表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/18

魔剣を求めて①


広大な大地

そこにそびえ立つ険しい山道を、二つの影が太陽の下に照らされながらも進んでいた。


彼らは目的地を目指す為に、この険しい山道を登っているのだ。



「兄さん、少し休もうよぉー」


そう弱音を吐いたのは、


魔法使いのローブを着た青年だった。


持っている杖に体重を預けながらも、ぜぇ、ぜぇ、っと肩で息をするかのように、

くたびれた表情でこの険しい山道を一歩ずつ、一歩ずつ、と登っていた。




それに対して、


目の前をスイスイと歩く、もう1人の青年。


こちらも魔法使いのローブを着ている。


外見だけで判断するとしたら、二人は魔法使いだと言えるだろう。

こちらは先程の青年とは違い、杖は持っていないが、代わりに知的な眼鏡をかけているのが印象的だ。


顔立ちは先ほど弱音を吐いた青年と似ている。

二人が兄弟と言うことは、おそらく誰が見ても一目瞭然だろう。

こちらの青年は息も切らさず、涼しい顔で、この怪しい山道を登っている。


そして後ろを歩く弟の呼び声に振り向き、

知的な眼鏡を二本の指でクイッっと上げては、自分より遅れて歩いている弟に対し声を投げかけた。



「ジナトス、、、

 さては鍛錬を怠っているな?

 "魔力での身体能力の向上"は基本的なことだと、

 あれほど言ったではありませんか。

 それだと言うのに、、、はぁ」



ため息混じりに、呆れながら僕にそう言ってきた。


先を歩く兄は、何かを探すように、少し脇道へとそれて歩き出した。


座りやすそうな場所を見つけたようだ。


小さな岩に腰をかけ、僕がそこまで登ってくるのを、美しい風景を眺めながら待ってくれている。



どうやらそこで休憩をしてくれるみたい。


休憩だと思うと僕の足は不思議と軽くなった。

まったく、現金な足だ。

しょうがないから僕はこの足の期待に応えるべく、

急いで登ろうと思いましたです、はい。



兄さんは疲れを知らないのかなぁ?


そんなことを思いながら、僕は兄さんが待っている休憩場所へとたどり着くことが出来た。



おっと、

自己紹介が遅れたね。


僕の名前はジナトス。


立派な魔術師(マジック・キャスター)になる為に、

日々『オーバーロード』のアニメを観たり、500ページにも及ぶ小説を読むようにしている。

僕はアニメから入った民だから、ガチファンの方にしたら、僕なんか"にわか"でしかない。そう思うと申し訳ない気持ちがちょっぴりだけある。

あれで1000円〜1200円なのだからお買い得だ。

あれがもし1800円だったとしたら、

僕は本屋さんで手に取るのを躊躇(ためら)っていたことだろう。


アニメ四期と劇場版が始まる前に、予習、復習、を欠かせ無い僕は、とても勤勉な青年なのだ。


決して、

「あなたぁ、怠惰ですねぇぇぇ」なんて言わせない。

あっ、、、

これは別の作品だったね。てへぺろっ。


こんなふざけたナレーションをしていると、

そろそろ兄さんに怒られそうだから、この辺にしておきますです、はい。



ちなみに兄さんの名前はザナトス。

僕と違って、とっても優秀な魔法使いなのさ♪

え?

さっきは魔術師(マジック・キャスター)って呼び方だったって??

細かいことは気にしない。気にしない。


兄さんは僕とは違って、

あらゆる魔法の知識を得ようと、日々、

難しい本や魔法の研究、そして学問の本など、努力することを苦にせず、積極的に取り組んでは、知識を身に付けようと勉強をしているすごい人なのだ。


そして兄さんは、僕らのお(うち)の家宝とも言える、先祖代々受け継がれている魔導書【古の禁忌目録】を読み解ける、数少ない魔法使いなのだ!ドヤっ!!



自慢の兄!

それが僕の兄さん!!

兄さん最高!!!

早く、富と名声を手に入れてっ!!!!

僕を楽にさせて!!!



昔の父さんと兄さんの会話では、


父さんが、


「はっはっは。

 喜べザナトス。

 『賢者モフ郎』様が、

 お前の魔術回路の論文を褒めていたぞっ!

 ザナトスは朱墨爛然(しゅぼくらんぜん)

 と言う言葉がほんとうによく似合うなぁ!

 はっはっは。」


とかなんとかって満面の笑みで言ってて、

それに対して兄さんは、、、


「父さん。

 私などまだまだですよ。

 私もモフ郎さんを見習い、

 白首窮経(はくしゅきゅうけい)を目指しております。」


っと、謙虚な返事をしていた。


父さんは「素晴らしい(こころざし)だ!」って喜んでいたっけ。

続いてこうも言ってたなぁ。

「お前なら魔道の深淵(しんえん)を覗けるかも知れん!」

っと、

兄さんの肩をバンバンと叩いては満面の笑みを浮かべていた。


「ハハハハハっっ。」

って2人して笑い合っていたっけ。


二人の会話を聞いていた僕は、二人が笑い合うのは何がおかしいのか、まったく分からなかった。

まず、

普段使わないような難しい言葉を並べられても、、、それを聞いた僕はこう思うしかなかった。


「日本語でおk」


って、


そんな懐かしいフレーズが頭を過ぎったからだ。

何が言いたいのかと言うと、つまり、、、

僕は兄さんと違って頭の出来がよろしくないのだ。

それはこの文面をお読みいただいて察していると思ってますが、まさにその通りなのだ。



「ふぅ〜。良い眺めだね」ゴクゴクッ


僕は兄さんの所まで追いつき、食糧をしまってある鞄から、革袋を取り出した。中には水が入ってある。

それをカラカラの喉に染み込ませながら、勢いよく飲んでは、この山道から見える素晴らしい絶景を堪能(たんのう)していた。



「……やれやれ。

 景色を見る為にこの山に来てるわけじゃないんだぞ?

 日が暮れる前に、この山を越えますよ。」


兄さんはご自慢の眼鏡をクイッとあげては、またスタスタと山道を登って行った。


僕は名残り惜しくも、この絶景を後にした。



しばらく登って行くと、


商人の馬車と見られる荷馬車が止まっていた。

その近くで小さな岩に腰をかけては悩んでいる素振りを見せるおじさんがいた。


どうやら先に進めず、困っている感じだった。



「どうかしましたか?」(クイッ)


心配し、問いかける兄さん。


僕も兄さんの後ろから、ひょこっと顔を出しては様子を伺った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ