甘い言葉と私の笑顔
これは、ほんわかした恋人たちの、日常のお話。
***
「………」
「………」
慎とすばる。二人はテレビを前にして黙り込んでいた。
今日は慎とお家で遊ぶ日。
とはいっても特にやることはないわけだし、「何か見ようよ」とすばるがとりあえずとテレビをつけた。
そして、今に至る。
「………すばる、これ好きなの?」
見ているのはお笑いの人たちが体を張っていろいろする、というような趣旨の番組。名前は知っていたが、もちろん好きなわけではない。
すばる個人の意見だけど、簡単に言えば、つまらない。
「ううん、特に好きじゃないよ」
その番組自体がつまらないわけじゃないのだろうが、二人ともあまりこういう番組が好みではない。なぜこのチャンネルを選んだ私。
これならいつもと同じようにお話ししているほうが数倍楽しかった気もする。
二人の間に微妙な空気が流れ、そして十数分経った頃に慎のほうがとうとううたたねをし始めた。
え、確かに私の好みではなかったけれど寝るほどつまらないの?
ちょっと驚愕しつつ慎を凝視。
そしてふと気が付くのは、慎の目の下のクマ。
慎はクマが目立たないため、あまり気にしていなかったが、かなりお疲れのようだ。
昨日、何時まで起きてたんだ・・・・?
そんな疑問をちょくちょく抱きつつ、とりあえず慎にタオルケットをかけておく。
きっと疲れていたんだろう。寝かせておいたほうがいい。
そう判断したすばるは、とりあえず一人でヒマつぶしをすることに決めた。
相変わらずそのチャンネルはつきっぱなしであり、それをちょくちょく視界に入れながらすばるは本を読む。
ソファーに寄りかかっている二人。
何をしていたのかひどく熟睡している。
そんな慎を横目に読み進めていく本。そして、数十分たったころに、ふとテレビに目を向けた。
相変わらずあのコメディだが、体を張ったバラエティのコーナーは終わっており、お笑いの人たちがコントをやっていた。
思わず慎の隣で盛大に吹き出してしまったすばる。あっ、起こしちゃうっ、と必死で笑いを押し殺すけれど、一度ツボに入ったものはなかなか抑えきれない。
必死で笑い声を押えながら笑っていると、隣の気配が動いた。
「あっ・・・ごめんね、慎、起こしちゃった?」
「ん~・・・・・」
まだ若干寝ぼけているようで、目がトロンとしていた。なんだか可愛いな、と思ったのとコントの面白かったところが重なり、また盛大に吹き出してしまう。
「ごっ、ごめんね慎、まだ寝てて大丈夫だよ」
そう言うと、慎はなんだか返事をした。聞こえにくかったためもう一度聞き返したすばるに、慎はこう答える。
「やっぱりすばるは、笑ってるほうが可愛いね~・・・」
「えっ・・・」
そう言ってまた眠りに落ちていく慎。カッと頬に熱が集まるのを感じるすばる。
こういうところが天然たらしなんだ、慎は・・・となんだか的外れなところにとんでいった思考と比例するように、さっきまでの異常な笑いは消え去っていた。
誰もいないというのに、照れ隠しをするように眼前に本を構える。
落ち着いたころには、テレビ番組はつまらないニュースに変わっていた。
そんなことを寝ぼけながら言った、という話を聞いた慎が真っ赤になるのはまた別のお話。