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「なっ?!」
俺とイヴの声がはもる。
「記憶がない、かつ、奈落に棄てられた・・・となると、その可能性が高いですね。後、私の職業の固有職・・・こんな怪しい称号、普通は手に入りません。狂気科学者はともかく、禁呪なんて生前扱った記憶も、調べた記憶もないです。知識欲と言っても、その場で必要な事を調べるのが好きなので・・・統治の仕方、農業の仕方、国の発展させ方、外交の方法・・・そう言った物ばかり調べていました。日常の生活の利便性向上の為に、魔導具の研究はしていましたが」
「魔王になると記憶がなくなる、と?」
「恐らくは。人格が変わってしまいますからね。とは言え、魔王をできるような力もなかったので、恐らくあっさり倒されたと思います。史上最弱の魔王とか呼ばれてそうで・・・ちょっと情けないですね。私は、魔王として求められる存在になったけど、恐らくはその役目は果たせなかった、という事でしょう。勿論、世界としてはそちらの方が良かったはずです。できれば、ちゃんと身内に倒されていたらいいのですが。自国の民に高い賠償金を払わせていたら悲しいです。イヴちゃん、何か知りませんか?」
「えと・・・」
イヴの目が泳いでいる。
「何か思い出していそうですね。良いですよ、言って下さい」
「・・・うん、思い出したよ。歴史上、最悪の魔王、と呼ばれた魔王がいて・・・その魔王の名が、ルナ。そう、肖像画で見た事がありました、ルナちゃんの顔・・・」
申し訳なさそうに言うイヴ。
「最悪・・・ですか?」
「うん・・・勇者召喚を見つけては罠を仕掛け、各国に間者を送り込んでは内部体制を乱し、数多の魔獣を創り出し、無数の病気を創造し・・・中には、1体で世界を滅ぼしかねない力を持つ存在・・・異獣、と呼ばれる脅威存在を多数創り出し、各地に埋た。その君臨期間は他の魔王と比べて桁違いに長く、数十年に渡った、らしいよ。通常は半年とか1年以内に倒されるのだけど。国内の統制や防備も完璧で、あらゆる力を総動員し、何とか討ち取った、と伝えられていた。もし、本気でこの世界を滅ぼそうとしていたら、この世界は一瞬で何十回も滅んでいたと言われている。この時代に、世界総人口の99%が失われたそうだよ」
・・・ルナ・・・すげえ・・・
「ふむ・・・私は、魔王として相応しい行動をとったようですね。それを喜ぶべきか、と問われると、かなり微妙ですが・・・そうですか・・・私が居た時代は、ちょうど前魔王が倒されてから300年後。可能性としては考えていました」
「・・・ごめん。そして、今でもそのルナの遺産は各地に眠っていて、ルナティックボックス、と呼ばれている。間違って開封した結果、国が1つ消えるとか、普通に起きている。そしてエルフは・・・その時の莫大な賠償金が払えず、種族全体が賎民として身分を落とし、多種族に奉仕する事でその賠償金の返済をする、という決まりになっていたよ。私の生涯の活動テーマの1つが、エルフの解放。神教会に幼馴染みがいて、その幼馴染みと協力もしつつ、活動してたけど・・・結局生前は解放には成功しなかった。そして、最期はその幼馴染みに裏切られ、命を落とした・・・と思う。多分証拠隠滅を兼ねて、奈落に入れられちゃったんだろうな・・・アリス・・・何で・・・私達・・・親友だったはずなのに・・・」
前半はルナへの申し訳なさ、後半は自分に対して行われた裏切りに対する悲しみだろう。
俯いたイヴを、ぎゅっと抱きしめてやる。
イヴの嗚咽が聞こえる。
「イヴ殿、有り難うございます。自分の事が聞けて良かったです。それに、我が民の解放にも尽力をしてくれたようで。本当に有り難う御座います」
ルナは、すっと横を見ると、
「自分の意思ではなかったとは言え、辛い物ですね。もうこの身では、どうする事も出来ないですが・・・」
大きく溜息をついた。
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IM:約3.3千億→約3.3千億
その他:
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