午後四時半、文芸部部室の微睡み(文芸部寮。独白)
誰かの気配がするところで寝るのが好きだ。
「あ、部長、また寝てる」
「また昨日も寝られなかったみたいだからね。寝かしといてあげて」
「はーい」
気を許した人たちの声や、気配、物音は、最高の子守歌だと思う。
寝ている自分に気遣ってか、少し抑えた声。
たまに、堪えきれなくてどうにも大きくなってしまう笑い声。
どちらも、耳に心地好い。
あまりにも心地好いから、一度録音してみたことがある。
それで、寝られるかなと思って。
確かに入眠はいい感じだったけど、すぐに目が覚めてしまった。
やっぱり、本人たちの気配がいい。
「部長、本当によく寝てるなあ」
「気持ちよさそうだよね、いつも。こっちまで眠くなるわ」
「今度、みんなでお昼寝大会しましょうよ」
「いいねぇ」
いいかも知れない。音が無くても、それなら寝られるかも。
いいね、と言いたかったけれど本格的に意識が底の方に落ちて行って、私は何も言えず、ただただ倖せな気持ちの中を揺蕩っていた。
END.