忌み子と盲目の少女
※盲目を虐げる表現がありますが、それを推奨するわけではありません。
※一部残虐な表現があります。
※一番最後にイラストを貼っていますので、見たくない方は挿絵OFFを推奨します。
昔々、あるところに一匹の異種族の間に産まれた忌み子がいた。竜と巨人の間に産まれた禁忌の子。
親は禁を犯した罪により、同胞から無にされた。
彼も親と同じように葬られようとされたがされなかった。
否、できなかったのだ。
哀れなことに、あまりにも生命力がありすぎて。
何度心臓を止めても再生し、活動を始めるのだ。
”二つの種族は世界を支配する王の一族。竜は天を。巨人は地を。それぞれの種はそれぞれの領域を”
そのため、どちらも属さない彼は天と地の間の狭間に追いやられた。
どちらの種も存在しない世界へとその世界には彼が見たことがない種が住んでいが、ここでも彼を忌み者として迫害された。
この世界に住んでいる者たちにとって彼は異形すぎだったのだ。
━━━━彼姿は竜に似て非なるモノ。空を支配する竜は自由に空を翔ける翼がある。だが彼の翼は羽化に失敗した羽虫の翅のように縮れ、空を自由に翔けることができなかった。
━━━━彼姿は巨人に似て非なるモノ。地を支配する巨人は地を自由に駆ける脚がある。だが彼の脚はイモリのように地を這い、鈍足のせいで地を自由に駆けることができなかった。
彼は嘆いた。何故、何故、何故。何故自分はこのような生まれになったのか。両親を恨み、二種族う恨み、世界を恨んだ。
時を流れていつしか彼は考えなくなった。体をあるが中身が無になっていた。彼は弱気者であったならば、辛い生を進まずにいられたのに・・・。
そんな彼に一人の少女がやってきた。
少女は彼に語りかける。
「あなたは生きてるの?死んでるの?」
彼は答えなかった。
虚空を見つめ、聞こえているのか否か。
それでも少女は彼に寄り添った。
ゴツゴツと鱗に覆われた体に触れれば、生きている証と温もりがあったからだ。少女は盲目で、人里離れた此処へ捨てられ、他人の温もりに飢えていた。
季節は何ども巡った。
巡るうちに彼は傍に、小さな生き物がいると理解したのだ。
ある日、いつまでも離れない少女に問うた。
『何故、此処にいる』
だが、少女は彼の言葉を理解することができなかった。また、彼も少女の言葉を理解できなかった。
意思疎通ができないまままた幾つもの季節が巡った。
ある昼下がりだ。
少女はいつものように彼の傍らにいる。
ふと、彼は空を見上げた。
あんなに忌々しかった空に、今はなにも感じない。ただの空だ。
徐に、巨人の眼を持つ右目から涙が溢れる。
彼は思った。『あぁ、そうか。私は一人ではないのだ』、と。
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