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[奈落]禁断の書架にて、禁書をめくる。その影は有り得た光景であり、有り得べからざる光景であり

-- イヴ


教会の屋根裏部屋、禁書庫。

子供達は此処に近寄らない。

いい子達です。


ここは禁断の知識を納めていて、誰も近づけない場所・・・

そして、私達が昔遊んでいた、遊び場。


本来は魔族の王である私が居てはならない場所だったのですが。

よく議論を交わしたのです。


そしてまた此処に居る。

魔王の歴史が終わり、魔王は過去の物となる。

それでも、外に紡ぐ話があるかどうか・・・その見極め。

或いは教訓として、或いは物語りとして。


グレアは私の存在には気付いていない筈なのですが。

手が必要とはいえ、ここへの入室を許すとは。


資料を仕分ける手は止めず、話を切り出してみる。


「ねえ・・・グレア」


「何ですか?」


きょとん、として尋ねるグレア。


「実は貴女に話したい事があって」


グレアは、手を止めると、告げる。


「私は、貴女から聞きたい事は有りません」


・・・。


「少し、昔話をしましょうか。私にはかつて、親友がいました。そして、親友に裏切られ、私は・・・いえ、この教会は信用を失墜しました。私は、その親友を許せません。いえ、許すわけにはいかないのです。これまで信じてついてきてくれた、全ての人々の為に」


・・・。


「それは、ハズレを引いたような物。決して本人が悪い訳ではない。それは教会の教えです・・・ですが、私達は例外でした。私達は、それを予期していました。近いうちにそれは来て・・・そしてその対象は私か、親友か、どちらかだろう、と。そこで、私達は、対策を立てていました。それが来たら、速やかに自決出来るように」


・・・。


「親友は、私達を、いえ、全ての人々を裏切りました。怖くなったのか、何かを思いついて試したくなったのか・・・理由は分かりません。唯一の機会を逃し・・・そして、それに負け・・・私は親友を失いました」


・・・。


「親友を失った事を悟った私は、可能な限り対策を取りましたが・・・認めます、私はアレには勝てませんでした。元々、私は魔法や武術には優れていましたが、学業やカリスマでは、アレに勝てた事はなかったのです。無論、私の弱さが招いた結果、と言われればそれまでですが・・・私はアレを許せません」


・・・。


「アレも苦しんだかも知れない、もしくは、それをも許されるような素晴らしい事を成し遂げたかもしれない。神聖な存在の一部、もしくはその上位の存在かも知れない・・・でも、私はアレを許しません。もし可能なら、私はアレを引き裂き、罪を償わせ、私もこの身を投げ出すでしょう」


・・・。


「だから、貴女から聞きたい事は有りません」


・・・。


グレアは、表情を緩めると、


「無論、依頼した仕事、どの物語を開放するか、といった話なら、是非聞かせて下さい、イヴ」


謝りたい、が、その資格もない。

私は、書類を仕分ける作業に戻る。


「こちらの内容は、概要を編集する事で、物語として語っても良さそうです。こちらの山は、内容は過激ですが、知識として得る物は有ります」


「有り難う、大変助かるわ」


グレアはそう言うと、私がより分けた資料を読み始めた。

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