表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き目覚め  作者: バトレボ
第二章 神域と血
18/110

お触れと兆し

読んでいただきありがとうございます

白蛇村の朝は、冷たい霧の中に始まる。水源の澄んだせせらぎが微かに鳴き、鳥たちが神域の空を横切る。


村の広場に、見慣れぬ布告が張り出されたのは、そんな朝のことだった。


「白蛇信仰、本流に従わぬ者は、加護を受ける資格なし——」


金縁の文と、朱色で押された印。そこには、近隣の村の有力者たちの名と共に、“代表者 クニミツ”の名が書かれていた。


その布告には続きがあった。


> 『白蛇信仰を正式に護持するためには、年ごとの祈祷料を納めること。これにより信仰の安寧と加護の均衡を保つものとする』


言葉巧みに装飾された命令。だが実際には、信仰という名を借りた搾取の構図だった。


その紙をじっと睨んでいたのは、かつて白蛇村を訪れた少年、ユウイチだった。


*


ユウイチは、白蛇村を離れてからというもの、どこか心が騒がしかった。


あの村にいたテンの姿、カズハの眼差し、そして何より——白蛇さまの存在が頭から離れない。


不思議と、あの村にいたときは落ち着いていた。だが今、外の空気を吸えば吸うほど、何かが間違っているような感覚に襲われていた。


布告を見たユウイチの脳裏に、昨夜耳にした噂が蘇る。


「白蛇村は、妙な村だ……語りだの加護だの、あれは“異端”だ」


「白蛇信仰を盾に、好き勝手やってるらしいぜ。金を払わせて、自分たちだけ豊かになってるとか」


「そろそろ、誰かが“正して”やる必要があるってさ」


*


その声の主は、村を束ねる商連の男たちだった。


彼らはすでに動いていた。数人の若い男たちを連れて、白蛇村へ向けて出立したという。


「“異端”を正すためにな」


その言葉の裏にあるのは、信仰や倫理ではなかった。——欲と恐れ、そして排除の意思だった。


ユウイチは胸騒ぎを抑えきれず、走り出した。


*


彼はまだ少年だった。

剣も魔も持たぬ、ただの少年。


だが、白蛇村の静かな朝、カズハの語り、テンの変わりゆく目、

そして山の奥でただ静かに彼を見つめていた白蛇さま。


あの風景が、何か大切なものだったと、彼は感じていた。


「誰かが……知らせないと」


息を切らし、森を抜ける。


彼の足は、かつての道をなぞるように、白蛇村へと向かっていた。


*


その頃、テンは神域の境界にいた。

微かな気配を感じて、山の獣たちが警戒している。


そして白蛇さまも、頭をもたげていた。風の流れが変わる。神域の空気が、ゆっくりと、乱れ始めていた。


*


静かに進む足音。だがその歩みは、確実に“境界”を踏み越えようとしていた。


悪意は、既に放たれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ