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電子世界の開拓魔術師  作者: 矢口 旬
世界は始まった
1/15

プロローグ

この作品はフィクションです。

この作品に登場する人物、又は人物名、団体名、地名その他固有名称はたとえ実在する名前と同一のものであっても何の関係もございません。

誤字・脱字がございましたら報告していただけると幸いです。

 

 世界は二人の悪魔と一人の勇敢者によって大きく変えられてしまった。


 まず一人目。ゲルツ・シュタイン。史上最悪の危険思想の持ち主であり、同時に彼以上の天才は未来永劫現れないかもしれないと言われるほどの科学者でもある。

 彼は全世界で禁忌とされていたクローンを億単位で作り、文字通り世界中の街や人を徹底的に調べ尽くした。そして彼は彼しか知らない、物質を電子データに変える方法で第二のビッグ・バンを起こして世界を作り変えた。滅ぼしたと言ってもいい。

 彼の起こしたビッグ・バンβは今現在も広がっていて、宇宙を電子データ化し続けている。


 次に二人目。ハーバート・フリゲート。彼はいわゆる廃人だった。

 当時の世界は―――電子データ化している点を除けば―――何もかも以前と変わらなかった。人は携帯メールで連絡を取り、自動車で移動し、パソコンでオンラインゲームをする。子供は公園で遊び、大人は会社で働き、老人は隣人と将棋を指す。学生は悩み励んで、芸能人は躍進し輝く。そんな当たり前が、彼には耐えがたかった。故に彼は世界を再び変えた。

 廃人と呼ばれる人間だった彼は、独学による長年の研究を用いて世界にクラッキングを仕掛けたのだ。世界は、オンラインゲーム風に姿を変えた。道にモンスターが現れ、HPヒットポイントSPスキルポイントが個々に設定され、アイテムが登場し、移動は徒歩かワープホールで行い、人々は魔法という概念を知った。通信方法は携帯ではなく念話という機能に取って代わり、求められるのは社会的能力よりもサバイバル能力になった。今まで現実だと思っていたものが幻想となり、人々は戦うことを余儀なくされた。しかしそれだけで経験のない人間がいきなり得体の知れない怪物と戦って勝利を収められるかと言われれば、答えは当然の如く否だ。

 結果として、ほんの五年の間に世界人口は半分になってしまった。そこからさらに十五年が経過した頃。世界人口が五分の一になった頃だ。一人の勇敢者が現れた。


 それが三人目。アクサナ・マーソン。彼女は先の二人に比べて一歩劣るが天才には違いない人物だ。

 彼女はモンスターに蹂躙されていく世界を変えるため、無秩序化していた当時の世界にルールを設定することにした。世界に今度はハッキングをしたのだ。最早幻想となってしまった昔の現実を取り戻すことは出来なかったが、代わりに人々が生き抜きやすくするように設定しなおした。

 怪物が闊歩する範囲を指定し、人々は能力をより成長させることが出来るようになり、死の概念は取り除けないまでも蘇生という概念を導入することでより死ににくくなった。これによりゲーム化が進行してしまったのは皮肉だが、彼女の功績は人間という種を生き延びさせるために偉大なものだったと言えよう。


 彼ら三人の手で成された世界改変はそれ以上変わることの無いまま三百年という月日が過ぎた。人々は相変わらずゲーム的現実を生きている。

 誰が言い始めただろうか。この世界を人々は呼ぶ。


B.W.O.ビット・ワールド・オンライン』と。

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