42.そのデルタ陣形で如何かと-了解した、前進して腹ばいの体制になる-
全48話です
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「合わせた。この周波数を使用するのでいいんだな?」
イリーナが聞いてくる。ゼロフォーはそれに[はい、それでいいです]と答えたあと、
「こちらから一体、そちらから一体、前衛に出てもらいます。相手はこちらのおおかたの場所を特定しているはずです。ですが、正確な位置までは分からないはず。なので、先ほどの戦闘のように腹ばいになった状態で待ちます。幸い、こちらにもそちら側にも新型のシートが装甲の上に貼られているはずです。伏せの状態で敵を迎撃、近接したところで逆に突撃していくというのはどうでしょうか。もちろん私が背後からスナイピングします、そのデルタ陣形で如何かと」
ゼロフォーはそう相手に伝えたのである。
確かに、これなら理想的とは言わないものの実現可能な陣形だ。
――相手戦力については帝国はまだ知らない様子、となればこちらの情報は流さなくてもいい。もちろん共に戦うが、戦法まで指南する必要は無いんだ。そしてこちらが有利に進められれば、もしかしたら共和国だけでなく帝国との戦闘にも[勝った]と言える状態に持って行けるかも知れない。
ゼロフォーはそんな算段を頭の中でしていた。
相手からは、
「了解した、前進して腹ばいの体制になる」
と連絡があった。それに呼応してスリーワンに、ちょうと三角形になるように展開するように伝える。
そして陣取ったのである。
帝国は情報不足、対してこちらは相手と一度戦っている。そしてカズからその戦い方も学んできた。それはスリーワンには伝えてある。今回の敵である共和国製の人型は、共和国の技術が弾道回避能力に反射の原理を取り入れているのであれば、それ用に弾を撃てばいい、我が方のレイドライバーにはそれだけの演算能力はある、と。そしてその反射は一瞬で行われるが故に個体ごとの[癖]が出やすいのである。
前回、ワンワンとワンツーが相手に一撃しか当てられなかったのは、単に情報不足があったからだ。そんな中でもワンワンは一発、脚部に当てている。それだけの射撃管制能力がどうれ名連合のレイドライバーには、第二世代型のレイドライバーには備わっているのである。
ゼロフォーは頭の中で時計を見ていた。当然だがサブプロセッサーなので躰がない。それに代わって脳には生体コンピューターなるものが備え付けられているのだ。そこから[情報]と呼べるものであれば大概は手に入る。時間や、無線、会話に娯楽。
だからゼロフォーたちサブプロセッサーは壊れる事なく自我を保っていられるのである。彼女たちには趣味を持つ許可がなされているのだ。
彼女たちは元は人間なのだ。刺激がない状態では正気を保っていられない。なので、同様に刺激となるものが求められた。
それは娯楽であったりするのだが、その中に五感というものがある。モノを見、音を聞き、肌で風を感じ、口でものを味わい、風の匂いを感じる。そんな[感覚]というものも常に信号としてサブプロセッサーは感じている。それも刺激の一つなのだ。
それはこんな自我という観念が薄いゼロフォーにだって言える事だ。もしも仮にレイドライバーからのフィードバック、つまり刺激がない状態が続いたらどうなるか。おそらくはさしものゼロフォーとはいえ、持って一年というところであろう。それだけ特に脳だけの[考えるモノ]になった彼女たちには刺激というものが重要になって来るのである。
――そろそろかな、対物レーダーには。
とモニターを見れは明らかに反応がある。どうやら人型が先行しているようである。
「ギリギリまで引き付けましょう。引きつければそれだけ破壊力を増しますから」
と帝国に無線を伝える。実際、弾丸というものは距離に反比例して威力が落ちてゆくのだ。
――スナイピングはギリギリまで待とう。確かに共和国の人型の情報も大切だが、帝国の情報も必要だ。
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