[奈落]その存在は魔王、最悪の存在。伏して許しを請い、与えられるは慈悲
-- リヴィア
「どうした、ミスリールよ?」
妾が尋ねると、先程までの威厳は消え去り、涙を浮かべ、へたり込む。
再会の感動であろうか。
戸惑いも有るのかも知れない。
顔が青く・・・少し漏らしているようだ。
まだ若いとは言え、幼いとは言えない歳。
ちょっと恥ずかしいですよ。
妾はミスリールに近寄ると、目線を合わせる為、ミスリールの顎を手で持ち上げる。
「ひっ・・・ご、ごめんなさい、ごめんなさい、御姉様、ごめんなさい」
「あらあら、魔王が泣いていてどうするの。よしよし、辛かったですね。もう大丈夫ですよ、今楽にしてあげます」
何故か謝る妹をあやし、肩に手を置く。
あら、この子はまた漏らして。
感動のあまり漏らすとは・・・犬みたい。
「少し落ち着きなさい、駄犬のようですよ」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ゆ、許して下さい」
地面に額を擦り付けるミスリール。
不思議な娘。
ふと見ると、兵士達は目を反らさずこちらを見ている。
これは不味いですね。
ミスリールの恥態を愉しんでいるのか。
本当に兵の質が落ちている・・・
「グスタフ、愚か者め。さっさと馬鹿な兵士どもを下がらせぬか。ミスリールに恥をかかせるきか?」
「な・・・貴様・・・いえ、貴方様、はいったい・・・しかし、その言は正しい・・・」
グスタフは兵士達に退去を命じる。
慌てて兵士達が去っていく。
「本当に兵の質が落ちましたね。妾に恥をかかせるのですか?」
ミスリールの頭を撫でてやりながら言ったのですが、
「御慈悲を、御慈悲を!何でもします!」
と繰り返すだけ。
今何でもするって。
もっとも、ミスリールにやって欲しいことなど、特に無いのだけど。
仕方がない、そろそろ。
「ミスリール、楽にしてあげましょう。これが私の慈悲です」
力を解放する。
まやかしが破れ、グスタフが気付く。
「あ、貴方様は・・・そんな・・・リヴィア様ああああ?!」
グスタフが座り込み、涙を流し・・・あ、失禁。
グスタフよ、お前もか。
おっさんが漏らしていても需要はないと思いますよ?
ミスリールの喉を左手で掴み、持ち上げる。
そして、右手をミスリールの中に突っ込み・・・魔王核を分離する。
もう魔王は不要だ。
神と話し、分離方法を聞いたのだ。
「どう、ミスリールよ。楽になったであろ?」
「え・・・何で・・・」
「もう魔王になって苦しむ必要はなくなったのです。貴方も、正道に帰りなさい」
ミスリールを降ろす。
「ただ・・・あの兵士の体たらく、そして、侵略するのは構わないですが、その温さ・・・そちらは別途説教が必要ですね?」
「ごめんなさい、ご容赦下さい」
ミスリールとグスタフが頭を地面に擦り付ける。
魔王から解放された直後で疲れもあるだろう。
手短に終わらせてやる事にした。
夜明けには二人を解放。
妾も丸くなったものです。




