表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

プロローグ


立派な館の地下室に、

黒いローブに身を纏う怪しげな集団がいた。


その集団は〈秘密の会談〉をしていたのだ。


秘密の会談、、、それは……


『この世界で脅威となっている魔獣。

それを従えることのできる存在、【魔獣王】を復活させよう。

そして人類の味方に付けさせよう』


っと、


このように黒いローブを身に纏った集団は企んでいるのだ。



しかし、


その会談に参加していた二人の兄弟が、

自らの父親に意を唱えた。




「父さん!

 何を言ってるのですか!

 『魔獣を手懐(てなづける)』などと、

 そんなことが可能だと、

 本気でおっしゃっているのですか?」


眼鏡をかけた若い青年が、珍しく声を荒げてそう言った。

彼は普段は冷静な物言いだからだ。


心配そうに言葉を続けた。


「私が読み解いた【古の禁忌目録】の1ページには、

『【魔獣王】は魔獣達をパワーアップさせ、

 世界に災厄や混沌をもたらすだろう』

 っと、

 そう記述されているのですよ?」


少し落ち着いたのか、若い青年はご自慢の眼鏡を2本の指でクイッと上げ、

〈秘密の会談〉の内容を真っ向から否定した。



この青年に同調するように、隣で聞いていたもう一人の若い魔法使いの青年も、声を震わせては兄へと続き便乗した。



「兄さんの言う通りだよっ!

 父さんッ!それに他の人達もみんな聞いてっ!

 この計画は良い面ばかり見てるよ!

 即刻に中止するべきだよっ!!」



弟と思われる若い魔法使いの青年も、

【魔獣王】の復活には断固として反対の様子だった。



しかし、、、


優秀な魔法使い。凡才の魔法使い。この二人から反対されようが、

この怪しげな集団達の意思は変わらなかった。


「ザナトス……ジナトス……

 お前たち兄弟はここに残りなさい。

 この計画は、

 私達の長年の夢でもあり、一族の目標なのだよ。

 ようやく、"魔獣王の復活"の手段が見つかったんだ。

 どこかの地に眠る【光と闇の双子】と言う存在によって、

 代償を支払うことになるのだが、、、

 その代わり、

 その双子はなんでも願いを叶えてくれるらしいのだよ。

 大丈夫さ。心配はいらない。

 お前たちはここで、

 私達の成功を祈って帰りを待っていてくれ。」



二人の父親らしい人物は、兄弟に向けそう言い聞かせた。


二人の兄弟を残し、

黒いローブを着た集団は立派な館を後に去っていった。



残された二人の兄弟は、怪しい集団を説得すること虚しく、肩を落とし、父親たちの無事を祈った。



結論から言ってしまおう。



黒いローブを着た集団は『魔獣王の復活に成功した』。



しかし、、、



その集団はこの館へと二度と帰ってくることはなかったのだ。



復活した【魔獣王】は凶暴で恐ろしかった。


当然、人類の味方などするはずもなく、

魔獣達を従えては世界を絶望へと(おとしい)れようと、

大陸中で暴れまわったからだ。


【魔獣王】は最初に古の知識でもある《エルフの隠れ里》を狙った。

次に〈魔法剣士〉が多数いる《赤髪の一族の村》を襲撃した。


【魔獣王】は自分達の驚異となる、この二つの強敵の存在を、

真っ先に潰しに行ったのだ。


二つの部族は【魔獣王】に対して奮闘した。


しかし残念ながら、、、


【魔獣王】に手傷を負わせたものの、大陸ごと滅ぼされてしまったのだ。



大陸が滅ぼされ、【魔獣王】の出現に世界の人々は恐怖し、混乱した。


平和な世から一転して、世界の危機と化してしまったのだ。


世界の危機を防ぐ為に、それぞれの国が団結することを誓った。

そして、いつしか人は、【魔獣王】を倒せる勇者や英雄が現れることを心の底から望んだ。


【魔獣王】が暴れ回っていることを知った二人の兄弟は、父親とその仲間達が生きてはいないことを嘆いた。


「兄さん、、、このままじゃ世界が」



弟と思われる青年が、心配そうに眼鏡をかけた兄に声をかけた。



「えぇ。……魔獣王を止めなくてはいけませんね。」


眼鏡の青年は2本の指でクイッと眼鏡をかけ直しながら、

自分達の責任だと、どこか負い目を感じていた。



「でもどうやって?

 兄さんの持つ魔法がすごいのはわかるけど、

 エルフの人達や、"赤髪の一族"でさえ、

 魔獣王に勝てなかったんだよ?」



無知な弟が優秀な兄に問い、答えを求めた。


魔獣に対して特化した職業のはずの魔法剣士でさえ、

勝てなかった存在に、

驚異的な存在に、

たかだか人の身である魔法使いが圧倒的な強さの【魔獣王】に勝てる未来が想像できなかったからだ。



その問いに、優秀な兄は静かに答えた。



「……。

 遥か昔に、

 『勇者』が【魔王】を倒した際に集めたと伝えられている【7本の魔剣】。

それらを私達で集めてみるしかないですね。

もしかしたら、、、

それで魔獣王を討ち倒せるかも知れない……」



優秀な兄が答えてみたものの、彼にもそれが正解か本当かもわからず、伝承に対しての確信は持てなかった。


そんな兄の気持ちなど理解せず、


「わかった!集めてみようよ!」


っと、

驚くほど楽観的な返事を弟が告げた。

兄とは対象的だった。


兄に対して絶対の信頼をしているのか、

都市伝説にも似た、神話のような話にもかかわらず、

弟は兄の言葉を信じた。

「兄さんが言うなら間違いない!」っとでも言っているかのような、そんな強い信頼と自信がそこにはあった。


こうして二人の兄弟は、【魔獣王】を倒すべく、

【7本の魔剣】を探す旅へと動き出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ