1話
朝起きて、身支度をして、高校に行き、学習して、友達と雑談を交し、帰宅して、ゲームして、課題をして、寝る。
これが俺、神崎光輝の一日だ。何の変哲もない、どこにでもありふれたただの日常。そんな日々に退屈を感じながらも充実感を覚えながら生活していた。
だけど、ある日。その日常は崩れ去った。
いつも通りの下校。友達とわかれ、見慣れた道を歩く。そして、曲がり角を曲がった時、誰かとぶつかった。
ぶつかった衝撃で俺は体制を崩し、しりもちをついてしまった。
「すみません」
そう謝りつつ、地面に手を着いて起き上がってぶつかった人を見る。
ゆうに190cmを超える身長に黒いジャケットとサングラス。その見た目に俺は思わず裏世界の住人か?と思ってしまう。
「・・・君が神崎光輝か?」
数秒俺を見つめてから言ってくる長身の男。その声からは謎の圧を感じた。
「はい・・・」
嘘をつく事もできた。でも、長身の男は俺を数秒見つめてから言った。それは俺の写真か情報か・・・何かを見た、もしくは聞いたことがあるのだろう。そんな相手に嘘をついても無駄だと思う。
「それじゃ・・・・眠ってもらおうか・・・」
長身の男が懐から取り出したのはスタンガン。それを見るなり、生唾を飲んだ。
身体が反射的に動いて長身の男から距離を取るようにして走り出す。俺は運動神経はいい方なので多分逃げられる。そう思いながら走り、後ろを向いたら長身の男は立ち尽くしたまま。疑問に思いながらもスピードは落とさずに走る。
けど、気づいた時には長身の男は背後にいて、俺の意識はスタンガンでいとも簡単に飛ばされていた。
「ん、んーん」
目を覚ますと同時に床の冷たい感覚が背中に伝わり、仰向けの状態から身体を起こし、胡座をかく。
目を擦り、未だに覚醒しきっていない意識を無理やり覚醒させ、辺りを見回し、状況を冷静に考える。
ここは廃墟か?辺りには老若男女問わず、俺含め10人の人がいた。そして俺の近くには1つのリュクサック、それには俺の名前が刺繍されている。
「これで全員起きたね・・・・」
突如、人が現れそんなことを言う。俺ら全員の視線がそいつに釘付けになった。
「ここはどこだ?」「なんで連れてきた?」「家に返せ!」などの叫びがこの廃ビル内に飛び交う。
「ここは無人島。君たちを連れてきた理由はただ1つ。天野軍事学校へ入学するための選別さ・・・・」
軍事学校?・・・・軍事学校といえば、戦いなどを教わり、卒業後は自衛隊に入る。時には特殊部隊や公安一課、二課、三課などからスカウトが来るらしい。
と、そんな事はどうでもいいか・・・しかもネットの情報だし。
「軍事学校なんかに入らねぇ!」その言葉に続いて「そうだそうだ!」などの言葉がまたしても飛び交う。
「ああ、もう!うるさいなぁ。話が進まないでしょ!」
そうキレ気味に呟いた主催者は拳銃を取り出した。
悲鳴が飛び散り、阿鼻叫喚の嵐になったこの場は誰にも止められない。ただ1人以外は。
「うるさい!次許可なく喋ったら殺すよ?」
その一言で場は静まりかえる。
「ルールはこの無人島で10日間生き残ること。リュクサックの中身は着替えと2日分の食料だ。ここまで言えば分かるよね?」
あぁ、なんて災難な日なんだ。俺はこんな人生最悪の日を二度と忘れないだろう。
そして主催者は言った。
「君たちには殺し合いをしてもらいます。どんな手を使ってもいい。リュクサックの中にナイフ1本だけ入れて置いた。さぁ、生き残りたいのならば殺せ。じゃなきゃ殺される。僕から言えるのはただ1つ。『殺られる前に殺れ』」