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お題小説

気がついてしまうと起こること(家族B)

作者: 水泡歌

先日、定年した。


朝起きて会社に行かなくてもいい平日というのは実に不思議なもので。


さて、この時間で何をしようかとぼんやり考えてみたりする。


そんな俺には全く構わず妻はいつもの日常を過ごしている。


ひまなのでそんな妻を観察してみることにした。


洗濯をする。


晴れ渡った青空を見上げてちょっと微笑んでみたりする。


掃除をする。


掃除機のコードに愛犬がじゃれているのを見て、コードをヘビみたいにうねうね動かし始める。


テレビを見る。


昼ドラをかじりつくように見ながら「あら」とか「それはダメよ」とかテレビに話しかける。


こうやって見てみると妻の日常も中々面白い。


昼ドラが終わると妻は立ち上がり、ジョウロを片手にベランダに出た。


植木鉢に丁寧に水をやっている。


何の花だろうと覗いてみて気付いた。


それは今年の結婚記念日に俺が気まぐれに買ってきたもので。


名前さえ知らない花だった。


ああ、大切にしてくれていたのか。


嬉しくなって目を細めると妻が振り返った。


「ねえ、あなた。この花の花言葉、知ってます?」


俺は首を傾げる。


「いや」


妻は言った。


「あなたと一緒なら心が和らぎます」


そう言ってあまりに幸せそうに笑うから。


俺もつられて笑ってしまった。




さて、今日は天気もいいし散歩にでも出かけてみようか。


「これからは私のためにも少しは時間を使ってくださいね」


そう言う妻を一緒に連れて。

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