2話
ここに来て一日が経つが、特に苦労はしていない。
20歳ぐらいの男性が、リーダーシップをとり、みんなで助け合いながら生きて行こうという事になり、10人全員でこの廃墟に住んでいる。
それと、他にもいい情報があった。2日目から一日に2回、2箇所に救済物資を落としてくれるらしい。
ただ1つ、顔を合わすのも初めてな人々に少しばかりストレスがある。それもまだいいが、食事が無くなった時にはどうなるか分からない。
俺は今一度リュクサックの中身を確認する。数日分の着替えと寝袋、食料に水、あとはナイフだ。それ以外は絆創膏や包帯などの応急処置ができる道具にタオルなどのよく使うものだ。
あと9日、何も起こらずに居ればいいな・・・
無人島生活が始まって5日目、とうとうその時がきた。
「うひゃ、うひゃひゃひゃ。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁ」
そんな奇声を発しながら、1人の男が女性の身体に何度も何度もナイフを突き立てる。「グチュ、グチュ」何度もそんな気持ち悪い音が響き渡り、近くにいた人全員が唖然としている。
「ちょ、君。何をしているんだ!」
刺された女性の目から生気が完全に失われた頃、リーダーシップを取っていた男がナイフを持った男に言葉を投げかける。
「ハハッ、もう終わりだ。食料はもう無い。水も雀の涙程度、ろくに風呂にも入れずに気持ち悪い。だから、終わらせよう、こんなクソみたいな生活。アイツが言っていたようにやるんだ『殺し合い』を。恨みっこ無し、弱いやつから死んでいく、デスゲームの始まりだ」
ストレスの限界、まだ折り返し地点と言う絶望、1度も満たされない空腹感、風呂に入れない不快感、数を上げればキリが無い。そんな状況で冷静な判断をできる人なんて、ほぼいない。
こうなってしまった以上やる事は1つ。
自分のリュクサックを持ち、廃墟から全力疾走で出る。あんな所にいたらいつ殺されるかわかったもんじゃない。だから、逃げる。残り5日間をどう生き延びるか考えながら、ただひたすらに走って、走って、走る。
今日、この時間、この場所で始まってしまったのだ。人生の生き残りをかけた『殺し合い』が・・・・