1. はじまりは『銃声音』
春──それは、出会いと別れの季節。
今日は4月1日。僕は、この世からお別れしようとしていた────。
電車に揺られながら、どれほどの時間が経ったのだろう。乗り込んだときは座れないほどたくさんの人がいたのに、今はもう僕一人しかいない。窓の景色は変わっていく。所々で桜が咲いており、薄い桃色がやさしく景色を彩っている。だが、僕の心は景色とは裏腹に、暗然たる気持ちしかわき起こらなかった。
終点で降りる。
無人駅だった。そこに降りるのはもちろん僕しかいない。今から山へ登るのだが、僕の服装はジーンズにパーカーと軽装だった。荷物はない。ポケットに財布があるくらいだ。片道料金しか入れていないから、もうないけど。
電車を見送った後、僕は山を登るため歩きだした。僕は今日、自殺する。どうしてなんて聞かないでほしい。死人に口なし、だろ?まだ生きてるけどね、今は。山道はどんどん険しくなる。道なき道を行っていると、息が切れてきた。僕はインドア派なので体力はないのだ。それでも最後の力を振り絞って死に場所を探す。
ここは自殺の名所だ。看板に誰へのメッセージだろうか、「考えなおせ」だのなんだの書いてあったが無視してさらに進む。すると、開けた場所にたどり着いた。
サァァァァ────
春の冷たい風が吹く。まるで僕を歓迎しているように、木々がおいでおいでと枝を揺らす。さぁ、私のところへおいでよ、と。僕は吟味した。手頃な木はないだろうか。…………あった。さて、
右にしようか、左にしようか。
どちらの木も捨てがたい。僕の墓になるのだ、慎重に選ぼう。──なんとなく左だな。
財布が入っていない方のポケットを探る。あった、縄。
僕は縄でわっかを作ると、左の木にくくりつけた。……これでよしっと。20しか生きてないけど、長い人生だったな。もう疲れた。僕は目を閉じ首に縄をかけた────
パァァァァンンン────
発砲音がした。あまりにも軽いその音に、思わず目を見開いた。
どしゃっ。
気が付いたら僕は地面にしりもちをついていた。
(な、何が起きたんだ!?)
辺りを見回す。すると、茂みからがさごそと音がする。何だ、熊かイノシシか!?
固唾を飲んで様子を見守る。
「あー、ごめんごめん。まさかあたるとは思わなかったわぁー」
「…………」
そこには、一人の妙齢の女性が立っていた。
僕はぽかん、とした。え、誰この人。……てか銃持っているし。まさかこれでロープを撃ち抜いたっていうのか!?
「君、自殺しようとしてたでしょ?だったら──君の7日間、私にくれない?」
「は?」
女性は発砲したことを悪びれもなく軽く謝ると、突拍子のないことを言った。僕はさらに固まる。
「私、7日後に死ぬんだ。だから、今死んだと思って私のことを看取ってよ」
これが、彼女──桜子さんと僕の出会いだった。
彼女の『嘘』から始まる、君と僕のものがたり。




