表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/48

47.回想-イリーナの場合-

全48話です


明日(2/2)の第48話でこの巻は完結になります。読んでくださって本当にありがとうございます!


続いて、同じく明日(2/2)に次作である「レイドライバー 16 -戦闘終結、ある女性の葛藤-」を寄稿したいと思います


次話の前書きと後書きにリンクを貼っておきます、もし引き続き読んでくださればとても嬉しいです!


 捕虜返還の会談場所にはクロイツェル参謀が出向いて来ていた。イリーナはクロイツェルに対して視線を合わせられなかったのを記憶している。


[こちらは捕虜を返還する代わりに、あらかじめ打診した通り、最低半年のアルカテイル、ミラール、エルミダスの停戦を申し入れます]


 敵の基地司令がそういうと、


[話は聞いています。その条件で合意しましょう。ちなみに捕虜になっている間、何かされましたかな?]


 当然そう来る。この時ほど人生で緊張した記憶はない。それはレイドライバー隊に配属が決まった時よりも、その教練過程でしごかれていた時よりも緊張したのだ。


 ――敵の大尉は、本当に約束をたがえないだろうか。もしもこんな場所で……。


 だが、それは杞憂に終わる。


[僭越ながらお話させて頂くと、彼女はとても口が堅く、兵器に関する事は聞けませんでしたよ。薬剤を、とも思いましたがこんなご時世、この世界では特に常識というものが必要です。もちろん条約もありますから。なので拘留だけして現在に至る、という訳です]


 相手の将校の発言は迷いがなく、堂々としていたのだ。


[それは本当かね、イリーナ少尉?]


 改めて自分に質問された時も、極力平静を保って行動した。


[はい、同盟連合の方々はとても人道的に扱ってくださいました。初めは尋問されましたが、発言を拒むとそこからは特にはなにもなく過ごしていました]


 確かにそう言った。


 クロイツェルはそれ以上の言及はして来なかった。


 そして、レイドライバー隊に帰還した時も、


[大丈夫だったか? どこか、何かされなかったか?]


 と本気で心配そうに問いかける隊長のクラウディア少佐の目を見て話すことが出来なかったというのも覚えている。


 ――だが、あの聡明なクロイツェル参謀殿とクラウディア少佐殿だ、もしかしたら感づかれているのかも知れない。


 一度そんな事を考え始めると、人間心を病んでしまう。イリーナの場合、病むまではいかなかったがそれでも動揺を押し隠すのに必死であった。


 そんなイリーナを、隊の人間はそれ以上追及してこなかった。いつしか話題にすら上らなくなり、まるで[無かった]かのように話が進んでいったのだ。イリーナも当然自分から話すようなヘマはしない。周りが何も言って来なくなったのは好都合だった。


 だが、その周りからの自分へ接する態度は、以前とは少し変わったように思えたし、現に今でもそう思えてしまう。


 腫れ物を触る、そんな感覚だ。ちょっと大げさくらいに周りがイリーナをかばうようになったのである。何か訓練でミスをしたりしても、他の隊員なら[何やってる!]くらいの罵声は飛んでくるのだが、いざ自分がミスをしても[まぁ、次頑張れば]といった具合である。


 必然的に居場所が狭くなっていった。そんなだからイリーナからも他の隊員に話しかける事も少なくなっていった。


 つまり、隊の中で孤立していったのである。


 そんな中、南米への援軍作戦が決まった。そしてそのメンバーに、


[イリーナ中尉、きみが行ってくれないか]


 と言われて現在にまで至るのである。


 イリーナはレイドライバー隊が発足してからずっといる古株だ。その彼女を南米への援軍に行かせたのはやはり[ここにいては気まずい]からだろうか。


 事実、陰で憶測が回っているというのもこっそり耳にしていた。そうなればクラウディアとしても[じっと待機させているよりは体を動かしてきた方がいい]と思うかも知れない。


 第一陣である旧エストニア戦も、第二陣である旧アルゼンチン戦も新人が向かったと認識している。そんな中に援軍として自分が指名された時は[あぁ、これてお払い箱か]と思ったものだ。もちろんクラウディアはいろいろ言って励ましてくれる。だが、実際に第一陣は二体とも消失、つまり戦死したのだ。そんな中に自分が指名されれは[あぁ、厄介払いか]と思うのは人の子である、というものだ。


全48話です


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ