⑨悲鳴
僕達は無事に山道を抜けて街へと辿り着いた。
ここまで僕達を馬車で運んでくれた商人のおじさんにお礼を言ってはお別れをした。
「闘技場かぁ……パクパク。
強そうな人がいたら仲間になって貰おうよ!
……ムシャムシャ。」
僕は先ほど街のお店で買った
〈ブラキキングお肉〉を食べながら
闘技場を目指していた。
「ジナトス。(クイッ)
喋りながら食べるんじゃないですよ
行儀が悪い。」
兄さんが眼鏡をクイッっと上げては僕のことを注意した。
「まぁまぁ、ザナトス。
食べ歩きもなかなか良いもんだぜ?
それに食べれる時に食べとくってのは、
戦士の基本だからな。
まぁ俺は剣士なんだけどな!はっはっは」
『りゅのくん』もそう言いながら
串焼きになっている〈ブラキキングお肉〉を
ガブリッと頬張った。
「肉汁ぶっしゃー!柔らかお肉うっまぁー♪」
っと言った感じの飯テロの顔をしていた。
「……私は座っていないと、
食事を取れないタイプなんですよ」
兄さんは少しキレ気味にそう言った。
僕達のことを呆れながらも、
兄さんも闘技場を目指して歩いていた。
(そういえば闘技場は
魔法使いでも参加できるのかなぁ?
参加料がやたら高いってりゅのくんが言っていたから、
料金次第では僕達全員の参加は無理かも……)
なんてことを僕は考えながら歩いていた。
すると、
「キャー!!
い、イヤッ、やめてくださいっ離してっ!」
「おらっ!さっさとこっちに来い!」
街の路地裏から女の子の悲鳴が聞こえてきた。
僕とりゅのくんはお互いに目を合わせ、
そして頷いたのち
すぐさま悲鳴のする方へと助けに向かった。
兄さんは黙って眼鏡をクイッっと上げては
僕達の後を追ってきてくれた。
「やれやれ、またやっかいごとですか」
っと心の中で言っているのが僕にはわかった。
なぜなら僕は兄さんの『眼鏡クイッ』を
小さい頃から何度も何度も見てきたからだ。
そもそも兄さんの『眼鏡クイッ』っは……
「ジナトス!気をつけろ!
向こうも俺たちに気づいたぞ!」
説明の途中だったけど、
りゅのくんからの注意を受けた僕はすぐに警戒した。
女の子を連れ去ろうとしている体格がゴツい
スキンヘッドの男がこちらをチラッと振り向き確認した。
女の子は細い腕を掴まれながら強引に引っ張られていた。
「……」
スキンヘッドの男は3対1の状況が不利と判断したのか、
握っていた女の子の腕をパッと離し解放した
そして僕達に対して
両手に『気力』を込め路地裏の壁を殴ってきた。
ガラガラガラッーードオーン!!
路地裏の壁は見事に崩れてしまった……
「ちっ、逃げられちまったな」
りゅのくんが悔しがっていた。
「きみ大丈夫?」
僕は倒れている女の子に手を差し出した。
(あれ?
この女の子、、、どこかで見たような……)
「助けていただきありがとうございます……」
か細い感じだったが、
上品で透き通った声だった。
「……ッ!
え、『エリーナ姫』⁈
なぜこのような場所に⁈」
兄さんのご自慢の眼鏡が下にズレるほど、
兄さんは驚いていた。