悪はやがて正義に変わる。
八月が過ぎたにもかかわらず、まだ蒸し暑い日は終わらない、九月半ばのことであった。
「そういえば、昨日この近くでバトルしていたの見た?」
「ちょうど、帰り道で見れちゃったから、ラッキーだったよ」
通りすがりの会話を耳にしながら、紫晃は昨日の出来事を振り返っていた。
「まあ、こんなもんか…」
そういって紫晃は、夏休み明けに学校で行われたテストの点数を見つめてつぶやいた。90、96、100と並んである数字を見て、夏休みの間、勉学に励んだ報いがかえってきたのだ。辺りを見回すと、クラスメートがテストの点数を教え合ったり、寄り道をしながら帰ろうとしている。ふと、自分にもそういう友達ができればいいと思いながら、帰り支度を始めた。
下校途中、赤信号で止まり、横を見るとそこには、ビルのガラスに映った自分の顔が写りこんでいた。もう消すことのできない頬に残った傷が、人を引き寄せない。また、口下手で目つきが悪いところがさらに人を近づけさせない。なんで自分はこうなってしまったのだろうと、嫌気がさした。嫌いな自分の顔からめを逸らそうとすると、ビルのガラスに信じられないものが映し出されていた。
車が飛んでいる…!!
そして紫晃は車に激突した。
「……」
目を開けると、そこには妙な女がいた。
「あんた、大丈夫?」
そう言った女は、目のあたりを仮面で覆っていて、服装はまるで、アニメに出でくるような、悪役の格好だった。
「だ、だだだ…大丈夫です」
よくわからない女を目の前にして、こわばってしまった。紫晃の顔はまるで襲いかかるような恐ろしい表情だった。
「……」
黙り込む女を見て、紫晃は後悔した。心配してくれた女に、なんて顔をしてしまったと。
「あんた、私と一緒に悪を手伝いなさい!!」
「やだよ。」
その女の意外な発言に耳をうたがったものの、とりあえず紫晃は断った。




