第二章5
昨日上げた文まででストックが無くなりましたので、残りは書け次第アップして行きます
ナタルがルイスとマキの戦闘について調べるといった日の放課後、セシルは一人で街を歩いていた。
(ナタルがこの件を調べるなんて……)
彼女の性格を考えれば予想できたことではあったが、戦闘の次の日のことであり、セシルにはそこまで考えている余裕がなかった。
「でも、みんなまさかルイスくんが戦いをしてたなんて思わないよね……」
あの後、教室に入ってきたルイスは顔にいくつかかすり傷はあったものの、戦闘の時に受けた傷はほとんど制服で隠れる位置にあったため、特に周りには不審に思われずに済んでいる。
「……ナタル以外」
しかし、ただ一人だけ、ナタルだけがルイスの顔についた傷を注視していた。
そのため、ナタルがトイレに行くなどして教室を離れた際にセシルはルイスに体の様子を聞いたのだが、
「問題ない……学校で話しかけるな」
一言で切り捨てられてしまった。
その後も授業中などそれとなくルイスの様子を伺っていたが、本人の言葉通り昨日の傷が痛むというようなことはないようだった。
「あーあ、どうすればいいんだろ……」
ルイスの身体的なものが問題ないというのであれば、やはり問題になってくるのは精神的な部分、感情である。
昨日の時点で、ルイスの感情について何とかしようと決意したのはいいが、セシルにはどうすればいいかなど全く分からない。軍事学校に通っているといっても、それ以外は至って普通の学生であるし、もしもセシルが群島世界の学者だとしても、科学力に二百年以上の格差のある大陸の技術でいじられたルイスの精神のことなど分かるはずもない。
「とりあえずお茶でも飲もう……」
このイグリスに住む人々はお茶が好きな人種で、どこの生まれか分からないとはいえ、セシルも幼い頃からイグリスに住む人間であり、何か考え後をするならお茶を飲みながらという習慣がついている。
そこで、いつもナタルと一緒に行く喫茶店に向かった。
この店にはテラスもあり、暖かい日などには外でお茶を楽しむ人もいるのだが、さすがに秋も半ばのこの時期に外でお茶を飲む人がいるとは思えなかった。
「って、あれ?」
しかし、そんなセシルの考えとは裏腹に一人だけテラスに座って紅茶を飲んでいる男がいた。
(変わった人……)
男は喫茶店に不似合いな白衣を着ており、その髪の色から初老であろうことが伺える。
片手にお茶を手にしながら何かの本を読んでいる様は学者のようだった。
少し不審に思いながらもセシルは横を通り抜けて店に入ろうとした。
すると、男はセシルを急に呼び止めた。
「ねえ、お嬢さん」
「! なっ、何ですか?」
知らない男に話しかけられたことに少し驚きながらも何とか返事を返す。
「今日はいい天気ですね」
「……そうですね。少し寒いですけど」
「確かに、この世界は寒いですね」
男は銀縁のメガネの位置を直しながらセシルの返事に応えた。
「? 店の中の方があったかいんじゃないですか?」
男の言い回しに若干の違和感を覚えながらセシルは店の中に入ることを勧めた。
「そうですね。確かに店の中の方が暖かい。けれどこの世界自体がもっと暖かくなればいいんじゃないですか?」
男はたとえばと続け
「大きな火を皆で囲むとかね」
「確かに焚き火はあったかいですけど……」
セシルは混乱して首をかしげる。
「ふふふッ、お嬢さんもいつか分かりますよ」
それでは失敬、と男はテーブルにお金を置いて立ち去った。
「……?」
結局セシルは男の言っていることの一つも理解できなかったが、深く考えてもしょうがないと店の中に入った。
これが一つの大きな出会いだということに気づかないまま。
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