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元悪役令嬢の母~息子が女の子と手をつないでおりますわ!の件

作者: 山田 勝

「オ~ホホホホホ、私は正義の魔道師!紅薔薇よ!ここは自由都市、縄張りなんてないわよ!」



 私は元公爵令嬢ローズマリー、平民になってからマリーと名乗り、顔を隠して冒険者活動もしている。認識阻害魔法付の蝶のアイマスクをつけ。真っ赤なドレスを身にまとい。

 今は商業ギルドから依頼されて裏組織と戦っているわ。



「「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」

「紅薔薇・・・だってぇ~」

「なんでぇ、ババアじゃないか。ババア無理すんなよ」



「まあ、何ですって!お前らのお母様はもっとババアだろうが、お母様に言ってみなさい!お尻ペンペンされるわ!幻覚魔法!ローズダイブ!」


 扇を振りかざし、幻覚魔法で生み出した薔薇の花びらをゴロツキ達に浴びせる。

 まるで薔薇の花びらで溺れたように錯覚させる非殺傷魔法よ・・


「「「ギャアアアアーーーー」」」

「溺れる!」


 そして、倒れたゴロツキたちに、幻覚魔法、幻覚タトゥーを入れた。

 おでこに一週間、『犬』の文字が浮かぶわ。



 野次馬たちが歓声をあげたわ。


「さすが、ローズマリーだ!」

「キャア、素敵-」


 しかし、その中に・・・息子のケビンがいたわ。

 女の子と手をつないでいる。年下かしら。


 人参色の髪に、ニキビ顔だわ。目はアイスブルーね。


 吸い寄せられるように息子に向かったわ。



「ローズマリー、かっこ良かったです」


「ええ、そう・・・君、その子は?」

「はい、友人です。僕も将来、ローズマリーさんのように人助けしたいです。だから知り合いました」

「そう、手をつないで・・友人かしら・・」


 グイ、グイ!と女の子が息子の手を引っ張るわ。

 女の子はやや目を細めて私を見る。

 睨んでいるのかしら。あまり感心しない子ね。



「いこう、ケビン、ローズマリーさんお仕事があるから」

「分かったよ。ニッキー、ローズマリーさん。応援しています。では、お体に気をつけて」


「そう、お母様の言う事を良く聞いて良い子になるのよーー」




 気になる。変化魔法の真っ赤なドレスを解除して、市場で買い物をして家に帰った。




 ☆☆☆家



「ケビン、ここに座りなさい」


「・・・はい、母さん。何なの?」


「お母さんに報告することない?」

「え、ないです・・・」




「本当にないの?人参色の髪にニキビ顔の女の子・・・紹介しなさい」


「え、ニッキー?」



「お付き合いをするのなら、母が面接をしますわ」


「か、母さん。そんなのじゃないよ。母さんの馬鹿!」



息子は立ち上がり部屋に逃げ出したわ・・・



旦那に聞いて見た。元護衛騎士だわ。



「あなた、ケビンがね。女の子と手をつないでいたのよ」

「ほお、ケビンやるじゃないか」

「でね。その女の子と面接をしようと思うの」


「はあ?思春期の男の子にそれは悪手だぜ。信じてやろうぜ」

「でも、婚約には家門の長の許可が必要ですわ・・・」


「マリー、あのな。10歳ともなると意外と考えているものだぜ。ここで口を出したら・・余計意固地になる。そっと見守って、何かあったら助言すれば良いさ」


「そうね。でも、ニッキーという子、お顔はあまり良くないのよ。私の血かしら」

「俺の顔の事か・・・ヒデぇな・・・」

「そんなことはないわ。頼りにしている。あなただけよね。あの場で味方してくれた人・・」

「いいのだ。俺はお顔あまりよくないから、むしろケビンがマリーの美貌を受け継いでうれしいぜ」


「他に気をつけることあるかしら」

「そうだな。思春期の男子のベッドの下は秘密が詰まっているから注意だ。マリーだったら気絶するかもな」

「分かったわ。有難う」




ということで見守ることにした。

ニッキー、近くの農家の子らしい。


街中で露天を開いて煮たイモを売っているわね。


あら、年老いたコジキだわ。優しく接したら良いわね。

と思っていたが、口が悪い。



「どうか・・・お恵みを」

「フン、店の前に来られちゃ、商売になんねえ。これでもくらいな!」


まあ、ヒドい。イモを投げつけたわ。


あんなヒドい子がケビンとお付き合いをするなんて認めないわ!


だけど、コジキは頭を下げたわ。

何故・・・もしかして、投げつけたおイモを持ち帰ったわ。あれは差し上げているのね。


何で、そんなことをするのかしら。

あら、ニッキーの姉妹達かしら。籠を背負って来たわ。


「お姉ちゃん!売り物にならない形の悪いおイモを持って来たよ」

「フン、それを裏で煮て、コジキが来たら投げつけるのよ」

「「「はい」」」


私は興味を持った。

話を聞こうと思い近づこうとしたら、昨日のゴロツキたちが来たわ。


「お~い、ここは市場の管轄外だ。場所代を払いな」

「フン、ここは自由都市だよ。市場街も認められているのさ!」



さすがに、目に余るから、


「変化魔法!」


真っ赤なドレスを着て、蝶のアイマスクを身につけて魔道扇を取り出したわ。


「オ~ホホホホホホ、あなたたち、またぬっころされたいのかしら」


「「「ババア!」」」


「まあ、何ですって!マダムが真っ赤なドレスを着ても良いでしょう。あんたらに迷惑をかけたかしら!次は額に一生もののタトゥー魔法をいれるわ。『馬鹿』よ。それでも良いのかしら」


奴らは逃げ出したわ。


チョコンとニッキーは頭を下げたわ。


「ケビンのお母さん。有難う」

「えっ」


おかしい。アイマスクには認識阻害魔法がかかっているはずなのに、それにケビンの母として会ったことはない。


よく見ると、ニッキーの薄いブルーの目にわずかに魔力がまとっていたわ。

そう、平民でもたまに魔力を持つ者がいるのね。


「実は昨日、分かったのです。少し目をこらしてみたら、その人の持つ光が見えるのです・・・」


だから、睨んでいるように見えたのね。


「そう、私はどんな風に見えた?」

「ケビンと同じ虹色です・・だから、親子なのかと、昨日、ケビンを促して去ったのは、お母さんが正体を隠したがっていると思って・・・」



この子、聖女の素質があるのかしら・・そう言えば聞いた事があるわ。

魔力持ち同士は惹かれ会うと・・・


「でも、何故、おコジキさんにキツくあたっていたの・・」

「それは、お母さんと同じです・・・キツい事を言わなければ、また、相手は舐めてきます。一度、善人と思われたら、次々にくるものです・・・おかしいですか?」

「おかしくないわ。わかったわ。ケビンをお願いね」

「はい、でも、ケビンの話も聞いてあげて下さい。お母さんに話しにくいことがあるそうです」


家に帰りケビンの部屋を掃除したわ。私は覚悟したわ。ケビンの秘密を知ろう・・

旦那に言われた禁断のベッドの下も掃除をすると、出てきたわね。


「『王都美人令嬢絵姿集』?・・・これはどうでも良い。紙があるわね・・・」


その紙には、商業ギルド長あてに、近隣農家から売り物にならない農作物を買って、炊き出しをしたらどうかの提案書だわ。


そしたら、子供達が街に売りに行く時間が節約できる・・・

資料作成協力者、イモ村のニッキー嬢・・・・


私は感動したわ。10歳でここまで考えているとは。私の血が受け継がれているわ。いえ、勇者のスキルもあるわね。行動力は旦那かしら。

これから先は大人の仕事よね。



紅薔薇の姿になり。ケビンの前に現れたわ。


「オ~ホホホホホ、ケビン、あなたは感心の子だから、商業ギルド長にお願いしてあげるわ。イモ村の子と仲良くしているのは、炊き出しをしたいからよね」


「ええ、何故知っているのですか?」


「紅薔薇は何でもお見通しよ。計画書あったら出しなさい」

「はい!」


「オ~ホホホホ、お母様の言う事を良く聞くのよ~」



と演劇のように息子の計画書を受け取り商業ギルドに提出し商業ギルド長に話を通した。

結果、売り物にならない農作物を買い集めて、炊き出しを始めた。




ニッキーは聖女になるのかしら。この国では12歳でギフト判定式があるわ。

そしたら、・・・婚約を認めても良いわ。私の勘だとケビンは勇者だわ。



しかし、ケビンはよそよそしい。



「母さん。部屋を掃除した?」

「ええ、そうよ」


「ベッドの下も?」


さすがに、ケビンの案を盗み見たとは言えないわ。

あれは、ローズマリーが少年ケビンの案を採用したことになっているわ。


「ベッドの下はお父さんにお願いしたわ。ほら、母さん。腰が少し悪いから・・」


「そうか、そうだったんだね」


顔がパアと明るくなった。


「今度からは自分で掃除するよ」

「ええ、でも、汚かったら承知しないわよ」

「もちろんだ」



・・・ローズマリーは息子の『王都美人令嬢絵姿集』を本だからと机の上に置いた。

王宮の謀略を見抜いて脱出に成功した知見の持ち主だが、

息子に関しては盲目になる。


何故なら、母になった悪役令嬢だからだ。






最後までお読み頂き有難うございました。

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