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そして舞台の場所へ

「本題に入ろう。」



「お前なぁ…だからってなんでその格好なんだよ。」



キリリとした青砥はクロックコートを翻し、優雅な仕草で珈琲をいれる。



自分と真澄の分だけ。



あとトン、とボールペンを鳴らした真実のも。



床波と馳平の分は芦刈がミルを使いいれている。



お嬢様どうぞ、な扱いを嫌そうにしながらも青砥の珈琲は大変美味なので、素直に口をつける真澄にシュガーポットとミルクを勧めながら口を開いた。



「あれは夕刻差し迫った午後の」



「早く言いなさい。」



真実の指摘に咳をひとつ。



「まず、あの数珠だが本物を見た事はない。だが依頼人の話によるとあの数珠には仕掛けがあるという」



「どんなです?」



これで説明を、と馳平が自分の身に着けていた天然石の連なった数珠を青砥の前に置き、説明を促す。



「例えば。通常これに光をあててもなんら示さないが、その数珠はとある方向を示す。そしてその方向についての記述を残してとある人物が死去しようとしている。」



白黒の写真が机舞う。



「種村貴寿、結城氏のお宝をみつけたトレジャーハンターだ。」



種村貴寿



家康も探したという結城氏のお宝を手に経済界で一台旋風を巻き起こした



時代の風雲児。



…………といってもそれは終戦後の話で、十年間稼ぎに稼いで忽然と姿を消したという奇妙な、

だが伝説の人物。



その謎が多い人物が遺した遺品だ、興味をそそられるなという方が間違っている。



「何処だよ。」



「あぁ、長州だ。」



床波が立ち上がる。



「行くか。」



否を唱える者はいなかった。















「やべっこれマジ旨くね!?」



「時期の河豚は流石だねぇ。」



関門トンネルをくぐり、みもすそ川近くの平家茶屋を背に壇ノ浦を眺めながら



赤間神宮を参拝し、唐戸市場で食事をしている。



今日は日曜日で唐戸市場では一般も入れる上に新鮮な海の幸を安価で楽しめるのだ。



河豚ちりはもちろんの事、垂涎な寿司や烏賊揚げ等々がまだ若い彼達の食欲を誘う。



「真澄ちゃん何食べる~?」



「自分で買えますから。」



「真澄、今青砥は財布よ。青砥、河豚ちり。」



「真実は河豚ちり、と。真澄ちゃんは何食べる?ひらめ?トロなんてどうかな?」



喜々として六人が座るテーブルにご飯を運ぶ青砥。



「芦刈、何喰う?」



「自分だけ持ってきなよ。」



ご機嫌伺いの珍しい床波に満面の笑みを浮かべる芦刈。



さっさと自分の分の食事を買いに行った背中に手を伸ばす床波の回りは猛吹雪だ。



「…何かあったんですか?」



馳平が真実にそっと聞けばにやりと笑う真実。



「昨日芦刈が床波の所に泊まったんでしょ。」



「芦刈先輩は床波先輩の所に泊まると不機嫌になるんですか?」



「そう。」



「何ででしょうか?」



「何ででしょうねぇ」



のんびりと話す二人に溜め息をついて真澄は青砥キツイ視線を向ければ青砥は心底嬉しそうに微笑んだ。



「目的地はここじゃないでしょう!?」



「ここから北東の方向だよ。」



「じゃぁなんで寄り道してるんですか!」



「え~せっかく真澄ちゃんと旅行に来れたんだから観光と、ぐふっ」



青砥の顔面がコンクリートの床にめり込む。



「他に言いたい事はあるか!?」



ドスのきいた真澄の長い足を包むパンツスーツの裾が、



ウェーブにかかった髪をひとつにまとめた毛先が。






風に揺れている。





「あり…ます、真澄ちゃん大好っゴホ」



青砥の頭が完全にめりこんだ瞬間、怯えた声が後ろからした。



「あの、M大学奇怪研究会の皆さん…でしょうか?」



そこには完全にびびっている三十後半の背の低いスーツ姿の男が立っていた。



「お見苦しい所をお見せしました。」



ボコッとコンクリートから音を立て立ち上がった青砥は背筋を正し、鈍色のスーツの肩口についたコンクリートの破片を払う。



「奇怪研究会の代表青砥硝一郎です。」



白い歯を見せにこやかに笑うのは一見して爽やかで礼儀正しい好青年。



中年の小柄な男は先刻のコンクリートにめりこんだ姿を一度頭を横に振って忘れる努力をし、懐から名刺を取り出す。



「私は種村洋子さんの弁護士をしております、藤堂雄一郎と申しまして本日は皆様のお迎えに上がりました。…お食事は、もう済まれましたか?」



いいえ、真っ最中ですと言いながら振り返った青砥は一瞬目を細めて藤堂弁護士に向かい柔らかな笑みを浮かべる。



「とりあえず食事でもしながらお話をしましょう。」



藤堂は猛スピードで消え失せた卓上の食料を見ながら事務的に言葉を繋いだ。








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