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愛を語るより恋を語りたい!

作者: kfa
掲載日:2026/09/17



「那智……。」




暑さも少し引いた残暑の一日、俺はエアコンを稼働させ、一緒に家へとやって来た幼馴染の名前を呼んだ。




「はい麦茶。」




「良く分かったな。」




すぐに出てきた求めていたものを、驚きながら口にする。




「長く一緒にいるからね。今日、夕良パパ遅いの?」




「ん〜?どうだろ?今日は何の連絡も来てないな……」




何でもないことのように告げる那智は、自分の分の麦茶を持ってくると少し間を空けて隣に座った。

“ギシッ”っと鳴ったソファーの音に喉の渇きが酷くなった俺は、気にしないようにしながらも、麦茶を半分ほど飲み干した。




「遅いなら何か作ってくけど……」




「っ!遅くても早くても、作ってくれよ!」




「……仕方がないな、何が良い?」




「「オムライス!」」




テレビを着けると何を観るわけでもなくネ〇フリのザッピングを始める俺に、声をかけてきた那智に向かって、俺は勢い良く顔を向けると、高く結んだ黒い髪を横に揺らし“ニコッ”っと顔を掲げて笑った。

そんな那智に“ドキッ”としながら、食べたいものを口にすると、俺たちの声がハモった。




「スゲー、何で分かったの?」




「ふふふふ!そろそろ言う頃でしょ?ってか2回に1回は聞いてる気がするよ。」




「そんなに言ってるか?」




高鳴った心臓を気づかれないように、那智から少し視線を下げて疑問を口にすると、俺の記憶にない事を口にする那智に向かって思わず顔をしかめてしまう。




「……ブロッコリーは刻んで入れるからね?」




「……お前は俺をどうしたいんだ?」




どうやら機嫌を損ねたようで、目を細めて俺の好物に嫌いなものを入れてこようとする那智に、心底俺は悩んだ。




「っふふふ。なにそれ?別にどうもしたくないよ。でも好き嫌いをなくさせたいかな?」




「……別に好き嫌いがあっても死なないだろ……」




「でも……夕良ママが生きていたら同じ事をしたと思うけど?」




「はぁ〜お前いつもそれ。いい加減萎える。」




何となく言われる事は分かっても、毎回口にしてくる小学生の頃に亡くなった母の面影に、別に那智にそんな事は望んでないと、つい俺は悪態をついてしまう。




「じゃあ、作らない。」




「……ごめん。」



「いいよ。」




俺がすぐに謝ると、那智はソファから立ち上がり台所へと向かって行った。

何となく今の関係に落ち着いたのは、母が亡くなってから毎日、那智が俺の家にくるようになってからだったーー。




「なあ?それ那智が毎朝作ってんだろ?」




「ああ。何で?」




昼休みに弁当を開いて食べていたら友人の有人が俺の席に椅子を持ってきた。

今更だろうと思って友人の有人に視線を向ければ、“ ニヤニヤ”と含み笑いを浮かべていた。




「いや〜お前ら二人そろそろ付き合ってんのかなって?」




「!?んなわけねぇだろ!アイツはただの幼なじみだ!!」




有人の言葉に、俺等もどうやらその手の話が盛り上がる年頃になっていたらしいと気付いたが、ここで変な噂が立って那智を困らせたくないと必死になって変わらない関係を有人に伝えた。




「わっかんないなぁ?好きでもない奴に何年もこんな弁当作って渡すか?ウマッ!」




「は?お前!?食うなよ!!別にただ俺の母さんが亡くなってから……気を使って家族の真似事をしてくれてんじゃないか?」




悩むような口振りをした有人は俺の弁当から唐揚げを持っていくと素早く口に入れ、驚いた表情で味の感想を伝えてきた。

その行動に腹が立ったが、那智の振る舞いから漠然と感じている思いを口にすると有人は凄く嫌そうな顔になり、唐揚げを飲み込んでから口を開いた。




「お前……地上から堕ちてしまえ!」




「なんだよそれ、普通に地獄だろ……」




(どうせ那智の事だから、ずっと俺のことを可哀想とか思ってるだけだろうし……)




考えないようにしていた話に少し胸に靄がかかるが、俺はそれに気づかないふりをして、クダラないことを言う有人と昼休みを過ごしたーー。




「那智?終わったか?一緒に帰ろう。」




「先に帰って良いって言ったよね?」




委員会で遅くなると言っていた那智を校舎の玄関口でボーッと待っていると、ようやく出てきた那智に声を掛けたが、俺の顔を見るなり一人先に、階段を下りていった。




「……何でそんなに機嫌が悪いんだ?」




「……別に」




「……」




家に帰る道を途中で外れる那智に声をかけるが、不機嫌なまま早足に歩く那智の背中を、ずっと追いかけるようについて歩いた。




(あっ、ここは……)




母が亡くなってすぐには受け入れられず、むしゃくしゃして飛び出した土手まで来ていた事に気が付く。

今は少し赤みが差した空に、何処となく物悲しさを感じるが、あの日は夜だったこともあり、草むらの中静かに流れる暗い河原に月や星の光が反射して、まるでどこか知らない世界に一人迷い込んだような、不安にかられた思い出が蘇る。





(そう言えばここら辺、あの頃は毎日のように来ていたな……)




その次の日から那智は毎日家にやってくると、“どこか行きたい場所があったら、那智が一緒に行ってあげるよ”と、いつも手を差し伸べてくるようになった。

そして、毎日のように俺の家に泊まり、夜になっても俺が眠れないと二人手を繋いで、近場を散策していた日々が、まるで何かを探す旅のようだったと幼い日の那智との思い出を振り返った。




「那智……」




「……」




今は隣ではなく前を歩き続ける那智の背中に声をかけると、あの頃とは違う冷えた手で、那智の肩を優しく掴んだーー。




「……俺に言いたいことがあるなら言えば良いだろ!そうやって何も言わずに先を行くなよ……」




「……私……別に、夕良ママの真似事なんてしたいわけじゃない……から……」




そのまま立ち止まった那智の言葉に俺は焦りを覚え、慌てて説明しようと口を開いた。




「!?……あっ、あれはっ、そう言う意味じゃなくてっ……!」




俺が説明しようとすると、那智は掴んでいた手を肩を揺らし振り払うようして、また一人歩いていってしまう。




「意味とかどうでもいい!でも、もう夕良の顔なんか見たくない!」




「見たくないってなんだよっ!?……」




那智からの拒絶の言葉に、俺は虚しさと那智が離れていく恐怖から、足早に歩く那智の前へと回り込む。

すると、那智の瞳には大粒の涙が溢れ流れていた。




「っ見たくないって言ったじゃん!」




「何で泣いてんだよ……」




「……関係っないっでしょ!!触らないで!!」




俺に顔を背けようとする那智の顔を手の平で覆い、涙で赤くなった那智の瞼に手を伸ばそうとすると俺の手を払い除け、また歩き出そうとする那智の肩を掴んでは引き止めた。





「何で関係ないんだ?……お前が泣き出したのは有人と話してた内容だろ?だからあれは……」




「夕良は私をお母さんみたいな存在に思っているかも知れないけど、私は嫌なの!!夕良ママになりたい訳じゃない!」




「はぁ!?」




有人との会話を説明しようとする俺の言葉に被せてくる那智の言葉に、俺は長年溜まっていた不満が爆発した。



「勝手な事言うなよ!!先に俺の部屋掃除し始めたり、朝メシ作り始めたり、弁当も持たせ始めて……しまいには!洗濯だって……俺の下着普通に干してるし……」




「それは!……」




「俺はその度どうしたら良いか分からなかった!!だから気にしない振りしてただけだ!!」




「……え?」




何か言いたげな那智の言葉を遮り、爆発した感情は那智の感情も無視して暴走を始めた。




「もう……何なんだよ。どうしたら良かったんだ……?」




「それは……」




「好きな奴が俺の事、家族みたいに思ってるだけなんだって……だから、望むように振る舞っただけなのに……」




これで那智との関係は終わるだろうと、顔も見ることもできなくなり俯くが、止めることのできない思いは言葉に後悔を滲ませ始めた。




「夕良……私の事好きなの……?」




「へぇ!?」




「いや……そう……ふふっ……」




確認するように尋ねてくる那智に、俺は思わず顔を上げた。浮かべていた涙は全て流れ落ちたのか、潤ませた瞳を輝かせ俺を見つめると笑いだした。




「何でここで笑う?」




「……」




突然笑いだした那智にどう反応していいのか分からずに動揺する俺を、那智は少し恥ずかしそうに視線を泳がせたあと、意を決したように小さく息をついた。




「……私もずっと、夕良の事が好き。」




「!?……じゃあ何で……母さんの真似事なんか……」




那智の思わぬ返事に、覚悟していた胸は拍子抜けし、長年の疑問を途切れさせながら口へと運ぶ。




「……好きな人に、好きになってもらいたかった……から……へへっ……」




「へへって……あぁ……もう……」




「?」




はにかみながら口にする那智に脱力を覚えると、今まで悩んでいた事がバカらしく思えてきた。

そして、そんな俺を不思議そうな顔をしながら見てくる、助長させるような行動をしてきた那智に向かって八つ当たりめいた事を口にする。




「お前のそういう所、本当にうざいわ!」




「何それ!!っ!」




“厶っ”とした那智の手を引いて抱きしめる。

自分のものなのか、那智のものか分からない距離に、驚いた那智の声は、早い鼓動音に両耳が支配されてほとんどかき消された。




「頭の中全部お前の事だけになる……那智はズルいよな……」




「!?……ずっとドキドキさせてくる夕良の方が……ズルいよ……」




「「っ!あはははは」」




「俺ら何やってんだろう……帰ろうか。」




「……うん。」




人通りが無かったとは言え、誰に見られるか分からない場所で、言い合いをしている自分達に恥ずかしくなって顔を見合わせて苦笑すると、あの頃のように自然とお互いの手を重ねて歩いたーー。




「那智……いつかお前の服、洗濯して干してやるよ。」




「……絶対に嫌!」




そんな2人が日常で、洗濯を巡る攻防を繰り広げていくのは、もう少し先の話ーー。




夕良と那智の二人の物語いかがだったでしょうか?

只々この二人可愛い!!と思いながら書き進めました。

読んでキュンッとしてくれていたら嬉しいです。



長編の方も、え?この二人どうなるの?と骨組みに肉付けをしながら書き進めてます。

いつでも書き終わるまでは長編は一筋で!と進めていきますが、たまに短編なら載せても良いのかな?と現実が忙しくなると休載を長引かせてしまうので、ドキドキしながら投稿してます。



少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価をお願いします。また投稿しても良いのかな?と、とても励みになります!


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