[奈落]塩漬けクエストは厄介な事件に巻き込まれる危険性を秘めており
「このクエスト・・・受けていいですか?」
イヴが珍しく興味を持ったようだ。
「いいよ。どれどれ・・・」
彰一が覗き込む。
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学校開設の手伝いを御願いします
依頼者:
グレア
内容:
授業で使用する薬草や機材の収集。
詳細は直接お話しします。
報酬・・・
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これは、詳細を聞いてから受けるかどうか決めていいタイプの依頼だ。
報酬は直接依頼者から受け取り、ギルドからは貢献度のみが付与される。
無論、ギルド発行の簡易契約書を使うので、依頼達成時に依頼者が渋ったりしたら、ギルドに報告が行くようになっている。
そんな事をする依頼者はいないので、安心していい。
発行日が結構古い。
塩漬けクエスト、という奴だろう。
・・・グレア、何処かで聞いたような。
「じゃあ行こうか」
くしゃ、とイヴの頭を撫でる。
「はい!」
イヴが嬉しそうに頷いた。
通りに出て、記載されていた建物に向かう。
立派な建物ではあるが・・・人通りは少ない、というか見ない。
道等が整備され、多人数の行き来ができるようになっているのに、この人の少なさは、かなりがっかり感がある。
周囲も、整備されているとは言えず、ゴミや落ち葉も落ちたままとなっている。
「これは・・・神教会・・・?」
ルナが愕然として言う。
「神教会って言うと・・・魔王に対抗してたって言う?」
俺が問うと、
「そうですね・・・そして、この惨状が恐らく、私が行った結果・・・」
イヴが、立派な建物を見上げて言う。
「ここは、神教会の中でも最高権威を持つ場所。私の生前は、絶えず人が行き交い、遠くまで人が溢れていました。魔王が出現していない時でもそうだったので・・・今のように、魔王が出現している時は、もっと凄い筈なのですが・・・」
「まあ、それ以外にも色々やらかしたのかもなあ。恨みも買ってたんだろうなあ」
俺が続けてやる。
イヴの頭をぽんぽんしながら、
「さ、さっさと依頼を聞くんだろ」
教会の中へと足を進めた。
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「・・・老けましたね」
「な・・・貴方達いきなり何を!」
依頼主、グレアは、怒鳴る。
会うなり、思わずイヴが漏らした言葉に、怒ったようだ。
「あ・・・そう言うのではなくて・・・その!」
わたわた言い訳するイヴ。
可愛い。
「すみません、この依頼を見てきました。話を聞かせて頂けますか?」
誤魔化す。
「あ、依頼を見て来て下さった方で・・・というかさっきのは一体・・・」
困惑しながらも、こっちを見るグレア。
「皆さんもご存知の通り、我々聖教会は良く思われておりません。今のように、魔王が出現している時は、以前なら色々させて頂いていたのですが・・・残念ながら、あの悪魔に・・・」
「誰が悪魔ですか」
イヴが頬を膨らませて言う。




