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壁破壊二キ、周囲の視線が気になる

 ――無事に到着した? ゆっくり休んでてね。


 ――うん。大丈夫です。


 朝日からの短いメッセージにそう返信した後、影山は出かけた。


(朝日ちゃん、心配してくれているな……)


 タワーマンションの隣に、体育館にあるような半円形の屋根をした建物がある。

 そこはここの契約者ならば無料で使っていい、トレーニングルームならしい。

 しかも個室型で、1人で黙々と鍛錬が出来る。

 エゴサした後、影山は昼間から個室に入った。

 白い床と壁の、1人でやるには十分な広さの室内。

 さすがに頑丈な人形や的はないので射撃訓練はできないが、配信できない分、今日はひたすら鍛錬しようと考えた。

 それに体を動かしていた方が、気分が落ち着く。


「ふっ、はっ!」


 ぶん、ぶんっ! と個室内に、空気を斬る鋭い音が響く。

 ガンブレードは銃と剣の性質を同時に兼ね備えているため、使いづらい。

 だからこそ基本の素振りをおろそかにせず、動きを体へしみこませる必要があった。

 射撃もドライファイア(※空撃ちして、フォームなどを練習すること)で何度もイメージトレーニングをしていく。

 マガジンを素早く、正確に切り替える練習もストイックにこなした。


「はあ、はあ……疲れた」


 タオルで汗を拭きながら、壁に背を預けて吸わる。

 ネオファン制作の服は、影山の体をひんやりと冷やした。

 どういう仕組みなのか、暑い時は冷えて体をクールダウンさせてくれるのだ。

 逆に寒い時は、服が熱を帯びて体を温めてくれる。

 ダンジョン産素材ならではの仕組みならしい。

 普通に購入したらウン百万はする代物だ。


「何時だろ」


 お腹が空いていた。

 携帯で時刻を確認すると、18時を過ぎている。


「ご飯食べにいこう」


 併設されているシャワールームで体を軽く洗った後、影山は外へ出た。





「お兄さん! すみません、ちょっといいですか!」


「……え?」


 突然、道端で声をかけられた。

 振り向くと、20代後半ほどのスーツ姿の青年が名刺を差し出してくる。

 そこには、誰もが知る芸能事務所の名前が書いてあった。


(え、俺が? なにかの間違いじゃ……)


「もしよければ、そこの喫茶店で――」


「さよなら」


「は、はやっ!?」


 影山は反射的に、無駄のない動きで逃げた。

 追われていないことを確認し、近くのファミレスへ入る。

 路上スカウトなんて、疲れがたまった気分だ。


「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」


「1人……」(ボソボソ)


 案内したバイトの女の子は、頬を赤らめていた。

 カウンターの奥からも、ひそひそ声が聞こえる。


「ねえ、あの人イケメンすぎない?」


「芸能人? スタイル、やば……」


「声もめっちゃ良くない? 無理……好き……」


 影山は席で小さくなる。


(最近、より顔が変わって、さらに目立つようになったな……)


 レベルアップによる容姿変化には個人差がある。

 しかし影山はその辺りの反応が良いようで、レベル9へ上がった時、さらなるイケメン化が進んだ。

 もはや男性アイドル級の顔立ちになっている。

 スタイルも、ダンジョン攻略と鍛錬の積み重ねで整っている。

 斜め前の女子大生二人組が、こちらをチラチラ見ては小声で盛り上がっていた。

 本来なら嬉しいはずだ。

 だが、影山にとっては落ち着かない。


(そろそろ顔、隠した方がいいかも)


 ダンジョン配信者として知名度も上がってきている。

 それに住居侵入がもう起きているのだ。

 自意識過剰ということはないだろう。

 このままでは、日常生活に支障が出る。

 メガネ、サングラス、マスク、帽子。

 そのあたりの購入を検討し始めた。

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