庶民的な空間
ルミナリアがリビングの真ん中に立つだけで、
そこに微かに漂う空気が、少しだけ張り詰めたような気がした。
窓から射し込む自然光が、まるで彼女を引き立てるために集まってきたかのように見え、
彼女の動作ひとつひとつが、妙にきらびやかで、目を引いた。
「ふふ……なるほど。やはり、予想通りですわね。」
部屋を見回しながら、ルミナリアは柔らかく微笑む。
けれどその微笑みの奥には、どこか薄く光る刃のようなものを感じた。
「この空間……悪くはありませんけれど、やはり庶民的な質感が否めませんわね。」
シトリがぴくりと肩を震わせ、
「……別に、庶民的で悪いわけじゃないですし!」と、小さく反論する。
クッカは曖昧に笑いながらも、視線を伏せて「……あはは……」と弱々しく笑うだけ。
ネムは「ご主人様の部屋、落ち着くのになぁ……」と、ぽそっと呟き、
リブリアは唇を引き結び、何も言わずにページを閉じた。
ルミナリアはそんな彼女たちを一瞥し、優雅に胸元で手を重ねながら、
その声に誇りを滲ませ、語り始めた。
「わたくしは、由緒正しき高級家具──
百年以上の歴史を誇る伝統ある工房で生まれ、
選び抜かれた素材と、洗練されたデザイン、
そして磨き抜かれた輝きを持つ、選ばれし存在ですの。」
少しだけ視線を逸らし、うっとりと自分の髪の先を撫でるような仕草を見せる。
「量産品ではなく、一点物。
誰にでも手が届くような家具とは、一線を画す存在ですわ。」
その言葉に、シトリの目がかすかに揺れる。
「……でも……!」と口を開きかけるが、続く言葉が出てこない。
クッカは手をぎゅっと握りしめたまま、じっと足元を見つめ、
ネムは「一点物って……なんだろう……?」と小さく首を傾げている。
リブリアは視線を落とし、無言で手帳に何かを書き込んでいた。
ルミナリアはそんな彼女たちの様子を見て、微笑みながら言葉を続ける。
「もちろん、皆様がご主人様のお役に立とうと努力しているのは素晴らしいことですわ。
でも、それとこれとは別の話。
品質というものは、どうしても超えられない壁というものがございますもの。」
「…………。」
俺は、その光景を見つめながら、なんとも言えない気持ちで息を吐いた。
家具娘たちの表情が、少しずつ沈んでいくのが分かる。
シトリは悔しそうに唇を噛み、
クッカは料理道具を持つ手が微かに震え、
ネムはふわふわの布団姿で小さくうずくまり、
リブリアはページをめくる指をそっと止めていた。
ルミナリアはそんなことお構いなしに、にこやかな笑顔を浮かべて主人公に向き直り、
「ご主人様、これからは私がこのお部屋をより上質に彩って差し上げますわ♡」
と、誇らしげに胸を張った。
この眩しすぎる「新しい日常」の始まりに、
俺はほんの少しだけ、重たい溜め息を漏らした。




