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「・・実はね、わたしの大学ときの友達が突然眠ったままになってしまったの。」
「眠ったまま?」と、僕は小さな声で優貴の言葉を反芻した。少し動悸が激しくなった。
「・・その子が眠ったままになったしまったのはつい最近のことなんだけど。」と、優貴は言葉を続けた。
「わたしたちすごく仲が良くて、だいたい週に一回は会って一緒にお茶したりしてたんだけど、でも、突然、彼女と連絡がとれなくなっちゃったの。メールを送っても返事は返ってこないし、電話をかけてもつながらなくて。」
優貴はそこで言葉を区切ると、お冷の入ったグラスを手に取って、少しに口に含んだ。
「それでわたしすごく不安になったの。どうして連絡がとれないんだろって。もしかしたら交通事故とか病気にかかったりしたのかもしれないじゃない?」
「そうだね。」と、僕は頷いた。
「それでわたし思い切って彼女の実家に電話をかけてみることにしたの。彼女は実家住まいだったから、彼女の実家に電話すれば何かわかるんじゃないかと思って。」
優貴はそこまで話すと、またお冷を少し口に含んだ。僕は彼女の言葉の続きを待って黙っていた。
「それで彼女の実家に電話したらね。」と、彼女はお冷の入ったグラスをテーブルの上に戻すと話はじめた。
「彼女のお母さんが電話に出て、娘が眠ったままになっちゃったって泣きそうな声で言ったの。・・わたしわけがわからなくて、それで詳しくて訊いてみたんだけど・・そしたらね、ある日いつも通り仕事を終えて家に帰ってきて彼女は、自分の部屋でおやすみなさいって眠って・・それでそのまま目を覚めなくなっちゃったみたいなの。」
「もちろん、べつに死んでしまったとか、そういうことじゃないわよ。」と、彼女はそれまで伏せるようにしていた眼差しをあげて僕の顔を見ると、付け加えるように言った。
僕は黙って頷いた。それから僕はコーヒーの残りを飲もうとコーヒーカップを口元に運んだ。でも、それはいつの間にか空になってしまっていた。
「・・・ただ眠ってるだけみたいなんだけど・・。」と、優貴は何かを思案するようにテーブルの上あたりに視線を落として少し小さな声で続けた。
「でも、身体を揺すっても、叩いたりしても、全く目を覚まさないみたいなの。最初の二日間くらいは、そのうち起きるだろうと思って、向こうのご両親も諦めてそのままにしておいたらしんいだけど、でも、三日経っても、四日経っても、彼女は起きなかったらしくて・・いい加減心配になった彼女のご両親は眠ってる彼女をそのまま病院に運んで診てもらうことにしたみたいなの・・。」
「それでどうだったの?」
と、僕は気になって尋ねてみた