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新装備のテスト

「ああ。壁破壊二キっぽいし、いいと思う」


 ウォールブレイカーを手にし、さっそく毛皮人形へ向けて構える。


「まずは試し撃ちをしてみる」


「うん」


(返事をしてくれてありがとうございます今日も推しがまぶしいです)


 安全のため、朝日が後ろへと下がる。

 毛皮人形は5メートル先にいた。


「……」


 息を整え――黒い引き金を引く。

 バンッ! バンッ! バンッ!

 金色の弾丸は、毛皮人形に着弾し、大きな衝撃を周囲に与えた。

 かなり頑丈な作りなようで、毛皮人形には傷1つつかない。


「基本となる“ベーシックマガジン”は威力・反動・魔力消費共に、影山さんを基準に調整して、正確な命中を最優先として設計したんだけど……どうかな?」


「かなり扱いやすい」


 前使っていたガンブレードとは、比べ物にならない。

 自分の体の一部であるかのように操作出来て、思っている位置へ近づけやすい。

 威力も高いのに、そんなに魔力をもっていかれる感じはなく、反動も抑え込めるレベルだ。

 そして今回の武器は、これでは終わらない。

 腰に装備している4つのマガジンは、それぞれに特徴がある。

 影山はガンブレードを操作して、マガジンを入れ変えた。


「ええっとこれは、なんだっけ」


「狙撃特化の“スナイパーマガジン”だね~。構えたら自動で、魔力で生成したスコープが出てくるから、のぞきこんでみてね」


 ウォールブレイカーを構える。

 シュイイイインっ、という音と共に、フロントサイトの上へ長いスコープが、立体映像のように緑色に浮かんだ。

 スコープをのぞき込むと、緑色の十字が見える。

 8メートル先にある毛皮人形へ向けて、引き金を引く。

 反動はあるものの、サイレンサーのごとく音は静かで、毛皮人形へ魔力の弾丸を着弾させた。


「音も消えるのか」


「うん。遠くにいるモンスターを透視で撃ち抜きたい時に、使えるんじゃないかーって考えたの。探索者から逃げまくるレアモンスターとかいるからね~」


 その後も試し撃ちを続けた。

 散弾銃としての機能のある“ショットガンマガジン”。

 魔力による濃厚な白い煙をばらまく“スモークマガジン”。

 用意されたガンブレードは、かなりの多機能であった。

 しかもその1つ1つの機能のクオリティが高い。

 オリハルコンを使わずとも、数千万は超えるようなハイエンドモデルである。


「……よし。近距離も試してみるか」


 影山はウォールブレイカーを握り、土人形を斬りつけた。

 ズバンっ! ズバンっ! ズバンっ!

 素早い動きによって、土人形に何度も斬撃を浴びせる。

 手に馴染む感触のおかげで前よりも早く、正確であった。

 そして不思議と、疲労感も少ない。

 ガンブレード特有のクセの強さは、一切感じなかった。

 これが一流技術者による調整なのだろう。

 専用装備のメリットを、影山は肌で感じた。


「どうかな?」


 朝日の問いかけに、影山はうなずいた。


「驚くほど使いやすいよ」


「よかった~。“オリハルコン”が使われているのは、刃の部分だけでね。今後、影山さんが新しい素材を獲得するたび、装備はアップグレードしていく予定だから」


(すでに至れ尽くせりなのに、まだ改良を加えるつもりなのか……)


 さすがはトップ企業、ネオ・ファンタジアといったところだ。

 バックアップの力が尋常ではない。


「影山さん。1つ、気になるんだけど……」


「ん?」


「透視スキル、使ってないよね? そことの兼ね合いが一番重要だから、試さないと」


 影山は首を横に振った。


「……この毛皮人形の値段は?」


「え? んー、ざっと2000万円は超えるかな~。この毛皮人形もね、私が開発したやつで“ガーディアンドール”っていうの。世界基準で見ても最高峰の耐久力があるんだ~。ネオ・ファンタジアが誇るレベル100超えの探索者でも、ちっとも壊れないんだから! いくら影山さんの透視スキルでも、“絶対”に壊せないよ!」


「そうなのか? 信じていいのか?」


「あっ! 自信あるんでしょ~。えへへ、でも、残念! 私の人形を壊した人なんて、1人もいないからね! すごすぎてごめんなさい!」


 えっへん、と朝日は誇らしげに胸を張った。

 そして誇りと同時に、ちょっと煽っていた。

 それほどまでに、この人形の強度に自信があるのだろう。


(まあ、そこまで言うなら……)


 安心して、影山は透視スキルを起動した。

 瞳が青く光る。

 そして毛皮人形の“線”を見た。

 そこへ吸い込まれるように、正確に鋭い一閃を振るう。

 左肩から、腰の辺りまで一気に振りぬく。

 しゅぱっ!

 2000万円の毛皮人形は、バターのごとく斬り込まれ……ずどん、と上半身が地面へ落ちた。


「……え?」


 朝日は一瞬、フリーズした後――毛皮人形へ駆け寄った。


「うわあああああああ!? わわわ、私のガーディアン・ドールがああああああ!」


 朝日は目に涙を浮かべて、毛皮人形へ抱きついた。


「そんなぁ!? 今までこんなことなかったのに! ひっぐ、ぐすっ、ひどいよ、影山さん!」


 子犬のように震えながら、泣きじゃくられてしまう。

 影山は慌てた。


「ご、ごめん……でも、朝日ちゃんが大丈夫って言うから、やったんだけど」


「うえええんっ。負けたぁ。こんなことはじめてだよぉ~~~」


(あああ、泣かせてしまった! と、というか、2000万だよな。大丈夫だろうか……)


 朝日は涙で震え、影山は金額の高さと推しを泣かせた罪悪感に震えたのであった。

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