エレベーター怪談
こちらは百物語八十話の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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時間は夜の11時過ぎ。
会社で残業していた時の話です。
当時、ウチの会社は長い繁忙期が続いており、ほとんどのスタッフが毎日会社に残って残業をしていました。
「えぇ、はい…書類の作成は終わっています…えぇ、その後の会議は…」
地方の工場にいる上司と携帯電話で会話しながら、エレベーターに乗り込んだ時のこと。
「あっ!どうも…」
エレベーターの扉が開くと、そこには優しそうな顔をした初老の女性がいました。
(こんな時間に誰だろう?取引先の人かな…でもこんな時間に…)
女性はスーツ姿や工場着でもなく、普通の格好をした女性でした。
「9階、行きますか?」
女性はエレベーターへ乗り込んだ私に向かって、小さな声で言いました。
「いえ、事務所がある2階へ…えっ?」
この会社のオフィスは8階建てで、9階は存在しません。
しばらくするとエレベーターのドアが閉まり、ゆっくりと上に向かって動き始めました。
チーン…
ドアが開くと、女性は私に向かって…
「9階ですよ。降りますか?」
笑顔でそう言ったのです。
そこは確かに9階でした。
エレベーターの外を見ると、床に「9階」と書かれた文字を見つけたのです。
「9階ですよ。降りますか?」
女性はエレベーターから降りると、私に向かって笑顔で手招きをしてきます。
「い、いいですっ!おりませんっ!」
私は咄嗟にそう叫びました。
なんというか、本能が拒否をしたというのでしょうか。
心の中で「絶対に降りてはいけない」という思いが強くあったのです。
女性が私に向かって残念そうな顔をした瞬間、エレベーターのドアが静かに閉まりました。
その後、私が2階の事務所へ向かうと…
「おい、どこで何やってたんだ!現場から長時間離れるなら連絡くらいしなさい!1時間も待っていたんだぞ?」
時計を確認すると、時間は夜中の12時を過ぎていました。
現場から事務所まで10分とかからないはずなのに、私は1時間も説明不可能な時間を過ごしていたのです。
「エレベーターで事務所へ行こうとしたら、変な女性が乗っていて…9階に行ったと思ったら9階なんてなくて…何て言えばいいんだろう…」
その後、私は先輩にこっぴどく叱られました。
もう会社のエレベーターは使っていません。
あけましておめでとうございます!
今年も怪談を投稿できるように頑張りますので、またよろしくお願いします!