が仲間を連れて幽霊探しをしていたが、帰らせた」
「全く、最近の若者はなってないわね」
(特にお前がな!!)
ショッピングモールを爆発させようとしている女子高校生に比べれば、深夜の幽霊探しなんて可愛いものだ。良い子の皆は絶対に真似をしてはいけない。
(悪い子も、こんなことするなよ・・・)
「とりあえず、今のところは問題なしね。じゃ、計画続行ね」
「お、おう」
15分後
「さてと、着替え終わったところで、招待状を出さなきゃ」
春奈はダークエンジェルの姿となっていた。
「ホワイトエンジェルは間に合うのか?」
「当たり前よ。ここまできっとひとっ飛びよ」
そういってダークエンジェルは小型の飛行物体を飛ばした。
「これで時間になったら、大量の予告状がばらまかれるわ」
「やることがでかいな。けど、こんな夜中じゃ、いくら街中とはいえ、ド田舎だから人がいないぞ」
「大丈夫。多分塾で張り詰めて勉強してるから、その帰りにばったりよ」
「流石、幼馴染」
「でしょ」
しかし、ホワイトエンジェルは予告時間よりも早くに到着した。
「どうなってんだよ。」
ピュアブラックとなった紫晃はダークエンジェルに小声で問い詰めた。
「きっと、ばらまく前に小型飛行機に気付いたんだわ。」
「この状況どうする?」
今ダークエンジェルとピュアブラックが置かれている状況は、ホワイトエンジェルに隠れるため、木陰に隠れてヒソヒソと話していた。
「い、行くしかないでしょ。ほ、ほらあんたさっさと行きなさいよ」
「なんで俺なんだよ。こういうのは、慣れてるお前が行けよ」
「はぁ?ヒーローは遅れてやってくるって言うでしょ?」
「待て、お前はヒーローじゃない」
「う、うるさい!!!」
あれこれ話しているうちにだんだん声が大きくなり、ホワイトエンジェルに気付かれてしまった。
「誰だ!!!」
「来たわね、ホワイトエンジェル!待っていたわ!!」
木陰からさっと出てきたダークエンジェルは悪役のボスにしては随分格好悪い登場だった。
その隙にピュアブラックは、一目散に逃げた。この作戦ではピュアブラックは完全なる外野なのだ。
ダークエンジェルは、ムチを取り出すと、いきなり駐車場に停めてあった乗用車を軽々持ち上げ、ホワイトエンジェルめがけて投げつけた。
ダークエンジェルが持つこのムチは、ただのムチではなかった。伸縮性の高い金属製の糸のような物質を外に巻きつけ、ムチの中心は磁力の強い磁石があり、バネのような伸縮性と、強い磁力、さらに女の子の秘密といって紫晃に教えてもらえなかった持ち手の特殊装置で、バスなどの大型車でも軽々持ち上げられる構造になっている。
「はあっ」
ホワイトエンジェルは投げつけられた乗用車をあっさりと、剣で切り刻んでしまった。
「まだまだぁぁ!!」
予告状をばらまくために使われた飛行物体と比べ、さらに小さい丸い超小型の飛行物体がダークエンジェルのマントから出てきて、飛んでいった。するとホワイトエンジェルに向かっていき、ぶつかりそうになるところで剣で切りつけられたと思うと、爆発し、ホワイトエンジェルは吹き飛ばされた。次々と丸い物体がホワイトエンジェルめがけて飛んでいく。
それを見ていたピュアブラックのもとに無線が届いた。
「ピュアブラック」
「なんだ?」
「作戦の時間を早める。このままじゃホワイトエンジェルを抑えているのも時間の問題よ」
「どう見ても、ダークエンジェルが優勢じゃないか」
すると、煙の中からホワイトエンジェルが出てきた途端、ダークエンジェルに攻撃を仕掛けた。どうやら、十数体あった飛行物体をほんの数十秒で片付けたらしい。只者ではないホワイトエンジェルの力にピュアブラックは驚愕した。
「持たない。あと十分後に爆破する」
「わ、わかった」
ピュアブラックは無線の通信が終わるとすぐに、二人から距離を取った。
今回の作戦ではピュアブラックはバトルに巻き込まれてはいけなかった。戦おうとしても、ピュアブラックでは到底相手にならない。
ホワイトエンジェルの攻撃を避けたかと思うとダークエンジェルはムチをホワイトエンジェルの足に巻きつけ、逆さ吊りにして、地面に叩きつけた。地面は割れ、コンクリートの破片と土埃が舞う中、ムチが引っ張られたと思うと、巻きついていたはずのムチをホワイトエンジェルの手に持たれており、ムチを手放す隙もなく、今度はダークエンジェルが木に叩きつけられていた。
「ぐあっ。」
叩きつけられたダークエンジェルが立ち上がるほどの時間が与えられないまま、ホワイトエンジェルの持つ剣からビームが放たれた。
「・・・!!」
一方ピュアブラックは二人の様子を伺いながら、ショッピングモールの五階の立体駐車場にたどり着いた。
「あった」
ピュアブラックが目にした先は時限爆破装置だった。
ダークエンジェルに教えてもらった手順通りに操作を進め、作動した。
“9:59”
“9:58”
刻々と時間が進められているのを確認して、急いでその場を離れようとした。仕掛けてあったロープを使って、地上に降りようとする。真下を見ると足がすくむほどの高さだったが、ホワイトエンジェルと戦っているダークエンジェルはもっと恐怖を感じているだろうとピュアブラックは察した。ここでピュアブラックが立ち止まるわけにはいかなかった。
「ピュアブラック危ない!!!」
ダークエンジェルの声がしたと思うと、ビームがピュアブラックに放たれていた。ものすごい勢いで迫る光線を見事にピュアブラックは避けてみせた。しかし、ロープがビームに掠ったせいで切れそうになっていた。
「しまった・・・!!」
急いで降りようとするが、あえなくロープが切れ、ピュアブラックは落下した。だが、幸運なことに、木がクッション代わりとなり、三階ほどの高さから落ちたピュアブラックは無傷だった。
一方、これで最後と言わんばかりにダークエンジェルはムチを振るった。目にも止まらない速さで襲いかかるムチを剣で交わしながら、二人の戦闘は続いている。
ピュアブラックは時計を目にする。
(あと、五分弱。持ってくれダークエンジェル・・・)
ふと、脇目を見ると、ピュアブラックは閃いた。
(・・・これ、使えるぞ!!)
そう思いピュアブラックが手にしたのは、あの幽霊探し一行が落としたものらしき、録音テープだった。
徐々に押され、劣勢になっていくダークエンジェルはもう奥の手がなかった。すると、ムチの先が切れてしまった。
「やばっ」
その機会を見逃さないホワイトエンジェルは、ビームを放とうとした瞬間だった。
「ぬぅえぇぇぇぇ~ぼおぇぇぇぇ~にょぇぇぇぇ~こおぉぉぉぉぉ~」
怪しげな声にホワイトエンジェルの手が止まったかと思いきや、その声めがけて一目散に走っていった。草むらをかき分けホワイトエンジェルが見たものは、あの録音テープだった。
「くっ・・・騙された。よくも小賢しい手を使ったな。ダークエンジェル!!」
しかし、振り返った先には誰もいなかった。そして、ショッピングモールに小規模な爆破が起こったが、小規模の割にはショッピングモールの崩れ方が大きかった。
「大丈夫か?」
「ええ、何とか。ありがとう。あの変な声がなかったら、危なかったわ」
「ああ、あれな・・・」
(にしても、不気味な唸り声だったなあ・・・)
「ふぅぅぅ。何とか家に帰ることが出来ましたぁ。さてさて、荷解きをして、明日の準備をいたしますか」
そういって、幽霊探しが不発に終わった少女は、持っていたカバンから中身を取り出していった。
「・・・あれ?幽霊呼びのための私の声を録音したものがありませんねぇ。きっとあそこに置いていったのですねぇ。まあ、明日学校の帰りに取りに行きましょうか」
一人の男が、すっかり活気を失った商店街を見回しながら、昔を思いだしていた。かつてこの商店街にある映画館のオーナーだった男は、映画館が栄えていたことを懐かしく思った。男が足を止めると、そこはかつて自分が経営していた映画館だった。
「もうここともお別れだな。」
もうこの映画館が再起不能であるため、ついにここを更地にすることにしたのだ。
映画館の鍵を開け、埃が漂う建物内をゆっくりと歩いた。すると、大きめの封筒が落ちていた。それを拾うと、まだ埃があまりかぶさっていない新しい物だった。しばらくここを訪れなかったはずなのにどうしてこんなものが落ちているのかと疑問に思いながら男は封筒を開ける。封筒の中身を見るなり男は驚いた。
「こ、これは・・・!!」




