8話
だいぶ暗闇に目が慣れて、辺りが見えるようになってきたと同時にヘリコプターから救援物資が落とされてきた。
「ドサッ」そんな音が聞こえたのは約50メートル先。俺はそこに向かって足早に向かうのだった。
草むらの上にあるアタッシュケースを右手に持ち、すぐに洞窟に戻ろうとした時、霧雨が降る小さな音とともに少し低い声が俺の耳へと届く。
「そのアタッシュケースを置いてこの場から消えろ」
そう言ってきた男が持っている懐中電灯のライトに俺は照らされる。
あいつは確か・・・・リーダーシップをとってみんなをまとめてたやつだ。
「もし、これを持って逃げたらどうなる?」
「これで君の身体に風穴が空く」
リーダーシップ男はジャケットの中からリボルバー式の拳銃を取り出した。
なんで銃を持っている?リュックの中に入っていた?いや、みんなナイフしか持っていなかった。考えられる理由は救援物資・・・有り得る。
目を細め、じっくりと銃を観察する。
リーダーシップ男の手は震えてない。って事はもう既に何人か殺ってるな・・・
「OK、俺も風穴は空けられたくない。けどさ、その銃って本物?」
「当たり前だろ。こいつで既に2人を殺した」
ハンマーを倒し、銃口を空に向けて引き金を引こうとするリーダーシップ男。俺はこの時を待っていた。
引き金を引いた瞬間、俺はアタッシュケースを持って全力で走る。
あの銃は自動銃じゃない。リボルバー式、しかもシングルアクションだ。一々ハンマーを倒さなきゃいけない。
相手の慢心を逆手にとった策。初心者とは言えど、流石にこの距離なら誰でも当てられる。だから、全力で走って距離をとる遮蔽物になる木陰に入り込む。
俺はライトを持ってきていない、位置バレが怖いからな。マジで持ってこなくてよかった。リーダーシップ男は追いかけては来てる。けど、社会人と学生・・・しかも俺は運動部なので大量には自信がある。それと打って変わって社会人は運動をしていないような感じだ。もう既に息が上がっている。
よし!これなら逃げ切れる・・・・ック!
地面は雨でぬかるみ、今日は既にアホみたいに走っている。その上、人を1人殺してメンタルは最悪。この状態で俺が転ぶのは偶然では無く、必然なのかもしれない。
すぐに立ち上がろうとするが、地面が滑る。それに全然気づいてなかったけど、足に木の枝が数本刺さっている。アドレナリンの放出で今まで気づかなかったのだろう。
「ハハッ、悪足掻きはやめたまえ。今なら許してやる。さっさとアタッシュケースを寄越せ」
今、この状況はあの時とよく似てる。
ただ一つ違うといけば、俺には助けてくれる人はいないということだ。