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異世界でも野球やろうぜ!?  作者: ウエス 端
vs. ノウ=キーン王国
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第7話 剛球投手

 光が消えて気がつくと既に球場のベンチ内にいた。


 ここは……3塁側か。


 とりあえずベンチ入りメンバーを確認しよう。


 監督と記録員は……ドネリー将軍とセシリー、これは予定通り。


 選手も、事前に選抜して練習させた人たちから順当に選ばれていた。


 ……いや、よく見ると1人違う。

 全然候補にも上がっていなかった女性だ。


 突然のことで思いっきり不安そうな表情をしている彼女だが、どういう基準で選ばれたのか。


 事実上1人少なくなるが、どうしようもないし、これだけなら良しとしよう。



 続けてバックスクリーンのスコアボードを見る。

 オレたちは今回は先攻だ。


 あれ?

 スターティングメンバーは空白になっている。



「スターティングメンバーヲ、記載シテクダサイ」


 うわっ、びっくりした!


 ベンチ前にあの『審判部長』のロボットがいつの間にか来ていたのだ。


 そしてタブレットみたいなのを差し出されたが、誰も受け取ろうとはしない。


 そりゃそうだよな、ただでさえ不気味な存在なのに、前回の試合のことを知っている奴なら近づきたくもない。


 しかし誰かが行かねば……うっ、みんなの視線はオレに集まっている。


 恐る恐る近づいて、慎重にタブレットだけに触るようにして受け取る。


 うっかりロボットのボディに触れて身体を消滅させられたら、たまらないからな。


 画面上の表にペンで書き込んでいく。


 それをまた、そろそろと渡すと、ロボットは口から吐き出すかのように紙を出してきた。


「控エデス、受ケ取ッテクダサイ」


 なんか嫌なやり方だな。


 ロボットは1塁側にも行き、その後、ボードにメンバーの名前が出てきた。


 こっちは間違いない、オレは3番投手になってる。


 相手チームのメンバーに要注意人物がいるかは、後でピアーズに確認しておこう。



 さて、試合前のシートノックの時間だ。

 まずは相手チームから。


 見てる限りは、動きは大雑把で、時折緩慢なプレーも見られる。

 そもそもノック自体がウチに比べれば全然イケてない。


 だがどの選手も肩が強く足も速い。


 強い打球でないと、内外野とも間を抜くのは簡単ではないかもしれない。



 そしてオレたちの番、外野フェンスのクッションボール処理や内野の連携なんかも確認しながら練習する。


 終了時間が来てベンチに引き上げようとすると、相手の選手が1人こちらに歩いてくる。


 スキル発動前にオレに向かって槍を投げてきた野郎だ。


 改めて見るとデカいな。

 オレも190センチあるけど、それより一回り大きく感じる。



「貴様が大将軍なんだろう? 兄キの仇を討つことを、俺がどれほど待ち望んでいたと思う?」


「兄だと? 誰のことを言ってるんだ」


「とぼけるな……貴様のせいで右腕を失い、あまつさえこの世から消されたマテオ・ゴンザレス、それがオレの兄キだ」


 あー、この前の試合で、オレや審判部長に暴力行為を働こうとして退場処分にされたやつか。


「それを直接やったのは審判部長の奴だ、オレは何もしてねーよ」


 まあ、審判部長もオレのスキルの一部なわけだから間接的にはオレのせいかもしれんが。

 でも最初に攻撃してきたのはお前の兄貴だっての。


「あぁ!? 貴様がおとなしくぶちのめされて死んでいれば、兄キは死なずに済んだ! 言い逃れは許さんぞ!」


「無茶苦茶な理屈を言うな! ただの八つ当たり、逆恨みじゃねーか」


「まだ言うかぁ! このルイーザ、お前を必ずこの世から消し去ってやると誓ったのだ! 覚悟しておけ」


 奴は一方的に言いたいことだけ言ってベンチに引き上げていった。


 オレも心の中で思うことがないわけではない。


 でも戦場に出た以上は、それを気に病んでいたら自分が死ぬだけなのだ。



 そして試合前の整列。

 向こうはみんなデカいしムキムキだ。


 それに比べると、こっちのメンバーは明らかにパワー不足。


 こちらが勝つためには、ロースコアの展開でということになりそうだ。



 そして1回表の攻撃。


 マウンドにはルイーザの奴が登った。


 あの槍投げからすると鬼のように肩が強そうだけど……。



 ズドーン!


 投球フォームは滅茶苦茶だが、右腕から放たれるボールは、まさにキャッチャーミットに突き刺さるかのような剛速球だ。


 だけどコントロールはアバウトな感じで精密さとは程遠い。

 しかも変化球を投げる様子がない。


 とりあえず序盤は待球して自滅を待つか。


 オレは1番ウォルター、2番エドモンドにボールの見極め重視の指示を出した。


 2人とも、こっちのメンバーの中ではトップクラスの選球眼とバットコントロールを持っている。


 とにかくオレの前にランナーを貯めないと話にならないので、何でもいいから塁に出てほしい。



 ズバーンッ!


 ストライク、バッターアウト!



 2人とも3球3振となった。


 チキショー、全球ストライクゾーンに入ってた。

 しかも適度にバラけて配球されてる。


 相手のキャッチャーはサインを出してないから、ピッチャーが適当に投げて出たとこ勝負ってことか。


 キャッチャーは身体を張ってボールを止める頑丈さで選ばれてるようだ。



 早くもオレの打順が来た。

 とりあえず左打席に入ったが、待つべきか好球必打か迷っていた。


 ゴォーッ!


 うわっ、ボールがオレの顔面に向かってくる!


 オレは思わず仰け反って、ドシンと尻もちをついてしまった。


 クソ〜、ビーンボール投げやがって!


 奴は不敵な笑みを浮かべつつ、わざとらしく手首を振って『コントロールミスっちゃいました』アピールしてやがる。 


 2球目は、真ん中やや高めストレート。


 ここは好球必打!


 なんとか反応してバットに当てたが、ガコッと詰まった音を響かせて、ボテボテの3塁線外側へのファール。


 やや振り遅れたか。

 それにしても、芯を外すと手の痺れが半端ない。


 奴のボールは回転数が少ないようでノビては来ない。

 だけど手元で微妙に変化する時もあるみたいだ。


 さて3球目は、外角低め。


 ボールと見切って見逃したがコールはストライク。


 さっきのビーンボールの影響か、外角の見極めが微妙に狂ってるようだ。


 追い込まれてしまったが、ストライクゾーンに来たら強く振っていくしかない。


 奴のボールの球威が強いので、当てにいくだけではヒットにするのは難しいからだ。


 そして4球目、やや内角高めのストレート!


 オレの好きなコースだ。

 思い切り、引っ張りに行く。


 バシーン! と芯には当てたと思う。


 しかし球威に押されて、力のないセンターフライに終わった。


 ちなみに球速は今日最速の156キロ。


 これは、思っていたよりも相当な苦戦を強いられることになりそうだ。

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