[奈落]期待のルーキーはDランク昇格試験を受ける
「Dランク昇格試験を受けようか」
みんなに切り出す。
ランクが上がれば、上級の依頼も受けられるし、待遇も良くなる。
「指定魔物・・・オークの討伐ですか。流石に随分簡単な依頼ですね。この化身でも余裕はありそうです」
ルナが頷く。
ギルドに行って、昇格試験の申し込みをする。
受付の人も賛成してくれた。
「オークとか物足りないぜ・・・」
リヴィアがげんなりして言う。
「この化身、弱いんだから仕方ないだろう・・・オークだって、油断してたらやられるぞ。ランクアップしたらまたレベル上げ頑張ろう・・・とりあえず二次職だ」
「仕方ねえなあ・・・」
武器を背負って立ち上がるリヴィア。
「では、行きましょうか」
イヴが微笑み、言った。
雑談しながら、街道を歩く。
そして、街道から外れ、山道を登る。
このあたりでオークとの遭遇報告がされている。
まあ、オーク村まで行けば確実ではあるのだけど、流石にこのアバターだときつい可能性がある。
「居ないですね・・・」
イヴが、腕を絡めつつ、困ったように言う。
「やっぱり村まで行きますか?」
ルナが尋ねる。
「んー・・・それが良いかもなあ・・・」
そこから更に1時間程かけ、オーク村に着き・・・
「げ」
思わず言葉を漏らす。
そこは、徹底的に破壊され、炭化した建物の骨組みがあちらこちらに・・・
まだ残ってる所では時々光が走り・・・あ、召喚された勇者連中。
依頼され、オーク村の処理を行っているのだろう。
勿論、地元の人にとっては深刻な話で、早期解決はして欲しかったのだろうが・・・
「せめて明日以降にしてくれればいいのに」
ぼやく。
「・・・困りましたね・・・」
ルナが言う。
「おい、ショーイチ、向こうに反応があるぞ?」
サーチを使ったのだろう。
リヴィアが言う。
そっちは、勇者達もいなさそうだ。
「そっちに行こうか」
リヴィアの案内で行くと、そこにはオークが数体いた。
内1体は、オークキング、少し強い奴だと思う。
レベル的には格上だけど。
「こっちこい!」
ガードを発動させつつ、オークを挑発。
オークが俺に向かってくる。
「プロテクション!」
イヴの魔法が発動、俺の体を護りが包む。
オークの一撃も、小揺るぎもせず受け止める。
「ファイアーボール!」
リヴィアが放った魔法が、オークキングを焼き尽くした。
豚が焼ける良い匂いがする。
ドッ
オークの内1体が、急所を射貫かれ絶命。
「はっ!」
俺の剣が、オークの命を奪った。
時間にして数分、危なげなく殲滅に成功。
素材を切り取る・・・ギルドカードに討伐記録自体は記録されているのだが、売るためだ。
「お疲れ様。やはりかなり格上でも余裕があるなあ」
「次のレベル上げはもっと強い奴にしようぜ」
リヴィアも嬉しそうに言う。
「・・・おや、ちょっと待って下さい」
ルナがふと、気づき、少し歩き・・・しゃがみ込む。
そこで土を掘り始め・・・箱を掘り出す。
「止まれ」
箱が、一瞬光った後、くすんだ色となり・・・そして朽ちた。
「ルナティックボックス、とか呼ばれている箱ですね。これは大人しいタイプです」
淡々と、ルナが言う。
「因みにどんな内容だったんだ?」
「そこまで派手ではないですけどね。数世代後に、劣勢遺伝でオークが産まれるようになる因子を付与するウイルスをばらまく、程度。肝としては、60年後くらいに気づいた時には、どこまで影響が広がっているか分からない、という、真綿で首を絞める的な恐怖が。原因の特定が出来ていなければきっと悲惨になっていたはずです」
「・・・一気に滅びる訳でもないから、そこまで問題にもならないのかな」
「ですねえ。もっと直接的に大爆発するとか、直接的に殺戮魔獣が出てくるとか、そういった物もありましたので」
ルナが頷く。
「・・・一定確率で赤ちゃんがオークになるってだけで相当酷い話だと思いますよ・・・劣性遺伝ってのが対処し辛くて酷いです・・・」
イヴが半眼で言う。
「因みに、成長すると人の知恵とオークの力を併せ持つハーフオークに。成人した瞬間に人間に対する激しい憎悪に目覚める予定でした」
ルナの補足に、
「最悪ですね」
イヴがジト目で言った。
「同じ物が後5個ほど埋まっている筈ですが、開けられていないといいですねえ・・・」
しみじみとルナが言う。
「冗談、だと思っておきます・・・」
イヴがふるふる、と首を振る。
「・・・まあ、とりあえずギルドに戻って報告しようか」
キングも倒しているので、ポイントには色を付けてくれるといいなあ。
2018.2.15 止まれ、のルビを修正。




