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サンプルC

 銃声と硝煙の臭いがする。

 飛び散る血液と肉塊、それらが白い壁を赤やピンクに染め上げる。

 死体が、さっきまで生きていたモノ達が、臓物や汚物を床にぶちまけ伏せている。

 ただただ白と赤の世界。

 そこに私は一人佇んでいた。

 私はボーとしている。

 それはそうだ、これは夢だもの。

 これは私が過去に行った惨劇。

 父の為にした復讐。

 父の遺産アヘリをめぐる殺し合い。

 それに私は十年前に勝った。

 そして今の私がここにいる。

 視界が眩む、夢の終わりと頭が告げる。

 いつもそうだ、私の過去の夢はいきなり始まって、唐突に終わる。

 今日もそうだ、視界の眩みは激しさを増し、そして…目が覚める。

 目が覚めると、小汚ない何かの血液がこびりついた天井が見えた。

 ああ、いつもの私の家の天井だ。

 壁にかけてあるまだ辛うじて動く、デジタル時計に目をやる。

 午前7時半…今日は少し速く目が覚めたようだ。

 古く、錆びの臭いがするパイプベットからゆっくり立ち上がると、私はそのまま、壁に掛けてあるいつもの白衣を、下着だけの躯に纏わせた。

「…顔左半分、一様治ったみたいね…眼球は潰れたままだけど」

 左側だけ空いた、なにもない空洞に指を突っ込み、ただ一人呟く。

「今日は何をするんだったけ~……あ、そうだ。サンプル集めなきゃ…」

 例の副作用で記憶が曖昧だ、前の戦闘で派手に力を使いすぎたかな?

 アヘリの副作用である記憶喪失…こればっかりは私も治す方法が解らない。

 いつ、どうすれば発生するかは解っているんだけどね。

 まあ、今となってはこの記憶喪失も馴れたものだけどね。

「あ、そういえば今日は何かあった気がする…なんだったけ?」

 ふと、唐突に記憶の一部が甦る。

 私はすぐにベットの側にあるデスクから、最近殺した調査隊の持っていたメモ帳を数札引っ張りだした。

「このメモは…周辺ゾンビの増減グラフ、違う。こっちのメモは…………中二病発症者か、違う。これは…カレンダー、これかな?」

 私はその三冊目のメモ帳を読み始めた。

「えっと、今月は何時だったけ?ああ思い出した。六月だ。さて、今月は何があったはず……二十七日、調査隊の……超危険区域レッドゾーン周辺大捜査か!」

 その表記を見て直ぐ、私はズボンを履くのも忘れて白衣だけ纏った状態で研究所から飛び出した。








 超危険区域レッドゾーン

 それは主に私が活動している区域に付けられる名前。

 この区域には私を殺すための特殊な調査隊しか来れない。

 勿論彼らの装備はかなりヤバイ。

 私がアヘリ適合者じゃなかったらまず死んでいる物ばっかだし。

 シャベリンとか、対物ライフルとか、グレネードランチャーとか、セントリーガンとか。

 今までは戦車とかは投入されて無かったけど。

 ただし、今日から代わりに装輪戦車が投入されるみたいだけど。

「えーと何々……シャベリン持ちが三人。機関銃兵が二十人。スナイパーが一人。装輪戦車が一両……こりゃキツいわ」

ビルの屋上から下を除き混こみ、状況を確認する。

 なるほど大捜査とはよくいった物だ。

 これは確実に私殺しに本腰来ているね。

 まあそうか、そうしないと自分達・・・の立場が危ないもんね。

 リベラル気取りの政治家さん。

「さてと…どう攻略したもんか、この分隊」

私は観察しながら呟く。

なるほど確かにこれはめんどい。真正面からいけば装輪戦車とシャベリンの集中砲撃、側面からだと機銃兵を片付けいる間にスナイパー。

後方なら…正面と同じ結果になるな。

なんてったって普通一人で撃破できる物じゃないしねこれ。

「となると……か…キヒッ」

私は足に力を込め、血流を集中させる。

「『テポドン』いくよ…」

踏み出すと同時に、コンクリートにヒビを入れ、私は大空へと飛び出した。

空中で身体にグッと力を入れて、真っ直ぐ槍のように地面に向かって垂直に落ちる!

「ん…何だあれは!?」

装輪戦車の機銃兵が気づいたか、まああんまり関係ない。

進路を少し修正させれば良いだけ。

「撃て、撃ちまくれ!あれを撃ち落とせ!!」

機銃による弾幕が、一気に放たれる。

まさにその様は銃弾雨バレットスコール

銃弾が雨粒のように私めがけて大量に降り注ぐ。

これは避けようが無いな、素直に当たっておくか。

私は直ぐに身体に力を入れ、身体全体に力を込めた。

弾が私の側を通り抜け、また一部は身体に突き刺さる…はずだった。

「嘘だろ、弾が全部奴の身体に弾かれてしまうぞ!!」

彼等が苦労して当てている銃弾も、私にとっては豆鉄砲だ。

まあ少しは痛いけど、それでも身体を貫くことはまず無い。

「まず装輪戦車…」

「く、来るなあ!!」

装甲車の機銃兵の目の前に高速で落下し、その勢いのまま、そいつの顔面に拳を叩き込んだ。

少し力を入れすぎたか、私の拳は機銃兵の頭を貫き、握り拳大の風穴をグチャリという音と一緒に開けた。

「ん?良いものつけてるじゃない」

私はいましがた殺った機銃兵を、ハッチから投げ捨て、その側に取り付けられていたある物に目を付けた。

そしてそれを…

「せ~の~、ふん!」

装甲から強引に引っ剥がした。

「まさか、こんなところで出会うなんてね…『ブリザード』」

私は、かつて自分も開発に携わった兵器に向かって呟いた。

「おい冗談だろ…あの女、『ブリザード』を引っ剥がしたぞ!!」

「なんだと!?あれは対生物兵器用冷凍たいせいぶつへいきようミサイルだぞ!そんなものが我々に放たれたら…」

へえ、私の指示どうりに作ってくれたんだ、彼等。

まあ、今はそれに感謝するか。

「君たち、凍え死んでみる?」

私は配線に、自分の指の一部を変形させて侵入させた。

そしてその発射口を彼等に向けて言ってやった。

当然かどうかは解らないけど、奴等は慌てふためいた。

まあそうだろね、普通はこんなもの自分たちに向けられると思ってないだろうし。

「ええい!撃ち殺せ、そうすればこちらは助かる!」

彼等の分隊長らしき男が叫ぶ。

当然、私はmではない。

撃たれる前に撃たせて貰った。

ボシュッという音から数秒たたずに鳴り響く爆発音、それと共に広がる白い冷気。

最早痛み以外の感覚が麻痺してる私でも寒いと思う冷気だ。

もろに直撃を受けた彼等は当然…

「はい、二十三個・・・・の彫刻の出来上がり」

氷の銅像と化していた。

「さて、次は装輪戦車か…さて」

私は戦車の上部から降り、砲身の側まで近づいて、それを掴んだ。

「じゃあね…どおりゃあ!!」

そのまま力任せに砲身を上方向に引っ張った。

引っ張られる度にギシギシと悲鳴を上げる砲身、そしてついに『バギャア!!』という音と一緒に砲身が砲台ごと戦車から外れた。

外れたそれをまるで斧のように振り上げ、私はそれを車体に思いっきりぶち当てた。

ひしゃげる車体、爆発する砲身内にあった弾薬、その爆風で焼かれないように離脱する私。

凍てついた道路と二十三個の氷像、そして残骸と成り果てた装輪戦車。

正に今この場は大惨事が似合う状況だろう。

「さて、これで終わりか…つまんないね~」

そんな軽口を一人叩く。

しかし、私は完全に忘れていた。

氷像の数が一つ足りないことに、今日の調査隊の合計人数は二十四人・・・・であるはずだということに。


ズドンッ!


音とがしたら右腕が消えていた。

否、千切れ飛んでいた。

直後、私に激痛が走り抜ける。

右肩から飛び出す血飛沫、焼かれるような痛み。

つい「うっ」と声をあげてしまった。

撃たれた、私が。

そこが重要ではない。

どこから撃たれた?

確かに調査隊は全滅させたはず…いや、一人いる。

一人足りなかったんだ、スナイパーが。

「あそこか…」

私はキッとそこを睨む。

数メートル先の瓦礫の中に隠れていた。

冷たいスコープの反射光が、まるで私を侮辱してるような…


「止めろ、その目を私に見せるな…」


止めろ、その目をするのを止めろ。

貴様らのような金さえ貰えれば何でもする政治の犬が、そんな目を私に向けるな。

止めろ、止めるんだ、まるで父のことを解っていなかった私のような目をするな。


止めろ、止めろ、止めろ、止めろ、止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロォ!!


右肩がら新たな痛みが走る、でも関係ない。

あいつを殺したい、今すぐ殺したい。

その憎しみに身体が答えた。

右腕が生えた、知らぬ間に生えたその腕はまるで鞭の様にしなやかになみうち、あいつの所まで一気に伸びた。

貫いた、目玉ごと脳みそを。











「調査隊からの連絡が途切れました」

「そうか。で、最後の通信は何だ?」

「あの男の娘が変異を起こした様です」

「そうか、やはりか…」

「アプリコット家と関わると、やはりろくなことになりませんね…」

「あの時、アヘリではなくあれを兵士に投薬していればな」

「そうですね…さて、私は調査隊に暫くは超危険区域に行かないように伝えてきます」

「ああ、頼む…」



「アズラエル=アプリコット、貴様の娘の思い通りにはさせんぞ…」

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