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Pt.1 鐘の音

彼らを理解してほしい。それだけ。

…鐘の音が聞こえますか?

このドス黒い灰色に空に鳴り響く鐘を。

もちろん、聞こえる。

この鐘は何を意味しますか?

死。


大雨が降っている墓地で葬式が開催されていた。

大人達の視線は一人の少女に向けられている。

彼女は一人だけ傘を持ってきていないのか、大雨の下に立っている。

それでも平気そうな顔だ。

着ている黒いドレスに濡れていない糸なんてないのに。長い赤毛も濡れて茶色になっているというのに。彼女に傘を差す者は誰もいない。

この子は頭がおかしい。避けた方がいい。

ここに居る大人達はみな、そう考えている。

この家族のもの達とは全然違う。

彼女が家出をした後に受け入れてくれた祖母が死んだというのに、泣いていないのだ。

魂が抜けたかのようにぼうっとどこか遠くを見つめているだけ。


セリーは前を見ていた。

背中に刺さる冷たい視線を感じながら。

目の前にあるのはおばあちゃんの墓。

彼女が死んだなんて、今でも信じられない。

家に帰ったら、おばあちゃんが焼きたてのクッキーを満面の笑顔で持ちながら「おかえり」と言ってくれるのを心のどこかで期待している。

あり得ないのにね。


あなたは自分から魂が抜けるのを感じたことはありますか?世界がまるでゲームのように感じたことがありますか?

あるよ。

なぜ、そうなるのですか?

病気だよ。

どんな病気なのですか?

……。

話したくないのですか?

だって、話したら…笑われるから。

大丈夫です。私たちのことは信用して良いんですよ。私たちは聞きます。

……。

私たちは笑わないことを誓います。

……。

セリー、あなたがこの物語を語り始めたのですから、終わりまで語るべきですよ。

分かった。

どんな病気なのですか?

パニック症…。

あなたは強い。


雨がいっそう酷く降ろうとしていたので、葬式に集まっていた人々は近くにある教会に一斉に走り出した。

セリーはおばあちゃんの墓地をしばらく見つめた後に教会に入った。


教会の中はひんやりしていて、静かであった。窓を打つ雨粒の音がやけに目立つ。

聖母マリア像が上にある青いステンドグラスから差し込んでくる光に照らされて、とても神秘的に見えた。

ベンチにはところどころ人が座っていて祈っている。

セリーは出口に近いベンチに一人で腰を下ろした。

すると、こっちを見ていた一人の司祭がセリーに近づいた。

セリーは無表情で司祭を見上げた。

司祭はニッコリと笑うと、セリーに明るい声で話しかけた。

「やあ、大丈夫かい?」

セリーは何も言わずに頷いた。

司祭も頷くと、セリーに乾いたタオルを笑顔で差し出した。

「病気になるから、これで拭くといいよ」

セリーは弱々しく笑うと、それを受け取った。


司祭はセリーから離れて座っているセリーの”家族”を見た。

「彼らとは喧嘩をしたのかい?」

セリーは静かに頭を横に振った。

「…どうしたのかについて、聞いていい?」

「…」

「聞くことも私の仕事なんだ」

セリーは聖母マリア像を見た。青白い光で照らされた優しそうな顔がこっちを見ている。

「…描いてもいい?」セリーの小さな声が響いた。

「え?」

セリーは司祭にニッコリと笑いかけてから、腰にかけている皮のバックから鉛筆とスケッチブックを取り出した。

奇跡的に濡れていない。

その様子を見ていた司祭は状況を理解したのか、何も言わずに優しい笑顔で頷いた。


司祭は驚いた顔でセリーが描いた絵を見つめていた。

この教会にある聖母マリア像が描かれている。

でも、何かが違う。

あの冷たい象とは違って、まるで生きているようだ。

微笑む姿は輝いている。

彼はこの絵に胸を打たれた。

見たこともないような美しい絵。

しかし、セリーはその絵を描いた紙をスケッチブックから切り取った。

「…上手くない気がする」

司祭は紙を丸めようとするセリーを止めた。

「そんな!私がこの世で見た中で、もっとも美しい絵だ」

「…気に入ったの?」

「もちろんだ!」

セリーはうつむくと、絵を伸ばしてサインを書いた後に綺麗に畳んだ。

「何をするのかい?」

彼女は何も言わずにその紙を司祭に手渡した。


司祭はまるで世界一の宝物を持つかのように絵を大切にポケットにしまった。

セリーが描いた絵は長年の間、この教会で飾られることになる。

その絵を見た人々は感動に安らぎ、悲しみを感じるのであった。

セリー達が教会に入ってから2時間が過ぎようとしていた時、窓を強く打っていた雨が止んだ。

大人達は誰がセリーを車に乗せるかで言い争っていた。

「私には子供が2人もいるのよ?乗せる場所なんてないわ!」

「俺は子供と関わるのが苦手だ!」

「あたしは今日、忙しい」

乗せられる人があまりにも名乗りあげないのだから、大人達はまるで助けを求めるかのような目つきでセリーの"母"を見始めた。

彼女はため息を吐くと、頷いた。

みんなは大喜びであった。セリー以外。


外に出ると、空は相変わらずドス黒い灰色のまんまであった。

雨の後の水溜りにそれが映っている。

水溜りがあまりにも多いので、みんなはできる限りそれを避けて通った。

セリーは水溜まりの中に踏み入れた。水溜りを踏んだところから水面に美しい模様が広がり始める。

これもいつか、描きたいな。

あの人("母")はその様子を怒ったような顔で見ている。

本当に何をしているの!?時間が勿体無い!って怒鳴りたいのだろう。

彼女は何も言わないけど。これからも決してね。

そして、セリーは待っているあの人を無視して祖母の墓地に向かった。

最後に一回でもいいから、別れの挨拶をしたい。

彼女の声が聞こえなくても。


これは、私の2番目の作品です!

前の作品とは雰囲気が結構違うかもしれません!

でも、ここまで読んだのならば、面白いと思ったのかも?(そう願っている)


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