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異世界でも野球やろうぜ!?  作者: ウエス 端
vs. チアラフラ&ラーショナリア連合チーム
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第19話 急行

 オレは今、王国南東部の出城から戦場へと、少数の部隊と共に急行している最中だ。


 南東部の穀倉地帯を攻めてきているチアラフラ王国側に不穏な動きが見受けられたからだ。


 これまでのらりくらりと無理せずに攻撃してきていたのに、主力武将を集めて大きな攻勢をかけようとしている。


 そして隣国のラーショナリア王国もそこに加勢する動きが見られたのだ。



 ドネリー将軍曰く、この前オレに暗殺者が送り込まれてきたのと合わせたかのような動きなので、両者は関係あるかもしれないとのこと。


 やはり、相手側にこちらの計画がある程度漏れていたかもしれない。


 相手側の狙いは、先手を打って収穫期の穀倉地帯から根こそぎ略奪し荒廃させることだと思われる。


 こちらの計画の目的である食料確保を邪魔することで、精神的に大きなダメージを与えようというわけだ。


 そしてドネリー将軍からは、できるだけ早急に援軍を出すべきとの助言を受けた。


 それに従って、今この状態となっている。


 だけど問題がある。


 スキルを発動したら試合のベンチ入りメンバーとして選ばれるであろう候補の半数近くが、集合が間に合わなかったのだ。


 それでも人数としては足りるが……選球眼に優れた1番打者ウォルターと好守のセンターであるコナーがいないのは結構痛い。


 相手ピッチャーに化け物がいないことを祈る。



 そんなことを考えている間に、辺り一面が畑しか見えないだだっ広い平地に差し掛かった。


 だけどところどころ荒れ果てていたり、放棄されかかっている畑が目につく。


 絶対にここを守り抜いて農民の人たちが安心して農作業ができるようにしなければ。


 できなければ、オレ自身だって飢えることになるかもしれない。



「キュータロウ殿、間もなく前線に到着しますが、なんとかギリギリで間に合ったようです」


 ドネリー将軍からの言葉で前方を見ると、砂埃や土煙で覆われた一帯が目についた。


 激しい戦闘が行われているのがひと目でわかる。


 それはいいが……こちら側の兵士たちが滅茶苦茶押し込まれて、もう前線が突破される寸前って感じだ。

 


 みんなの体調を考えるとひと息つきたいところだったがやむを得ない。


 オレとベンチ入り候補たちへ、回復術師から簡単なヒーリング魔法だけかけてもらって体力を回復させる。


 そして敵軍がこちらに向かって雪崩込もうとする寸前に、オレはスキルを発動させた。



 戦場の兵士たちを球場に取り込むことに成功したようだ。


 観客席の3塁側は敵軍兵士で満席状態だ。


 こちら側はそこまでではない……既にかなり戦死が出てしまっていたらしい。


 いや、それにしても敵軍が多過ぎないか?


「おい、キュータロウ。どうやら、チアラフラ王国と援軍のラーショナリア王国両方を一度に取り込めているぞ」


 ピアーズから、相手側ベンチ内にいる選手たちの中でそれぞれの王国の要注意人物について説明を受けた。


 複数の敵国が連携して攻め込んできた場合は、両方を同じ戦場で活動するとみなしてどちらも引き込めるようだ。



 つまり相手は急造の連合チームってわけだ。

 守備の連携とか綻びが出たところを突いていけそうだ。


 既に、どちらの総大将が監督をやるかで揉めているようだし、これは楽勝かもな。



「よぉよぉ、アンタがウワサのキュータロウさん?」


 ベンチ前をうろついていたオレに向かって呼びかける男の声。


 振り向くと、日焼けした褐色の肌でドレッドヘアの背が高い男と、落ち着いた雰囲気の女性が立っていた。


 こいつらは確か、え〜と……。


「おれはチアラフラのデズモンド、ヨロシクゥ! ポウポウポウッ!」


 デズモンドは自己紹介もそこそこに、いきなりオレの身体を両手の指先でツンツンし始めた。


「うわ、ナニすんだよ!」


「いやさぁ、聞いた話だとホントに人間なのかって思って。チョット確かめただけだ、そんなに怒るなよ〜」



 チアラフラ王国は陽気な人が多いと聞いたが、まさにそのイメージのまんまって感じだ。


 それにしても背が高い。

 オレよりも高くて195くらいありそうだ。


 体格はスマートというか細マッチョで、全身バネっぽい筋肉をしてる。


 なにげに笑ったときに見える歯がきれいな白でなんか印象に残ってしまう。



「……もういいかしら? 私はラーショナリア王国騎士団のイザベラ。お見知りおきを」


 栗色で腰あたりまである長い髪と、一見スリムだが引き締まった身体付きの凛々しい女性だ。


 ピアーズの説明だと、彼女は自国内では剣聖と呼ばれているらしい。


 対戦してみないとわからないが、やはり強打者っぽい雰囲気を感じる。


「はあ。まあ、よろしく」


 一応挨拶して握手はしたけど、笑顔でとかはやりにくいよな。

 これからどちらかがこの世から消滅する運命なのだから。


「それじゃあな、キュータロウ。手加減よろしく頼むぜ〜」


「相変わらずアンタたちは適当ね。試合では足を引っ張らないようにしてくださるかしら」


「そんなツレナイ事言うなよ〜。チョットだけど一緒に練習したじゃな〜い? あひゃひゃ!」



 2人は噛み合わない漫才のような会話をしながら去っていった。


 既にオレの情報が出回っているだけでなく、野球の試合になってしまった場合を想定して合同練習までしてたのか。


 どうやら舐めてかかるとエライことになりそうだ。


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