自己紹介?
これなら分割する必要は無かったように思います(汗
「おーい、起きろ」
ペチペチと音がする。誰かが自分の頬を叩いているのだ。
はて、誰だろう。
エリーゼがこんな起こし方をするとは思えない。
「いい加減に起ーきーろ」
声は異性のものだ。しかも若い。自分とあんまり変わらないかもしれない。
居眠りしている自分を起こす異性の知り合いなど居ただろうか。
そもそも、自分はなぜ寝ているのだろうか。
「さっさとしねぇと、またモンスターに襲われるぞ」
また―――
その言葉に記憶が爆発する!
周りの目を盗んで入った森。
そこで出くわした大きな犬型のモンスター。
必死に逃げても簡単に追いつかれてとうとう行き止まりで対峙した。
だが目の前で吠えられた途端、恐怖で何も出来ないまま食べられそうになってそれで。
「はっ!!」
飛び起きる。
「ようやく起きたか」
そうだ。
魔法使いの少年に助けられたんだ。
「あの、ありが―――
お礼を言おうとしてふと言葉が止まった。
いや、待て。助けられたのか?
助けられはしたのだろう。
しかし何かこう、納得いかない。
確かにこの人がいなければ自分は死んでいただろう。
だが、ただ助けられたと言うには自分の中の正義というかが許さない部分がある。
(代わりに自分で戦ってくれてもいいはずだったし、私が戦う意味ってあったの?)
一応、聞いてみることにした。
「ね、ねぇ」
「ん?」
相手の顔色に不快なものは見当たらない。異性と二人きりで話すのは初めてだが、大丈夫そうだ。
「なんで私を戦わせたの?」
「そっちの方がSPの効率が良かった」
「………」
(な、何その理由!?いくら何でも女の子にそんな理由で戦わせたって言うの!?)
「逆に聞くけど」
(何聞かれるんだろう?っていうか男の人ってこういう時どんな質問するんだろう?年齢はないよね?じゃぁスリーサイズとか?それともまさか…エッチなこととか!!?)
「う、うん。なぁに?」
内心そんなことを考えているとはとても思えないような自然体で促す。声が若干上擦っているのは気にしない。
「お前、家どこ?」
質問内容はエッチでも何でもないものだった。
(えぇ~~~~~!!!お、お家の場所なんて聞き出してどうする気!?まさか、報酬は乙女の秘密とか新鮮な身体とかそんな感じの~~~~!!?)
なのに勝手に解釈して慌てふためく少女。
「え、えと、その、それって、どういった意味で、というか、あの、その…」
「あのな、お前現状分かってんの?迷子なんだぞ?」
その一言で急速に頭を冷やされる。
(そうだ、私森に迷い込んじゃったんだった…)
「あ、でもお家の場所聞くってことは…」
淡い期待を込めて聞くと、少年は大きくため息を吐く。
「乗り掛かった船だ」
なんとも嫌そうに答えた。
「あ、ありがとう」
「…報酬は払ってもらうからな」
「え!?」
驚きの声を聞いた少年はまたため息を吐く。
「当たり前だろ…こちとら慈善事業でやってるんじゃねぇんだ。こんなの街の子供だって親に教えられる常識だろうが」
「ま、まぁ、そうよ、ね。大丈夫。わ、分かってるから…」
本当か?と疑いの目を向ける少年にぎこちなく頷く。
(ど、どどどどどどんな要求されちゃうの私!!?ほほほ、本当に乙女の純潔とかそういう感じの大人な階段的な!?けけけど、命の恩人だし強く出られたら拒みきれないというか、ちょっぴり興味あるような、だけど初めては痛いって聞くしっていうか本当に!!?)
「あ、あわあうあうあわわわ」
「んで、どっちの方向?」
いい加減移動したいのだろう、少しイライラした口調で少年が急かす。
はっ、とした様子で正気に返った少女は思い出すように話す。
「えっと、家はカウンドルで、だけどお父様の出張に着いて来てて、なんてとこだったかな?ヒ、ヒリ、ヒル……??」
「ヒルドラグトか?」
「……………………たぶん」
はぁ~~~、と今まで以上の大きなため息を吐いて立ち上がる。
とりあえず目的地は決まった。
ならば、森の中なんてさっさと抜け出そう。
立ち上がった少年を見て、少女は慌てて尋ねる。
「あ、あのっ!私っ、シェリル・ウィングフィールドっていうの!あなたの名前、教えて?」
少年は適当に頭をぐしぐしと掻いて、
「ヤマト。ヤマト・イズモだ」
と簡潔に答えた。