Encounter3
「ここの遊園地の名前は…ミリオンっていうのね」
「遊園地の名前なんか知ってどうするの?」
「アトラクションが面白かったら、テレビでピーアルしてあげるわ。きっとこれまで以上に人気がでるわよ」
まったく彼女はどれだけ自分に自身があるのだろうか……と考えている間に愛花は入場チケット売り場へ歩いていた。まったくもって、自由奔放である。
「早く来なさい霧峰!チケット購入は紳士がやるものでしょ」
「あーもう、わかったから」
仕方なく僕は愛花のあとを追い、チケット売り場の前に立った。入場チケットは一人2000円…一人暮らしの身には痛い出費である。
「一人2000円ね…あれっ?でもここに一人500円で乗り放題飲み放題食べ放題コースってあるわよ?」
「よく見てよ愛花…」
愛花の指差す先のコースの条件は全く無縁のカップル限定。この遊園地は人を選ぶ遊園地のようだ。
「うっ…これは…」
流石に愛花も赤面しているようだ。僕自身も恥ずかしい気分である。
「まっ、まぁ、背に腹は変えられないわよね、霧峰?これ以外にこんなお得なコースはないわけだし」
「僕に聞かないでよ…カップルだよ。これは無理があるって。出会って30分くらいしかたってないよ僕等」
「まぁ、そうだけど……そうね、あなたが私に遊園地内限定のカップルになってください。と膝をついて懇願すればカップルってことでいいわよ。デートってことで、気分がいいから、本当に特別によ」
「はっ?」
「別に、私は10000円でも苦しまないわよ」
我ながら不覚であった。何を隠そう愛花はトップアイドル、金は相当あるはず。しかし僕はただの高校生。凛城家からは一ヶ月ギリギリ切り盛りできるくらいしか仕送りはこない。僕の負けである。逃げるわけにもいかない。
「くそっ…」
八方ふさがりじゃないか。
「さぁ、早く膝をついて懇願なさい!」
なんで僕がこんなめにあわなければいけないのか。神が僕をみはなしたというのか…というか、さそったのは彼女の方だろ…
「わかったよ…でも膝をついたりなんては絶対しないから!」
僕は大きく息を吸い覚悟を決めた。
「愛花様。僕と遊園地限定でカップルになってください。よろしくお願いします」
お辞儀をし、彼女に対しそう言った。僕は別にいつも通りに近い話し方であるため恥ずかしくはない…わけもない。穴があったら入りたい。体が熱くなって爆ぜてしまいそうな気分だ。
「えっ、その…仕方…ないわね。まさか、本当に言われると思っていなかったわ」
「あのー愛花、冗談ではない…よね?」
「冗談のつもりで言ったのだけど…まさか本当にするなんて考えていなかったのだけれど」
やってしまった…巽が言った冗談を信じてしまい校庭10周させられた時の二の舞ではないか。この場合彼女にはめられた、という認識よりも冗談を冗談と思わなかった僕に問題があるように思う。
「くそーーーー‼」
やり場のない感情を僕はただ、叫ぶ事でし発散する事ができなかった。なんとも無念な状況である。