[奈落]薬草を摘みに入り込みし地、其は魔王の領地。迫る影は最悪の
--リヴィア
「さて・・・このあたりも変わりましたね」
魔王軍の砦。
今回の採取クエストは、その付近なら容易に達成出来ます。
領土的には、昔から竜族の物。
もっとも、妾の治世に得た地ですが。
今は、妾一人での行動。
他の皆は、好きに過ごしている。
ふと、人の気配。
正規軍でしょうか。
「誰ぞ?」
誰何の声を上げます。
「お前が誰だ?!」
返って来たのは質問。
教育がなっていませんね。
躾けてあげたいですが、この化身では・・・レベル150なので、負けはしないと思いますが。
そう言えば、化身の特性で、妾が誰か分からないのでしたっけ。
上手く機能しているようです。
「妾はリヴィア。此処には薬草の採取目的で来た。そなたは疾く持ち場に戻り、自己の任務をまっとうせよ」
油を売るでない。
「俺の任務は、今お前を捕まえる事だ!!」
話が通じませんね。
初めてですよ、私に逆らった竜族は。
「どうした?」
ぞろぞろ、他の兵士が来ます。
そんな事すると守りが薄くなりますよ。
兵士達が、妾を囲み始めます。
「妾は薬草を採りに来ただけです。油を売らず、持ち場に戻りなさい」
「ふざけるな」
「とにかく捕まえるからな」
話が通じません。
兵士が寄って来て捕まえようとしますが、躱します。
下級兵ですかね、レベル60くらいですか。
あの勇者様(笑)よりは強い程度ですか。
王女の子飼い暗殺者にも負けそうです。
「な、こいつ?!」
兵士が次々と来ます。
ある者は躱し、ある者は圧縮空気で弾き飛ばします。
流石に此処は身内贔屓。
いきなり頭を吹き飛ばしたりはしません。
・・・昔はしてましたね。
妾も丸くなりました。
恋する乙女は優しいのです。
「どうした!」
更に兵士達が追加。
あれは金剛将軍グスタフ。
久しぶりの再会ですが、こちらは認識できていないようです。
レベルは数百。
この化身では勝てないですね。
どうしたものですかね。
飛んで撒きますか・・・
「此処が妾の領土と知っての侵犯か?」
周囲の空気が凍るような低い声。
兵士達が横に避け、跪く。
主を護らなくて良いのでしょうか。
会いに行こうと思っていたので、向こうから来てくれたのは有難い。
さて、どうしたものか。
竜王ミスリール。
妾の妹にして、英雄・・・そして、当代の魔王。
ミスリールは威圧するように、ゆっくりと近づいて来て・・・ぴたり、と止まる。




