8.ジュケーという土地-今のアフリカ大陸は[熱い]場所なのである-
全48話予定です
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ジュケーという土地はアフリカ大陸のほぼ真ん中に位置している。
現在のアフリカ大陸といえば、帝国、同盟連合、共和国がそれぞれに領土を持っていて、睨み合いのような状態が続いている。ではなぜそんなところに帝国は一大軍事産業を展開したのだろうか。それは大陸から主戦場を出来るだけ遠ざけようという狙いがあるのだ。大陸から兵器を作って輸出するのと、兵器の元になる鉄鋼などの原料を輸出するのとでは扱いが変わって来るのだ。
現在の条約では、兵器を積んでいれば軍隊扱いになる。当然、三国それぞれがまだ戦闘状態を継続している最中の現在では、軍隊は攻撃の対象になってもおかしくないし、実際攻撃を、という事例が発生している。
だが、鉱石や石油などを運ぶ船舶ならどうか。
これは民間の船舶としてカウントされるのである。当然、それらの船舶には攻撃しない、というのが条項に乗っている。
三国が戦闘状態にあるからこそ、条約はきっちりと守らねばならない。それはどの国にも共通の認識なのだ。一度それを破棄してしまったら[秩序ある戦闘]が行えなくなる。それはどの国もあっては困るという話なのだ。
そんな背景から帝国はアフリカ大陸という場所を生産拠点に据えた。それはエルミダスという土地が同盟連合に奪い返された、というのも大きく関与していた。ジュケーは元々軍需産業の拠点でもあったのだが、それを更に強化した、といったところか。
レイドライバーの研究、開発、改良そして生産、すべてここジュケーで行われている。同盟連合が研究所のあるエルミダスを落とされてはならないのと同時に、帝国はジュケーを陥落などというのは避けなければならない。そしてこの近くには共和国の軍需産業もある。それくらい今のアフリカ大陸は[熱い]場所なのである。
実際、この三国体制になる際にそれを良しとしなかった勢力がいた。昔からいる部族などがそれにあたる。その人たちに三国は何をしたか。
三国体制になった時にはアフリカ大陸の人口は半分にまで減っていた。つまりはそういう事である。そこらかしこで戦闘が行われた。戦闘、と言えば聞こえはいいが要は虐殺である。しかしどの国も[虐殺が行われた]とは認定していない。そして半分にまで減った人口を、まるで埋めるかのように大陸や共和国、そして同盟連合から人が流入してきたのである。今では、昔のアフリカ大陸の面影は薄れてしまい、それこそ[一体、ここは何処ですか?]と言いたくなるような人種、文化が根付いている。
大国の国々はこんなところでも自分のやり方を押し通したのだ。それは何も帝国だけが責められる問題ではない。三国、それぞれが等しく行ってきたものなのだから。
そんなアフリカ大陸のジュケーにクロイツェル参謀はじめ、クラウディア少佐率いるレイドライバー部隊は存在している。
「これで三体だな」
クロイツェルがクラウディアにそう言う。
「はい、戦闘で失った分の機体は補充された形になりましたね」
そう答える。
「我々はこのレイドライバーという兵器を一般化したいと考えている。まぁ、今すぐには無理な話だがな。この三体とてやっとの思いで作り上げたものだ。それこそ職人たちには大変な思いをさせた。だが、この三体は改修がなされた最新型だ」
クロイツェルはどこか嬉しそうである。
「では参謀の目にはアルカテイルが入っている、と?」
クラウディアが尋ねれば、
「可能性の一つとしてそれは考えている。事実、例の自我のあるパイロットたちのテストもまだだしな。しかし、大事なのは[帝国はいつでもアルカテイルに攻め込めるのだぞ]というアピールなのだよ。いずれはかの地で対峙しようとも考えている。ただ、それよりは南米や旧イエメン、更には他の地域での戦闘を仕掛けようと思ってはいる。何、どこの国も同じだ、という話だよ」
クロイツェルは一つため息をつく。
「とは?」
と返すクラウディアに、
「帝国の上の方にはな、軍需産業でのし上がった人間が多数いる。それらの人間たちを満足させられるのが今の状況だ、という事だ。おおかた同盟連合の上の方も同じなのだろう。たから日本奪還という、一見すると無茶な作戦を、レイドライバーという兵器の展覧会場にして飾って見せたのだからな。これには帝国の人間も嬉々として挑発に乗ったという訳だ」
そう、次の目標は旧イエメン、しかしそれでおしまいではないというのをクロイツェルは示しているのだ。
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