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スパチャを投げたらコメ欄と配信者がザワついた

 新装備のテストと契約書へのサインや今後の確認をして、時刻は16時となった。

 疲れたので、今からダンジョンへ潜る気は起きない。

 部屋へ戻り、ゆっくり過ごそうと考えた。


「そうだ。他の配信者を見て、勉強するか」


 休みがてら、Eランクダンジョンの配信を見ようと考えた。

 自分と同じ初心者がどんな感じが、確かめるのだ。

 影山の配信コメント欄がおおげさか、それともそうじゃないかを確認できる。

 そう思って見始めたのだが……。


「……戦闘って、こんなに時間がかかるのか」


 かれこれ3組くらい、ざっと見たのだが……真っ先に出た感想がそれであった。

 4~6人くらいのパーティーで戦っているのだが、どの戦闘もやたらと時間がかかる。

 少なくとも、影山の感覚だとそうだ。

 弱いパーティーだと1体仕留めるのに、10分以上かかることもある。

 しかも……Eランクの初心者だからなのかもしれないが、仲が悪いことも多い。


「おい! お前、ちゃんと敵を引きつけておけよ!」


「いてぇ! 回復は早くしてくれ!」


「魔法外してんじゃねえよ!」


「陣形崩れてるぞ!」


「ちょっと男子、前衛ちゃんとしてよ! モンスターがこっち来てる!」


 こんな感じである。

 グダグダの原因は、大きいもので2つある。

 1つは、接近戦でダメージがほとんど与えられないこと。

 剣、ナイフ、槍などで敵を攻撃するも、体の硬いモンスターを傷つける程度。

 致命傷や欠損といった現象はほとんど起きない。

 2つ目は、肝心の魔法攻撃が頼りないこと。

 モンスターは常に動き回り、そしてある程度の知性がある。

 影山と戦っている時も、本能的なものか急所を守ったりしていた。

 魔法攻撃に関しても同様で、魔法攻撃を警戒してしっかりと回避行動をとる。

 モンスターも周りの動きをよく見ているのだ。

 また、前衛がしっかりと抑えないと、後衛に向かっていくという特性もあった。


「戦い方が難しいな……」


 後衛を狙うモンスターが意外にも多い。

 ちゃんと攻撃して足止めしないと、すぐに陣形は崩されてしまう。

 特に数が不利になると悲惨だ。

 ネオ・ファンタジアの配信者達は1流ばかりなので、かなり安定していたが……普通の探索者の戦いとなると、そうはいかないようだ。

 さらに、コメント欄の雰囲気も違う。

 指示厨(しじちゅう)()き、荒れているのだ。


『前衛はもっと攻撃振らないと』


『守りに入りすぎ』


『魔法下手すぎ。エイムちゃんとしろ』


『ヒーラーはもっと全体を見ようね』


 ひどい配信だと、探索者がコメント欄にキレるという地獄のような映像もあった。

 ……ちなみに、彼の推しであるあさひチャンネルは、エンジョイ勢だ。

 ある程度レベルが上がっているのだが、レベルの低い格下のダンジョンへ潜ることで、楽な狩りをしていた。

 なので、普通の探索者がこんなギスギスとしたダンジョン配信をしているとは、知らなかった。


「もしかして。探索者って、ヤバい仕事なのか」


 少し気になって、検索エンジンで『探索者』と入力し、スペースを押す。

 候補には『探索者 キツイ』『探索者 やめとけ』『探索者 稼げない』といったものが出てきた。

 色々調べてみると、影山は自分の勉強不足を痛感した。

 そこには厳しい現実が待っているのだ。

 年収〇億を超える、キラキラとした探索者なんてほんの一握り。

 本来、探索者というものは『危険』『稼げない』『顔出しリスク』の3つがついて回るのだ。

 これらは“探索者3K”と呼ばれており、おススメできない理由のテンプレートとして上げられる。


(たしかに危険だし、思ったより魔石は安い上、手数料は30%。しかも配信は強制で顔出しのリスクを背負う。なるほど、あんまり良い仕事じゃないな)


 だけど画面の中の初心者達は、みんな頑張っていた。

 そして大半の者が、若者だ。

 きっといつかは大金を稼ぐ、人気者の探索者になると夢見ているのだろう。

 そう考えると、応援したくなってしまった。


(スパチャ投げるか。俺もそうやって、支えられてきたんだから)


 というわけで、壁破壊二キのアカウントのまま、スパチャを投げた。


『応援してます』


 たったそれだけの、短い文章。

 大金も入ったので、お値段は多めの10000円スパチャだ。

 さすがに10万円は、ファンでもないのでおかしいかなと思い、10000円にした。

 すると、まずはコメント欄がざわめいた。


『壁破壊二キ!?』


『え、本物じゃん』


『いや、誰だよ』


『間違いなくこれから上昇する探索者だから、見て損はないぞ』


 そして休憩をしていた男オンリーな5人の探索者も気づき、ええええ、と声を上げる。


「あ、ありがとうございます!」


「壁破壊二キじゃん! すげぇ!」


「すごい人なの?」


「ばっか、めっちゃすげーよ。今はフォロワー1万だけど、余裕でこれから100万とか超えるって!」


「マジ?」


「10000円のスパチャ!? す、すいません! がんばります!」


 ものすごく反応をしてくれた。


(やり方が下品とか思われないかな……でもせっかくのお金だし、初心者達の助けになるといいな……)


 影山はそう思い、もうしばらくの間、Eランク探索者達の冒険を見届けた。

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