専門外の診療
その時読んでいる小説に影響されやすいタイプです。これを書いているときは星新一さんの小説を読んでいました。
私は自分が優秀な医者であると自負している。専門としている分野の手術では、世界でも三本の指には入るだろう。
テレビに何度も取り上げられ、私が個人経営している病院には毎日沢山の患者が訪れる。
しかし、困っていることもある。知名度が上がるにつれ、私の専門外の患者が訪れる事も増えてきたのだ。私ほどの医者でも、専門外の事となればどうすることもできない。
今日もとあるご婦人が、私では手に負えない手術を頼んできた。
「先生、うちの子は他の子に比べて、うんと脚が短いのを気に病んでいるんです。年頃の子ですから、なんとかして先生の手術で脚を長くしてあげられないものでしょうか」
私は仕方なく、他の病院への紹介状を書いた。
「こちらの病院まで行かれると良いでしょう。私には専門外の事ですので」
そう言って、私はご婦人の後ろで疲れきった面持ちをしているご主人に、知り合いの精神科の紹介状を渡した。
ご婦人の腕の中で、健康そうなダックスフンドが「ワフン」と一息ついた。
コメントしづらい作品だと思いますが何か感想など有りましたら是非に。