訂正中
訂正中
元↓
今から語るのは前日譚である。
それは俺が中学3年生の時、俗に言う青春時代の聖夜から始まったのだ。
プルルル、プルルル、プルルル
「はぁぁ」
久しぶりの呼び出し音に耳を塞ぎながらため息をつく。
クリスマスイブに電話をするなんてリア充じゃないかと、
いつものポジティブ風の俺ならそう思うだろう。
が、呼び出し音を鳴らしてきた相手の名前を見て鳥肌すら立った。
「あぁぁーもう、あぁぁ‥‥」
ボサボサの髪をかきむしりながらこれからのことを考えて、
そして泣きたくなって、
そして考えるのをやめた。
プルルル、プルルル
呼び出し音が続く。
ときどきゲームの手を止め相手の名前が変わっていないことを確認し、
炭酸飲料を口に流し込む。
プルルル、プルルル、プル‥
10分くらい経っただろうか、まだ鳴らし続けていてくれという
思いに反するように呼び出し音は消えた。
確かあいつは今日、デートするとか言っていたがどうなったんだろうか。
「あぁぁ、クッソ‥‥」
いつから俺は同年代の勝ち組と全く違うルートを辿ってしまったんだろう。
小学校‥‥いやせめて幼稚園までは同じような生活だったはずだ。
あいつらが今、現在進行形でしていることを想像して、また髪をかきむしる。
明日は外に出よう。
終業式ぶりだと思う。
さすがに頭が痛いし、勝ち組とやらを見に行こう。
プシュッとフタをあけ、残り少ない炭酸飲料を喉に通しながら少しワクワクしていた。
そして次の日、クリスマスだ。街は豪華な装飾がされていてまぶしい。
都会なだけあって流石に人が多く、
クラクラするような気分になりながらも街を歩き回る。
そして歩き回りながら、男女二人組を見かけるたびに願う。
どうかあの人たちが幸せになりますように。
本来、俺は不幸を願うような人間ではないのだ。
俺の代わりといってはなんだが幸せになって欲しい。
これは本心だ‥‥と思う。
と、周りを再び見ると制服の男女二人組が、
手を繋いで笑い合いながら歩いているではないか。
「あいつらだけは許しておいてはいけない‥‥」
最近、女子と話すどころか笑ったことすらない俺は、
小声で呟きながら羨望の眼差しを向けていると、
すぐそばに同じく制服を着ている人。
「ん?」
一人だし‥‥
同じ中学、いや高校の制服を着ている!
来年の春から俺が袖を通すはずの服。
いつ着ることになるかは俺の気分次第だが‥‥
俺の学校は一応、進学校なのでこの時期の高校二年生、三年生は部活がないはず。
ということは彼女は一個上。高校一年生である。
なぜ ”彼女” と分かったかというと‥‥いや、見たらわかる。
髪の長さとかではない。
久しぶりに脳が働いているのだろうか、本能がそう言っている。
キモ!っと自分で思いながら、キモっ!と同級生の女子の声が幻聴で聞こえる。
でも、でも、でも!
久しぶりに鼓動が早くなるのを感じる。
なんだろうこの気持ち。
アニメキャラには決して湧き上がらなかったこの気持ち。
同級生の女子には決して湧き上がらないこの気持ち。
いや考えるまでもない。
好きだ。
いや‥‥大好きだ。